鉄道警察官・清村公三郎

 今、スカパーの「ファミリー劇場」(ch660)で、小林稔侍さん主演の「鉄道警察官・清村公三郎」シリーズ(全11作品)を放映してくれています(私は小林さんのドラマは税務調査官「窓際太郎」のものといい、ほんわかとした中にも厳しさがあり、大好きなんです)。2005年から2014年までテレビ東京・BSジャパンの共同制作の2時間ドラマで、11本放送されました。元国鉄の鉄道公安職員出身のため、生粋の鉄道マンとしての意識が強く、持ち前の豊富な鉄道知識で事件を解決へと導くという内容です。原作・原案は故・島田一夫(1907―1996)さんです。鉄道の旅をこよなく愛し、珍しい列車、ローカル線鉄道巡りが大好きな警視庁鉄道警察隊・東京分駐所に勤務する警察官清村さんは、同僚たちからは「キヨさん」と呼ばれています。主人公の名前は原作では「清村公三(きよむら こうぞう)」「公三郎」の名は一部作品の解説文に誤記として存在しました。所属は同じ東京分駐所ですが、公三郎が制服勤務であるのに対し、公三は私服捜査員である特務係という違いがありました。家族構成も公三は妻と死別し子供はいません。ドラマでは奥さんも娘さんもいます。原作との間に約20年~30年の時代差があるため、作中で明記こそされていませんが、公三の方が若く描かれているようですね。

 先日、再放送を見たのは、そのシリーズ第4作「鉄道警察官清村公三郎 津和野~山口SL貴婦人号  殺意の小京都」(2007年)です。鉄道警察隊東京分駐所・巡査部長の清村公三郎は、駅構内を巡回中にひったくりの場面に遭遇します。逃走する犯人を捕まえたのは、鉄道警察の元同期・園田でした。彼を寝台列車「はやぶさ」で見送った後、その夜、地下駐車場を巡回していた清村は、男の絞殺体を発見します。男は十年前に起きた強盗事件の犯人で、かつて清村と園田が捕まえた相手と判明するのですが…。清村は事件の手がかりを求めて山口、そして津和野へ。最後は 園田の仕組んだ完璧な鉄道トリックを暴けるか?という展開を見せます。タイトル中にある「SL貴婦人号」新山口津和野を走っている、というただそれだけの位置づけで、ドラマではあまり意味を持っていません(列車名をテレビタイトルに冠すると、鉄道好きの視聴率が取れるというのは、数々の西村京太郎作品と同様ですね)。ただエンディングに、清村と園田が警察に出頭する前に署の敷地で「SLやまぐち号」が汽笛を鳴らしながら通過するのを見送る、というシーンは感動的でありました。昨年11月25日には、D51 200(通称「デゴイチ」)が、復活整備後初の営業列車として山口線のSL列車『やまぐち』号をけん引しました。翌26日にはC57とD51の重連で運転され、44年ぶりに山口線を走るデゴイチを見ようと、沿線には人だかりができました。私も一度だけ「やまぐち号」に乗って山口から津和野まで帰ったことがありましたが、疲れるだけで(特急なら1時間で着く所を2時間かけて走る)レトロな客車もあまり印象には残りませんでした。

 このドラマの舞台となった津和野は、私が三年間勤務した懐かしい街ということもあって、物語の展開に釘付けになりながら、街の名所を思い起こしながら見ていました。津和野という街を、西村京太郎先生は次のように描写しておられます。見事な街の総括となっていますね。

 「SL『やまぐち号』」の折り返し駅の津和野は、かつて津和野藩亀井氏の城下町として繁栄した。いわゆる小京都の代表的な街である。津和野川をはさんで、南北に長く延びている。狭い街なので、自転車で廻っている観光客も多い。ゆっくり廻っても三時間ほどである。
 殿町通りに入ると、武家屋敷が並んでいる。道の両側には水路があって、色とりどりの大きなコイが、群れをなして泳いでいた。まるまると太っている。栄養は満点らしい。
 文豪森鴎外の旧宅や墓もある。カトリックの教会があるが、明治維新の直後、まだキリスト教が禁止されていた時代に、長崎から配流されてきた隠れキリシタンが、弾圧され、殉教の道を選んだという悲しい歴史も、津和野にはある。―西村京太郎『十津川警部とたどるローカル線の旅』(角川oneテーマ21、2012年)

 最も印象的に残ったのは、清村が園田の仕組んだ非常に巧妙なアリバイ・トリックを、一つ一つ解き明かしていくシーンでした。寝台特急「はやぶさ」に仕掛けられたトリック、新山口から津和野に戻る貨物列車のトリック、ゾクゾクしながら見ていました。私は、高校時代にエラリー・クイーンの推理小説、大学時代はアガサ・クリスティのトリックに夢中になったことがあり、こういったアリバイ崩しものが大好きなんです。津村秀介さん原作の「高林鮎子シリーズ」で、チンペイさんが時刻表片手にもがき苦しみ、トリックを解明するのが大好きなのもそういう訳です。西村京太郎先生の作品といい、津村修介さんの作品といい、運行時間にきわめて正確に動いている日本の列車だからこそ成り立つジャンルの推理小説です。最近はこういうミステリーを書く作家がほとんどいません。♥♥♥

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