コーヒー価格の暴騰

  私はコーヒーにはちょっとうるさく、1日に数杯は飲むコーヒー通です。少しでも美味しいコーヒーをと、コーヒー豆はUCCコーヒー本社」銀座カフェパウリスタ」から毎月届けてもらっています。コーヒーの美味しい喫茶店があると聞くと、すぐに飛んで行くくらいです。そのコーヒー豆に、今静かに危機が迫ってきています。すでに新聞各紙でも報道されている通り、コーヒー生豆の国際相場は、2024年2月には、アラビカ種が300セント/ポンド(約454 g)、ロブスタ種が5,000ドル/トンを超えました。そして、2025年2月にはアラビカ種が過去最高の431セント/ポンドとなり、ロブスタ種も5,826ドル/トンにまで高騰しています。コーヒーの国際相場は過去47年間で最高水準に達しました。この価格高騰の主な要因は、世界的コーヒー需要の増加(特にアジア圈)と、主要生産国のブラジル、ベトナムの天候不順による生産量の減少です。

 2024年、ブラジルでは降雨量が少なく、雨期入りの遅れや、高温と乾燥した気候が続いたことによるコーヒーの木へのダメージが大きかったことから、2025年の生産量が大幅に減産になると予想されています。コーヒーを巡る状況は、世界的な需要増や生産国での異常気象による供給量の減少により、直近のコーヒー生豆国際相場(アラビカ種)は、今年2月にはおよそ半世紀ぶりに過去最高を記録し、ここ1年間で2倍以上にまで高騰しています。また、為替相場は円安傾向に続き、世界情勢が不安定なことからも、輸入に頼るコーヒー生豆の価格は上昇し、調達価格にも多大な影響をもたらしています。

 「最近、コーヒー豆ってちょっと高くなった?!」そんな声を耳にすることが増えてきました。実際、卸価格や小売価格を見ても、数年前と比べて1.2〜1.5倍にはね上がっている豆は珍しくありません。では、なぜこれほどの値上がりが起きているのでしょうか?今日はコーヒー価格高騰の背景を掘り下げてみたいと思います。

 コーヒーの栽培には、昼夜の寒暖差や適度な雨量、肥沃な土壌など、非常に繊細な条件が求められます。特定の気候条件が揃った地域でしか育たず、主に赤道を中心に北緯25度~南緯25度の間に広がる「コーヒーベルト」で生産されています。ところが、近年このバランスが少しずつ崩れつつあります。特に大きな影響を受けているのが、世界最大の生産国であるブラジルです。2021年には歴史的な霜害(そうがい)と干ばつが重なり、アラビカ種の生産量が激減しました。その影響は今もなお尾を引いています。また、エチオピアやケニアといった東アフリカ諸国でも、雨季の遅れや高温によって収穫量や品質が安定しない状況が続いています。これらは一時的な異常気象ではなく、気候変動がもたらす長期的な変化と見られています。つまり、従来コーヒー栽培に適していた土地が、今後は生産に向かなくなる可能性があるのです。国際的な研究によれば、アラビカ種が現在栽培されている土地のうち、約半分が2050年までに気候的に不適格になるとも言われています。これは価格だけでなく、コーヒーそのものの将来を左右する深刻な問題です。

 さらに深刻なのが、コーヒー栽培を脅かす病害虫の拡大です。中でも代表的なのが、コーヒーベリーボーラー(Coffee Berry Borer)という害虫で、豆の中に卵を産みつけ、コーヒーの品質を著しく落とします。加えて、さび病(リーフラスト)も多くの農園を悩ませており、生産者は年々増大するリスクに対応せざるを得ません。これらに立ち向かうには、農薬の導入や品種改良、栽培管理技術の高度化が求められますが、それらには当然大きなコストがかかります。多くの人手も必要です。ところが、多くの生産国では農家の高齢化が進み、若者が都市部へと流出しているため、コーヒー農園を支える人手が慢性的に不足しているのです。労働賃金の上昇も価格に跳ね返ってきています。「高くなっている」のではなく、「この価格で維持できなくなっている」と言ったほうが実情に近いのかもしれません。

 さらに、コーヒー豆の多くは、ニューヨークやロンドンの先物市場で取引される「コモディティ(商品作物)」です。つまり、コーヒーの価格は天候だけでなく、為替相場や国際情勢、投機筋の動きにも大きく左右されるのです。例えば、生産国通貨が下落すると輸出量が増えますが、それが市場価格を押し下げることもあります。逆に、生産国でのインフレや燃料費の上昇が続けば、生豆の価格は高騰します。さらに、近年は物流の不安定化が大きな影響を与えています。パナマ運河では水位の低下によって船の通行が制限され、紅海では紛争の影響で船舶の航路が変更される事態も起こっています。これにより、コーヒーの主な輸送手段である船便が大幅に遅延し、運賃も高騰しています。「豆はあるけれど港まで届かない」「届いても想定以上にコストがかかる」──そんな状況が、価格全体を押し上げているのです。

 こうした中で、価格や供給の安定性から注目されているのがロブスタ種です。アラビカ種と比べて病害虫や高温への耐性が強く、より低地で栽培できるため、生産コストが抑えられるという特徴があります。これまでロブスタ種「苦い」「重たい」「雑味がある」とされ、主にインスタントコーヒーやエスプレッソブレンド用とされてきました。しかし、近年は発酵技術の進化により、フルーティでクリーンなロブスタのロットも登場しています。エスプレッソにおいては、ロブスタが生むクレマの厚みやボディ感を好む文化も根強く、イタリアではブレンドに必ずと言っていいほどロブスタが含まれています。価格高騰の時代、ロブスタ「仕方なく使う豆」ではなく、「風味の選択肢」として再評価されつつあるのです。

▲最高級のブルーマウンテンコーヒー

 私たちはこれまで、当たり前のようにコーヒーを安い値段で楽しんできました。しかし、その価格の背後には、今日ご紹介した多くの「見えないコスト」が隠れていたのかもしれません。気候変動、病害虫、人手不足、物流危機──それらが一つ一つ、今価格に反映されてきているのです。けれど、それは同時に「これからのコーヒーの選び方」を考えるための絶好のチャンスでもあります。産地の実情を知り、ロットごとの個性を味わい、納得できる価格で豆を選ぶ。それは価格以上の価値を感じさせてくれる体験になるはずです。そんなことを思いながら、毎日コーヒ-を飲んでいる八幡です。♥♥♥

カテゴリー: グルメ パーマリンク

コメントを残す