ペッパーミルパーフォーマンス

     侍ジャパンの塁上でのあのポーズが注目されました。両手を上げてひねる動作は、まるで塩コショウを回しながら出すあの動きに似ていますよね。「ペッパーミルポーズ」と言われているそのパーフォーマンスは、WBCが始まるまでは日本では全く無名であったラーズ・ヌートバー選手が、大活躍して侍ジャパンのメンバーに広めたものです。全国のお店では、業務用のペッパーミル(こしょうひき)が爆発的に売れているといいます。お店の便乗商法も報道されていますね。大分県高崎山自然動物園で、今年最初の赤ちゃんザル(雄)が「ペッパーミル」と命名されたことが新聞に載っていました〔笑〕。何だかその意味も分からずに全国に広まってしまい、真似をする子どもたちも多いようです。その真の意味を考えておきましょう。

 「ペッパーミルポーズ」の意味には、実は3つの説があります。

①「バッター(ランナー)をどんどん回してつなげていこう!」 

ペッパーミルを回す動作から、「バッターやランナーをどんどん回していこう!」という意味だとされている説。


②「ランナーや点を“絞り出して”いこう!」 

ペッパーミルが別名『ペッパーグラインダー』とも呼ばれていて、グラインド(grind)とは「絞り出す」という意味があるため、「ランナーや得点を絞り出していこう!」あるいは「持ってる力を絞り出そう(常に最善を尽くそう)!」という意味だとされている説。


③「身を粉にして働こう!」 

グラインド(grind)が「すりつぶす・粉にする」という意味もあるため、「身を粉にして働こう!」という意味だとされている説。

それを野球の塁上で行うポーズであることを踏まえると、上の3つを総合して「どんどん回していこーぜ!!」「どんな手を使っても頑張って粘り強くつなげていくぞ!」というニュアンスだと考えるのが自然かなと思っています。

 実はこの「ペッパーグラインダーポーズ」は、アメリカメジャーリーグのカージナルス独自のパフォーマンスであり、メジャーリーグやアメリカ全体に浸透しているものではありません。あくまでもやっているのはカージナルスの選手だけで、完全にカージナルス発祥のパフォーマンスです。この「ペッパーグラインダーポーズ」は、2022年にキャッチャーのキズナーが、「We are grinding.(粘り強くいくぞ)」と声をかけたことから生まれたと言われています。このカージナルス由来の「ペッパーミルポーズ」が、どのようにして侍ジャパンで浸透するようになったのか?それは大谷翔平選手とヌートバー選手の何気ない会話から始まったといいます。ヌートバー「そうですね。翔平と色々話して、エンゼルスでチームセレブレーションの時どんな事やっていたの?」と聞いたら、「あまりエンゼルスはセレブレーションがないんだよね、カージナルスはどうなの?」といった会話をしたと言います。侍ジャパンで一緒になったのを機に共有しようと。そんな感じの流れから、いつの間にかチーム全体に「ペッパーミルポーズ」が浸透していったものです。

 この「ペッパーミルポーズ」が、最近、選抜高校野球大会でも波紋を広げました。1回戦初回に東北高校の選手が相手チームのエラーで出塁した際に、ベンチに向かってこのパーフォーマンスを行いました。ベンチ内の数選手もこのポーズをしました。攻撃後に一塁塁審がベンチに来て「パーフォーマンスはダメです」と注意を受けたといいます。東北高校の佐藤洋監督が試合後に、問題提起を行いました。佐藤監督「これだけ野球界が盛り上がっているのに。なんでこんなことで、子どもたちが楽しんでいる野球を大人が止めるのかな。ちょっと嫌というか。変えた方がいんじゃないのかなと。ちょっと思いましたね」と残念そうに話しました。「ちょっと違う高校野球のスタイルをやっていかないと。野球を選択する子がいないし、ああいうパーフォーマンス、日本中が盛り上がっているパーフォーマンスを審判の方から注意される。ぜひ書いてください。私が言っていたでいいです。私に火の粉が飛んできていいので。それは僕は大反対なので。もう少し子どもたちに自由に野球を楽しむということを、もうちょっと考えてもらいたいと思います」と願いました。大会本部は「高校野球としては、不要なパーフォーマンスやジェスチャーは、従来より慎むようにお願いしてきた。試合を楽しみたいという選手の気持ちは理解できますが、プレーで楽しんでほしい」と見解を発表しました。その後甲子園ではこういったパーフォーマンスは見られなくなりました。

 青山学院大学の駅伝部原 晋監督も、この件を報じたニュースを取り上げ、「いまだにこんな管理者(審判)いるんだ!?」と驚いた様子。そして「世の中個性を大切にしようと言っているのに、他者を侮辱行為してないパフォーマンスに対して制限するなんて不思議でならない」と持論をつづり、「負けるな高校球児!高校野球は君たちの為にあるのだから!」とメッセージを記しました。はたしてそうでしょうか?

 「子どもたちは楽しんでやっているのになぜ大人が止めるのか」というのが反論の主旨のようですが、高校野球は教育の一環であり、相手選手への敬意、スポーツマンシップは一番大切な伝統です。今回は、相手のエラーで出塁した際に、このパーフォーマンスをやったことが問題です。楽しくやろうという気持ちは分からないでもありませんが、相手のミスでやってはいけません。メジャーリーグでこんなことをやろうものなら、侮辱と受け取られてすぐに報復を受けます。さらにはその意味するところも知らずに、ただブームに便乗して形だけを真似するのもいただけません。♥♥♥

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