ジャイアント馬場さんの「信用」と「信頼」

 私は故・ジャイアント馬場さんが大好きなんですが、今、『ディリー・スポーツ』紙で毎日馬場さんの連載記事(毎週火曜日―金曜日)大きな足跡」が続いています(今日8月28日で18回目)。ファンには堪らない企画で、毎日読んでいます。最近、同僚に『週刊大衆』に連載中の「1964年のジャイアント馬場」を教えてもらいました。これも馬場さんの人間性を語る面白い記事です。

 よくアントニオ猪木とジャイアント馬場を比べてどちらが強いか?という話題が出ますが、これは聞くまでもありません。16回戦って、対戦成績は馬場さんの16勝0敗です。馬場さんは、全盛期の頃はシュートでも、相当、強かったんです。あのザ・グレート・カブキがこんなことを言っていました。馬場さんと猪木じゃ実力が違いすぎる。モノが違った。」 また、スタン・ハンセンも同じことを言っていました。猪木は皆さんが思う程、強くない。馬場は皆さんが思う程、弱くない。」 若かりし頃、猪木が馬場に対戦を呼びかけ続けていた時代、馬場さんが猪木に「カンちゃん、本気でヤルつもりなの?」と、言うと、猪木は「馬場さん、あれはジョークですよ。」と、言ったとか、言わないとか。

 さらに人間性という点においても、「馬場さん」とさんづけで呼ばれるのに対して、「猪木」と呼び捨てにされることからも伺えます。NWAの副会長まで務めた馬場さんの、世界各地のプロモーターたちの信頼度は絶対的なものがあり、尊敬されていました。元テレビ朝日のプロデューサーの栗山満男さんが、昔こんなことを言っておられました。

 馬場さんはよく『さん付け』で呼ばれるけれども、猪木は呼び捨てにされるでしょう。それは人望の差なんですよ。猪木は馬場さんと違って、まともに金の計算ができない。金はタニマチが持ってくるものだと思っている。だから、金がなくなったタニマチは捨てる。その繰り返しです。救いようのない詐欺師のような現在の猪木ですが、私は彼に『目を覚ませ!』と呼びかけたい。かつて新日本プロレスを立ち上げた頃の純粋な猪木はどこへいったのか。あの頃の彼に戻って欲しいと心から願っているんです。     (『週刊現代』2003年7月12日号)

 61歳で亡くなった馬場さんのお別れ会「ありがとう」が、1999年4月17日日本武道館でしめやかに行われました。記帳受付開始の午前10時には、前日の徹夜組200人を入れて長蛇の列。終了の午後3時を過ぎても訪れる人は絶え間なく、武道館正面に、急遽遺影と献花台が設置されたほどでした。来場者数は、実に2万8000人を数えたそうです。馬場さんの誠実な人柄が偲ばれます。あの鉄人ルー・テーズが、「馬場さんはプロモーターとしても優秀で、契約した金は必ず払ってくれる誠実な人だった。これはこの業界ではとても大切なことで尊敬に値する」という追悼コメントを『朝日新聞』に寄せていますが、これは、お金にいい加減なこの業界の核心部分を突き、かつ経営者馬場さんの実像を端的に表した言葉と思っていいと思います。お金には非常に厳しい馬場さんの姿も、どこかの本で読んだことがあります。マスコミコントロールに長けていたから死後も神格化されただけだ、という馬場さんのダークな一面を取り上げた『あなたの知らない暴走マット世界』(コアマガジン社、2013年)も読みましたが、その功績を貶めることはできません。

 最近出た、門馬忠雄『全日本プロレス超人伝説』(文春新書、2014年7月)の記念すべき巻頭第1章は、ジャイアント馬場 王道プロレスの牽引者」でした。信用」「信頼」に生きた馬場さんの姿が、見事に描かれていました。また、8月27日付けの「朝日新聞」には、元付き人を務めた小橋建太さんが、馬場さんが教えてくれた一番大切なことは「品」だったと思う、と回想しておられましたね。レスラーはリングの上では怪物であれ。リングを下りたら紳士であれ」と口を酸っぱくして言われたそうです。私は馬場さんのような生き方をしたいと思っています。

 たとえば、オレの場合は、自分でできる約束しかしない。できる約束かどうかを見極めて、できない約束はしないことにしてるね。できない約束なんて約束じゃないと思うな。だから、変な話かもしれないが、人と待ち合わせの約束をしたら、絶対に相手を待たせないとかね。お金に関しても同じで、払えない金額をいくらいってもしょうがない。相手を裏切ることだし、結果的には信用をなくしてしまうからね。
 やっぱりね、人生で一番大事なのは人間関係だろうな。自分で決めたルールではないが、自分から他人をだましたことはない。だますよりだまされた方がいいよ。だますヤツには魅力はないけど、だまされるヤツには魅力がある。オレが思うには、絶対に他人にだまされないヤツって、よっぽど警戒心が強く、猜疑心が強いヤツでね。そんな人間に魅力は感じないね、オレは。これはオレの性格なんだろうね。裏切られたらオレは、その人間を許さない。性格上そんな人間とは二度と付き合いたくないからね。別に潔癖症ではないけど(笑)。さっき言ったように約束したらきちんと守るといったようにね。できない約束ならしない方が楽だとオレは思うしね。  (馬場さんインタビュー、下線部は筆者)

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