コーヒー好きの松下幸之助

松下幸之助

 下幸之助(まつしたこうのすけ)が、松下電器の相談役だった頃のエピソードをご紹介しましょう。コーヒー好きの幸之助は、ある日秘書に、「コーヒーをつくってくれるか。うちでコーヒーをつくる器具があったな。あれでつくってみてくれや」と頼みました。ほどなく運ばれてきたコーヒーを飲みながら、ふと幸之助は秘書に尋ねました。「ところできみ、うちのコーヒーメーカーの占有率はいくらや」早速秘書が調べると、外資系の二社が63%を占めており、松下電器の市場占有率はわずか7%にとどまっていました。秘書が、「わが社の占有率はかなり低くて、7パーセントです」と報告すると、幸之助は言いました。「えらい少ないやないか。これは松下電器のいわばお家芸の商品や。それが7パーセントやそこらじゃあかんな。やはり一番にならないといかん。各メーカーの商品をいっぺん全部持ってこさせてくれ」

 こうして市場に出回っているコーヒーメーカーを全部本社特別会議室に並べさせたのです。幸之助は、会議室に経営幹部たちを呼びよせて、「外資系の商品が63パーセントも占めているということは、単に松下電器一社の問題ではない。日本の問題ではないか」とはっぱをかけました。その後、責任者、技術者たちの並々ならぬ努力によって、画期的な新製品を開発しました。それに100万台の売上げ目標を立て、宣伝、販売戦略にも工夫をこらして、ついに目標を達成し、占有率も第一位となるに至ったのでした。私自身も買い求めました(ただそれほどの感動はなかったように記憶しています。すぐにキューリグエフィーアイリスオーヤマUCCのコーヒーメーカーに買い換えています)。後日、その成果を喜びつつ、幸之助は厳しい指摘をしています。「きょう天下を取っていても、あすはパッと変わるような時代である。だから喫茶店でコーヒーを飲んでいるあいだにも、あす打つ手をどうするか考えるようでなければ経営者とはいえない。多くの人の声を聞いて。「ああ、そうか」では時すでに遅い。シェアが下がっていることまで指摘するのは、相談役の仕事とは違う」 新商品の売れ行き、新しい宣伝、販促のあり方等、事業においては多くの課題がつきつけられています。もとより課題がなくなるようなことはないでしょうが、そうした事態にも倦まず、予見される事態に対して、さまざまな憂いを抱き続ける経営者の姿勢こそ、経営を支える原動力と言えるでしょう。常に憂いを抱き続ける姿勢が肝要ということです。彼はこんなことも言っています。♥♥♥

 かりにも経営者として人の上に立つ者が、人よりも先に憂い、あとから楽しむということでなくては、経営者として失格といわなくてはならない。体は休ませたり、遊んでいることがあってもいい。しかしそのときでも、心まで休養や遊びの中にひたりきってしまうのでなく、心は常に先憂でなくてはいけない。遊んでいるときにまったく遊びに心を許してしまうような人は、真の経営者とはいえない。(『経済談義』より)

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