ニデック永守さんにガッカリ

 モーター大手のニデックの国内外の幅広い拠点で蔓延していた不適切会計の問題(売れる見込みのない製品の評価損を放置する、錆びた古い金型を新品と偽って資産に計上する、取引先から値引きがあったと捏造し利益を水増しする、売り上げを二重計上して虚偽の説明、販売見込み数量を売り上げとして架空計上するなど数々の不正が横行し、目標達成のために数字が書き換えられていました)が起こりましたが、非現実的な業績目標を掲げ、達成に向け過度なプレッシャーをかけていた創業者の永守重信(ながもりしげのぶ)の存在が大きく、「最も責めを負うべきなのは永守氏であると言わざるを得ない」と報じられています。永守氏は、1973年に日本電産を立ち上げ、プレハブ小屋で創業した町工場を、一代で精密モーター分野では従業員数10万人超、売上高2兆円超の世界トップの企業にまで育て上げた人物です。それほどの業績を出した上に、「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」をモットーに、がむしゃらに前に進む性格もあり、周りの誰もが異論をはさむことが許されなかったという社風が出来上がってしまったのでしょう。上場企業でありながら、ガバナンスが全く利かない状態に陥っていたとしか言いようがありません。

 ガバナンスとは、本来議論されないといけないことが議論されていることだと思います。実力者の鶴の一声で、あとは何も議論されずに物事が決せられているのは、ガバナンスが機能しているとは言えません。どんなに優秀な人でも必ず間違います。その場はそれでいいかもしれませんが、結局は、その会社や働く人のためにはならず、社会にも迷惑をかけることとなりかねません。本来、ガバナンスは手間のかかるものですが、丹念な深い議論が忌憚なくできるようになれば、逆に経営の失敗は少なくなり、また、それを行える人が増えれば、企業の寿命も延びるものです。

 なかなか実力者の意見に異を唱えるのは、それでも難しいことです。一人の独断から組織を守るためには、「考え方」を求心力にする必要があります。人を求心力にするのではなく、組織の目的やあるべき姿を求心力にすることが大切です。宗教団体が何千年にもわたって長続きするのは、考え方を求心力にしているからだと考えられています。リーダーは自分を求心力にするのではなく、「正しい考え方」の宣教師となるべきです。教祖ではありません。

◎「どいつもこいつもやる気なしの無責任野郎ばかりそろいやがって! 経営音痴の数字づくりではどんどん目線が下がっていく。却下だ。全員辞めてくれや! こんな人物と一緒に仕事は出来ぬ!」
◎「却下。計画未達皆んなで渡ればこわくない!か。誰一人結果責任を担える人物がいないのか。怒りがこみ上げてくる!」
◎「赤字は罪悪、事業計画未達は悪、規則違反は犯罪である」
◎「対外公表値は断固として上方修正を最低2回は実施しないといけない」
◎「大きなチャンスをもらっておきながら、そのチャンスを掴めず問題ばかり発生させている現在の君の醜態は君の怠慢たる人間性が主因だと思うがな! 恥を知るべきだ!」

◎「君が日本電産に入社してからの2年半で、君が会社に与えた損失または、得るべき利益の機会損失も含めて、本日現在800億円を超える金額になっている。まさに『君は日本電産(現ニデック)を潰すために来たのか?』私の元から損害だけ残して敵前逃亡していくのか、それとも死ぬ気で働いて損失を埋めてくれるのか?」

◎「赤字は罪悪、事業計画未達は悪、規則違反は犯罪である。」

 上記のように、永守氏が、業績目標未達の幹部を大勢の面前で一方的に罵倒することが日常化していたといいます。社外から転職してきた元経営幹部が、不正への加担に苦しみ、「もはや、日本では受け入れられないことであり、強い憤りと反発を感じた」と供述するその内容は、永守氏自身が、過去の自らの指導を「犬や猫のように罵倒叱責」していたと表現していた通り、上のような人格否定に近い言葉が並んでいます。また、永守氏はこうした暴言を頻繁にメールやチャットを送っていて、メールのCCには他の多数の経営幹部が含まれていることも少なくなかったといいます。そうした際に、解雇や降格の人事権をちらつかせては幹部を追い込んでいたことも指摘されていて、第三者委員会は、これらが単なる「言葉の綾」ではなく、実際に降格や退職が繰り返された事実に基づく「恫喝」であったと評価していました。社長すらも簡単に解任してしまう強力な人事権を握る永守さんのこうしたプレッシャーの結果、グループ内の多くの拠点で不正会計が蔓延し、経営の健全性が著しく損なわれていた実態が浮き彫りとなりました。創業者が残した大きすぎる“負の遺産”を今後払拭することができるのか――。

 私は若い時分から永守さんの数々の書籍を読んで、その哲学・考え方に共鳴していただけに、今回の事件は本当に残念・ショックでした。何よりも永守さんは不正発覚以降、代表取締役名誉会長の辞任を発表しただけで、公の場で一度も説明をしておられません。ガッカリです。「企業風土でご心配をおかけしたことを申し訳なく思う。しっかり再生できると信じている」(12月19日) 「不正経理の疑義で、世の中を騒がせたことは慚愧の至り、これまで会社を引っ張ってきた私自身が潔く道を譲り、率先して範を示すことが最後にして最大の責務」(2月26日) 東京証券取引所は昨年10月にニデック株を上場廃止の恐れがある「特別注意銘柄」に指定しました。今秋以降に、上場を維持するかどうかの審査を受ける予定です。信頼回復への道のりは険しいと感じています。

 この会計不正問題に続き、家電や自動車などに使われる製品の品質面に関する不正まで行っていた疑いが露呈しました。今度は顧客に無断で部材や工程、設計を変更する、基準を超えるデータを適正と判断するなど、品質不正に関わる不適切行為の疑いが1,000件超判明しました。上場企業では極めて異例の事態です。あまりにもコストダウンを追求しすぎた結果で、ここでも永守さんによる「苛烈なプレッシャー」が原因であり、不正会計と根は同じだと見られます。ものづくりへの信頼が揺らいでいます。

 地上22階建て、高さ100.6メートルの京都市で最も高いニデック本社ビルは、永守さんの執念の象徴でした。ライバル視した稲盛和夫さんの京セラ本社よりも5メートル高く作らせた、というエピソードがその性格を物語っています。あまりにも結果の数字を追い求め過ぎたことが、今回の不祥事を招いたとも言えるでしょう。数字はあくまでも結果であり、やはり、ドラッカー先生「成果と実績や結果の違い」を理解することや、藤本幸邦老師「お金を追うな、仕事を追え」といった考え方が必要だったと考えます。

 ここで思い出されるのが、ナショナルの創業者・松下幸之助さんです。松下さんは、「素直」ということをとても大切にされていたことで有名で、衆知を集めることの重要さをご存じでした。そして、同時に自分の力が強くなり過ぎることにも注意を払っておられました。働く人が意見を言いにくいからと、自らが促して「組合」を作らせたと言われています。門真市にあるパナソニックミュージアム松下幸之助歴史館」の前には、松下さんの大きな銅像が置かれていますが、それを寄贈したのは組合でした。組合結成25周年事業として創業者の銅像を建てたのです。ここが永守さんとの大きな違いです。

 永守さんは、私財100億円を投じて京都先端科学大学(旧京都学園大学)の経営に乗り出しましたが、果たしてこちらはどうなるのでしょうかね?学生募集にとっては大きな痛手です。♥♥♥

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