identically

 identically(全く同じに)という副詞を英和辞典で引くと、「しばしばthe sameやalikeを強調する」(ライトハウス英和辞典)という注記が出ています(追い込みにして訳語だけ、あるいは訳語も示さないという雑な辞典も少なくありません。「副詞は付け足し」「副詞の軽視」という風潮の証です)。それはそれで正しいのですが、もう少し調べてみると面白い問題が浮かび上がってきます。私たちの編集顧問ロバート・イルソン博士は、イギリス英語ではexactlyにしておいたほうが無難だ、とおっしゃいます。自分としてはどちらかと言えば、exactlyの意味でのidenticallyは非文に(×)したい気がする、との観察を示されました。

 アメリカ英語の立場から、故ボリンジャー博士は、identically the sameはOKだけれど、自分としては人間に使う傾向があるようだ、と述べられました。

   He is identically the same man that we saw before.

もちろんこの文でexactlyとしても良いのですが、identicallyに比べて意味はやや弱まります。ところが、物に使った場合は人に比べて容認度がずいぶん落ちるようだ、というのがボリンジャー博士の内省です。博士の言語観察には本当に鋭いものがあり勉強になります。

   He gave exactly the same excuse as he gave before.

この文でidenticallyは起こらないと思う、とのご意見でした。このような背景を踏まえた上で、辞典の注記はさらっと書かれているんですよ。今日は、辞典編集の舞台裏をチョットだけご紹介しました。

 「宝島事件」(6月20日付けブログ参照)の直後、語法上の正確さをさらに期すために、ボリンジャー博士を編集顧問にお迎えした時は本当に嬉しかったことを覚えています。博士はあれだけの大言語学者にもかかわらず、本当に気さくな先生で、分からないことをお尋ねすると、自分で考えるだけでなく、その道の専門家にまで聞いてくださるのです。「パンティストッキング」が和製英語かどうかを調べているときなどは、デパートの女性下着売り場(!)まで足を運んで、担当者と話し合ったことをレポートしてくださいました。本当に「言葉」が好きで好きで堪らない先生でした。病床からも回答をくださいましたが、「もう君の質問にも答えれそうにない…」と、最後は病室の代筆の方から回答をいただきました。先生のなみなみならぬご尽力で、ずいぶん記述内容が充実しました。今でも本当に感謝しております。博士との想い出は尽きませんが、また別の機会にお話ししたいと思います。ダウンロードサイト「その他」に、北高学校だより「あかやま」第269号が登録してあります(12月10日付)。ここにボリンジャー先生との出会いを記録してありますので、お読みください。

 今日も私のブログをのぞいていただきありがとうございました。この2年間の八幡の主な活動内容をまとめてみました。上記の「★八幡最近の活動★」をクリックしてごらんください。

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