『BIG tomorrow』をもう一度読みたい!

▲最終号

 9月2日(土)付けの「日本経済新聞」の名物記事「何でもランキング」に、もう一度読んでみたい今は亡き雑誌が特集され、その第10位に『BIG tomorrow(ビッグトゥモロウ)』(青春出版社)が取り上げられました。1980年の創刊で、2017年まで38年間もの歴史を持つ雑誌です。第二次オイルショックの頃に創刊され、仕事、人間関係、マネー、異性にもてる方法など多様な角度から、一人ひとりがどう生きるかを提案する人間情報誌でした。1980年代、若手サラリーマンに広く読まれた雑誌です。451号まで発刊されました。私は創刊号から定期購読をしていましたので、この雑誌に対する思い入れには人一倍強いものがありました。

 編集部と読者の間には『ホットライン(HOT LINE)』という仕組みがあって、困ったときにはいつでも電話すれば編集部員が直接相談に乗ってくれました。200本以上かかってきた月もあったと言います。弁護士や心理士が指導してくれたりもしました。お世話になった人、救われた人も大勢いたことでしょう。

 人間関係や働き方、お金、恋愛。若い人たちが直面するお悩み解決の方法を、手取り足取り懇切丁寧に手ほどきして、コメント、イラスト、写真で細大漏らさず伝える。電車の中で読んで、電車を降りたらその瞬間から使えるものでなければ意味がない、をモットーに誌面を作ってきました。「ためになる、すぐ役に立つ情報と知識こそ、社会が求めている最大公約数だ」が出版コンセプトで、ターゲットは今で言う勝ち組ではなく、時流に乗れずにもがいている普通の若者たちでした。

 この雑誌は、発刊当初は、28万部の発行でしたが、創刊10年後の1990年前後には、50万部、60万部、70万部へと急成長を遂げていきました。ビジネス誌『プレジデント』(1985年3月号)も、「青春出版『ビッグ・トゥモロウ』はなぜ売れたか」と題した特集記事を掲載し、社長・小澤和一さんのインタビューを大々的に取り上げたくらいです。二度のオイルショックを乗り越え、やがてバブル経済に突入しようとする時代を象徴する雑誌でした。ところが、若者が雑誌や本を読まなくなり、同誌の印刷部数(1号あたりの平均)は2008年4〜6月には約13万7700部に対し、2017年4〜6月には約8万2300部まで落ち込んでいました。

 創刊初期の『BIG tomorrow』は、必ずしも実利的なテーマのみを扱っていたわけではありません。五木寛之「"いま"に燃えろ」(創刊号)、遠藤周作「自分がイヤになったとき、どうするか?」(1980年12月号)、扇谷正造「本との出会いには至福の人生が待っている」(1982年12月号)など、著名な文学者・知識人が「生き方」や「読書」を論じたものも少なくありませんでした。文学や社会問題への言及もいくらか見られました。1982年9月号では、「戦争体験の風化」が進む状況を念頭に置きながら、編集部が読者にむけて「戦争を知らない世代の諸君. 冷酷すぎない?」と問題提起し、「戦争を知らない世代が戦争を防ぐ手段──それは、想像力だと思います。他人の苦しみを自分の苦しみとして感じとることのできる、感受性だと思います」と記していた[「BIG tomorrow 編集部 公開質問状」欄、7頁]。後年には、1990年に「ちょっと真面目に読むページ「あの詩、この歌・俺の読み方」」と題した連載記事が設けられ、金子光晴中野重治らの詩を紹介しながら、「キミは一度でも、自分の生き方を疑ったことがあるか?」[1990年4月号、244頁]や「自分の弱さも醜さも、すべてさらけ出してキミは、この一篇の詩と対決できるか!」[1990年6月号]といった読者への問いかけがなされていました。 

    私はどうしてこの雑誌を長年定期購読していたかというと、創刊当初は自己啓発系の記事がたくさん掲載されていたんです。読書を通じた人格陶冶といった教養主義の規範も垣間見える雑誌で、ずいぶん勉強になったものです。故・渡部昇一先生や、故・竹村健一さんのインタビュー記事もよく連載されていました。プロレスラーの故・アントニオ猪木などもしょっちゅう登場していましたね。私は面白そうな記事を切り抜いてはスクラップしていたんです。今思い返してみるに、結構参考になる記事も多かったように記憶しています。その想い出を確かめるために、昔切り抜いたスクラップ記事を収納ボックスから引っ張り出して読んでみました(写真下)。いや~、実に面白い。でも晩年は、このような記事も姿を消し、お金の話ばかりで確かに面白くなくなっていました。唯一切り抜くのは、故・野村克也さんのインタビュー記事ぐらいだったでしょうか。それでも、突然の廃刊の発表にはとまどいを隠せませんでした。最終号は、高田明さん、森田正光さん、野村克也さんのインタビュー記事が切り抜きの最後になりました。❤❤❤

▲故・渡部昇一先生の連載記事をこうやって切り抜いて残していた

▲故・竹村健一のインタビュー記事も面白かった

 

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