gingerly

    英語の副詞gingerlyは、「非常に用心深く、きわめて慎重に」「非常に慎重に、極めて用心深く」と英和辞典には出ています。The old man rose gingerly to his feet.という英文を、辞典の訳語そのままに「老人は非常に用心深く立ち上がった」と訳すと、The old man rose very carefully to his feet.の訳と同じになって、gingerlyの持つニュアンスが消えてしまいます。このことは、翻訳家の宮脇孝雄さんの『英和翻訳基本辞典』(研究社、2013年)にも取り上げられていました。ベテラン翻訳家の宮脇さんは「老人はこわごわ立ち上がった」と訳しておられました。

 carefully gingerly はどちらも「注意深く」という意味を持ちますが、ニュアンスがかなり違います。carefully「ミスや問題が起こらないように注意して」という広い意味で、最も一般的で、前向き・客観的な慎重さです。ミスや失敗を防ぐため、あるいは物事を正しく行うために、頭を使って意識を集中させている状態を指します。勉強・仕事・車の運転などによく使われます。

He carefully read the contract.(彼は契約書を注意深く読んだ=見落としがないように)

She carefully planned the trip.(彼女は旅行を入念に計画した)

ここでは「慎重に」「丁寧に」「念入りに」という意味で、身体動作にも知的作業にも使えます。感情のニュアンスは特にありません。

 それに対して、gingerly「壊れやすいもの・危険なもの・痛みを伴うものを扱うので、おそるおそる慎重に」という意味です。用心深い、というニュアンスより、「こわごわ、おそるおそる」といったニュアンスの方が強い語です。主観的な「不安・恐怖・警戒心」が根底にあり、非常にデリケートな慎重さです。つまり「下手をすると痛い目に遭うかもしれない」「壊してしまうかもしれない」という恐怖やためらいがあり、身体や指先の動きが極めて慎重になっている様子を表します。そのことは、“if you move gingerly, or touch something gingerly, you do it in a slow careful way, because you are afraid it will be dangerous or painful”とLDOCEにはっきりと出ています。

He gingerly picked up the broken glass.(彼は割れたガラスをおそるおそる拾い上げた)

She gingerly stepped onto the icy road.(彼女は凍った道にそろそろと足を踏み出した)

After the surgery, he gingerly moved his arm.(手術後、彼は腕を恐る恐る動かした)

He touched his injured shoulder gingerly.(彼は怪我をした肩を腫れ物に触るように触った=痛むのが怖い)

「何か悪いことが起きそうだから、細心の注意を払って動く」という感覚があります。両者を比較してみると、

He carefully opened the box. (箱を注意深く開けた(中身を傷つけないように))

He gingerly opened the box. (箱をおそるおそる開けた(中に危険物があるかもしれない、壊れやすいものが入っているかもしれない、など))

 イメージの違いを簡単にまとめておきましょう。

副詞 ニュアンス
carefully 注意深く、丁寧に、慎重に(一般的)⇒丁寧さ・正確さにピント
gingerly おそるおそる、そろそろと、壊れ物や危険物を扱うように⇒怖さ・痛みへの警戒にピント

 そのため、 gingerlycarefully と考えると分かりやすいでしょう。gingerlycarefully よりも、「恐れ」「危険の予感」「身体的な慎重さ」を強く含みます。このように、副詞に関しては、日本の学習英和辞典はまだまだだと感じています。♥♥♥

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