indispensable(欠くことのできない、必要不可欠な)という形容詞は、前置詞のtoもforもとることができる、と併記している英和辞典が多いようです。それは確かにそうなのですが、両者の意味の違いを意識せずには、英語を読んだことにはなりません。どちらでもよい、どまりでは英語を理解したとは言えないと考えます。
私たちの『ライトハウス英和辞典』(第6版)をご覧下さい。次のような用例と語法注記が目に止まりますね。
Dictionaries are indispensable for learning foreign languages. 辞書は外
国語の学習に絶対必要なものだ。
Water is indispensable to life. 水は生命には不可欠のものだ。
《語法》toは「(…の)生存・存在・維持・利益」などに欠かせないとき、forは
ある「目的」のために欠かせないときに用いる。
実は、この記述は故ボリンジャー博士とのやりとりから生まれたものです。ボリンジャー博士は、両者の意味の相違を、forは「目的」(purpose)、toは「利益者 」(beneficiary)と総括されました。なるほど!
Clothing is indispensable to the human race.(=The human race benefits
from clothing, needs clothing.)
Clothing is indispensable for coping with extremes of temperature.
(=It serves that purpose.)
そして、この2つの用例を1つにまとめることが可能です。
Clothing is indispensable to the human race for coping with extremes of
temperature. 衣類は極端な温度に対応するために人間に必要不可欠だ。
ボリンジャー博士は、さらにlifeを用いて、次のような用例も提供して下さいました。かっこの中に添えられた、博士のパラフレーズに注目してください。
Water is indispensable for life. (=For the purpose of living.)
Water is indispensable to life. (=Life forms benefit from it, need it.)
このような一連の考察を踏まえて、私たちの用例と語法注記は出来上がったのでした。何の意味の違いも示さずに、ただ単に、to/forと併記しているだけの英和辞典と、どちらが優れているかは、もうおわかりですね。以上、辞典編集の裏話でした。一語一語、このように精査を加えながら、辞典は出来上がっていくんです。

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