渡部昇一先生のエピソード(20)~昼寝の効用

 故・渡部昇一先生はよく昼寝をなさいました。上智大学の学生時代には、朝は寮で4時45分に起きて勉強に励んでおられました。そして午後に一時間くらいは必ず昼寝をしておられたのです。この習慣はドイツに留学されたときにも続けられました。ドイツの大学では授業が12時ごろに終わって、午後3時ごろまで授業はありませんでした。その時間を利用して昼寝をしておられたのです。他の教授や学生たちも、みんないったん家に帰ってから、午後の授業に出てきていました。

 日本に帰って来られてからも、昼寝の習慣はずっと続けておられます。上智大学で教えられるようになってからも、研究室にソファを置いて、午後は30分から1時間くらい昼寝をしておられました。大学の講義を終えた後に、夜に座談会や研究会がある日には、時間単位で安く借りられるホテルなどに泊まって、2時間くらいは寝ることを心がけました。毎日30分ほど昼寝をする人のガンの発生率は、昼寝をしない人と比べると3分の1だといいます。

 自分で生活のポイントだと思っているのは「昼寝」です。一仕事を終え、次の予定までの間、私は昼寝をします。昼寝のない生活はしていないと言っても過言ではありません。特技として、いつでもどこでもすぐに寝ることができるおかげで、生活のリズムは不規則だけれども、体調が崩れないのでしょう。その反面、私の個人支出で、本代以外に最も多額なものの一つはホテル代です。たとえば、午前中に授業が終わると、たいがいは大学にとどまらず、外へ出てしまいます。午後一時に別の用事があればいいのですが、午後三時からとか、あるいは五時や六時から講演や研究会があったりする。そのときはしょうがないので都内のホテルに部屋を借りるわけです。講演会場近くのホテルであったり、テレビに出るときはテレビ局近くのホテルであったりと、場所は次の予定によって違うのですが、とにかく二、三時間の隙間時間ができれば、ホテルを使って昼寝をする。目がさめたらそこで本を読む。コスト的に考えたら高くつきます。計算すると、昼寝十分で二千円ぐらいになるでしょうか(笑)。  ―渡部昇一・林望『知的生活 楽しみのヒント』(PHP出版、1998年)

 そして夜の睡眠時間も、7時間から8時間を確保するように努めておられます。そうでないと頭がボーっとする、と言っておられました。東京大学医学部附属病院で長く臨床に携わっておられた西原克成先生によると、人間は一日8時間くらい横になって、背骨を重力から解放することによって免疫力が高まるのだといいます。また、私たちが眠気を覚えるのは、メラトニンという脳内ホルモンの作用によるのですが、このメラトニンは抗酸化作用によって細胞の新陳代謝を促し、老化抑制にも効果を発揮するようです。免疫増強作用もあって、メラトニンの力で、がん細胞やウィルスを攻撃するナチュラルキラー細胞が活性化することも報告されています。このメラトニンは、高齢になると分泌量が減ってしまいます。しかし、規則正しい時間に暗いところで寝れば、より多く分泌されます。とすれば、睡眠をキチンと取ることは、高齢者にとってもますます大きな意味を持つことになるでしょう。

 カリフォルニア大学の心理学者サラ・メドニック助教授は、『Take a nap! Change your life (昼寝であなたの人生がかわる)』という著作を出版しています。メドニック助教授は、昼寝にはこんなにもすばらしい効果があると言います。

●その1:目覚めが良くなり、生産性が上がる

●その2:20分の昼寝は、朝20分寝るより8時間ぶんのスタミナが出る

●その3:ストレスホルモンのレベルが下がるため、ストレスの軽減につながる

●その4:昼寝によって脳みその使い過ぎから脳回路を保護する

●その5:NASAは、30分のパワーナップが認知能力を40%増加すると発表した

●その6:今までに心臓疾患を患ったことのないギリシャ人23,681名にテストしたところ、3週間30分の昼寝をした人は、そうでない人にくらべて心臓疾患にかかるリスクが37%も減少した

●その7:記憶力が向上する

●その8:活動的になる

●その9:創作意欲を上昇させる

 「眠気がとれてすっきり」というレベルの話ではなく、身体や脳への効果がこれほど大きいとはまさに驚きですね。

 昼寝、睡眠時間を確保されたことを、渡部先生は結果的に良いことだった、と回想しておられます。虚弱体質と思ってきた自分が、70代までは大きな病気にもならず、大学も病気で休まずに済んだのは、睡眠のお陰であったと実感しておられました。睡眠と昼寝は健康のもとなのです。私も渡部先生にならって、昼寝を楽しんでいます。不思議なもので、股関節が痛かった時には、寝ようとしても寝ることができなかったのですが、手術後最近では、お昼寝が出来るようになってきました。ありがたい!

 尊敬する永守重信(日本電産会長)さんも、昼寝は欠かせないとおっしゃいます。昼食が終わった後、20分ほど仮眠を取られます。たった20分でも、身体がすごく楽になるといいます。午後の仕事を高い集中力でこなすには、この昼寝が欠かせないとのことでした。♥♥♥

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