『ジーニアス和英辞典』のタイガース愛?

▲10月21日「朝日新聞」夕刊

 10月21日の「朝日新聞」夕刊の一面を見て、巨人ファンの私は思わず笑ってしまいました。「ジーニアス和英辞典は、タイガースへの愛を隠しきれない」との見出しで、『ジーニアス和英辞典』(大修館書店)に阪神タイガースにまつわる例文がてんこ盛り、との記事が一面のほぼ全面を使って掲載されていました。その後も、TBSテレビの「Nスタ」(10月30日)で取り上げられたり、「スポーツニッポン」(11月7日付)で記事になったりしました。『ジーニアス和英辞典』は1998年に初版が出た和英辞典で,2011年の第3版が最新版ですが、累計発行部数が約150万部という一番人気の辞書です。辞典には8万3,000語句が掲載されていますが、例文は10万以上あり、そのうちの60の例文に阪神が登場します。(例)「今年のタイガースの強さは本物だ」「彼はタイガースのこととなるとすぐに熱くなる」 編集担当者はその理由を、「初版から編さんに神戸市外国語大出身の大学教員が多く関わっているため、無意識にタイガースに目を向けてしまったようです」と説明しています。確かにジーニアス系列の辞典の編者・執筆者は大部分が関西の方で、編集主幹の故・小西友七先生を筆頭にもともと阪神ファンが多い上に、この辞典の第2版の編集作業が山場を迎えた2003年の夏、疲れた編者たちは当時の阪神の快進撃に元気を得て苦しい編集作業を乗り切った(この年のタイガースは優勝!)という事情はあるようですが。

 記事によると、編集主幹の関西大学の中邑光男教授他、多くの関西出身者が編纂に関わっておられ、結果的に阪神ファンが多くなったとのこと。「朝日新聞」の記事には『ジーニアス和英辞典』の中の阪神関連の例文がいくつか紹介されていましたが、ほとんどが「阪神が勝った」だの「阪神が優勝した」だのといった「阪神タイガース」愛にあふれた例文です。幾つかの例を挙げてみましょう。

The Tigers got a lot of hits against the Giants last night.「昨夜,タイガースはジャイアンツ相手にヒットを打ちまくった」

Many fans want to Okada to remain[stay on] as manager.「ファンの多くは岡田監督の留任を望んでいる」

The entire Kansai region was excited about the Tigers winning the championship.「タイガースの優勝で関西が沸き返った」

The Tigers overwhelmed the Giants.「タイガースはジャイアンツに圧勝した」

The Tigers’ relief pitchers are the best of the Central League.「タイガースのリリーフ陣はセ=リーグ随一だ」 

 もっとも、阪神びいきの例文が60も掲載されている第3版の編集作業が行われていた時期は、長く阪神が優勝から遠ざかっていたために、次のような例文も加えられたようです〔笑〕。

 The Tigers have no chance to win the championship anymore. 「タイガースにはもはや優勝の見込みはない。」

 ところで、はからずも今年の日本シリーズは「関西ダービー」と称して、オリックス・バファローズ阪神タイガースの間で戦われ、阪神が日本一に輝きました。出版元の大修館書店の担当者は「優勝おめでとうございます。阪神の活躍で、図らずも辞書が注目されてうれしいです」と喜んでいます。ちなみに、昨年改訂された『ジーニアス英和辞典』(第6版)にも阪神に関する用例が約15文出現しているといい、38年ぶりの日本一で今後も用例の増加に拍車がかかりそうです。個人的にはジャイアンツの復活(アレではなくアベ)を願っている八幡でした。

 もう10年以上の前のことになりますが、赤瀬川原平『新解さんの謎』(文春文庫)という本が大ベストセラーになったことがありました。三省堂の『新明解国語辞典』を取り上げたものですが、辞典の用例には編者の個性や嗜好などがおぼろげながら現れる、ということを実証した本でした(下線は八幡)。当時、北高の学校司書さんにも紹介して喜んでもらったのも懐かしい思い出です。♥♥♥

「恋愛」 ― 特定の異性に愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持を持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる(まれにかなえられて歓喜する)状態。

「動物園」 ― 生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕られて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀無くし、飼い殺しにする、人間中心の施設

「ゴキブリ」 ― 台所をはじめ、住宅のあらゆる部分に住む油色の平たい害虫。触ると臭い。アブラムシ。

 

▲この本実に面白い!オススメ

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