「消える予言のカード」(マジックランド)、パズルと予言のマジックをドッキングさせた、不思議で楽しい小野坂トンさんの名作です。観客にトランプ一組から一枚のカード選んでもらいます。演者はそれを「予
言」しておいた、と言って数枚のカードを取り出します。カードはパズルのようになっていて、53枚すべてのカード(!)が印刷されています。当然、観客の選んだカードも印刷されていて、「見事予言は的中!」と観客の苦笑をかいます。実は、マジックはここからです。その予言のパズルを4つに分割し、再び並べ替えると・・・なんと、パズルの真ん中の部分だけに穴があき、観客の選んだカードを探しますが、みつかりません。そこにあったはずのお客様の選んだカードだけが消え失せているのです!ぽっかりあいたお客様のカードの部分のパーツは、封をした封筒の中から現れます。
私が、初めてこの種のパズルに出会ったのは、直木賞作家泡坂妻夫(あわさかつまお)『魔術館の一夜』(現代教養文庫,1987年)であったように思います。この本はあの松田道弘さんが「奇術書の革命であり奇跡である」と評した名著です。奇術の種明かしと読み物を両立させたものは他に例がありません。この本の「変形する断片」という箇所に詳しく解説されています。その後『泡坂妻夫マジックの世界』(東京堂、2006年)という専門書も書いておられまして、この本の最後に出てくる「ワープナイン」(名付け親はマックス名人です)というパズル傑作が私は大好きでした。不思議ですよ。これを商品化して発売したのが、マジックランドのパズルマジック「厚川昌男(あつかわまさお)の魔術館の♡9」で、私は何個も買ったことを覚えています。先の「泡坂妻夫」(AWASKA TSUMAO)は、本名「厚川昌男」(ATSUKAWA MASAO)のアナグラムですよ(組み替えてごらんなさい)。♠♣♥♦
6片に切り分けた大きなトランプ(ハートの9)を1枚示します。このバラバラの6片を組み合わせてみますが・・・、うまくはまるのですが最後の1片だけが裏向きになってしまいます。今度は裏向きでやってみましょう、と裏向きで組み合わせると・・・これまた1片だけが表向きでないとうまくはまりません。6片を再度バラバラにして気分も新たに表向きに組み合わせると・・・ようやくうまく組み上がるのです。巧妙かつ精緻なパズルトリックです。
巧妙なトリックを凝らしたミステリ-や、職人の誇りと人情の機微を描いた小説で直木賞も取られた泡坂妻夫さん。直木賞の受賞記者会見では、求めに応じて奇術の腕前も披露されました。本職は家業を継いだ和服に紋を描く紋章上絵師でしたが、その傍ら作家・創作奇術家として活躍されました。小説家としてだけでなく、奇術愛好家兼奇術師として、1969年には第2回石田天海賞を受賞しておられます。また自身の名を冠した「厚川昌男賞」という創作奇術家賞が設けられています。泡坂さんは、2009年2月3日午後6時36分、75歳で、急性大動脈解離でお亡くなりになりました。私は泡坂さんの『しあわせの書 迷探偵ヨギガンジーの心霊術』(新潮文庫)の大ファンで、この本で「ブックテスト」を何度演じたことでしょう。⇒コチラです


