投票用紙

 選挙の投票会場で渡される投票用紙は、「ユポ」という名で知られる合成紙で、実は紙ではありません。今日の話題は、この「投票用紙」です。

 合成樹脂ポリプロピレンと天然の鉱物を利用したプラスチックをシート状にしたもので、素材としては日用品のパッケージなどに使われている透明な袋とほぼ同じ材料です。木材のパルプを使用していない紙なのです。森林保全にも寄与していますね。受付で機械から一枚ずつ取り出されて手渡される投票用紙は、表面はサラサラで、妙にしっとりすべすべした手触りで、鉛筆で書いたときの滑らかな書き心地が印象に残っている人も少なくないと思います。その表面は滑りの良いプラスチックにミクロな凹凸を均一に並べたものですから、すべすべしていて鉛筆の滑りを損なうことなく、でも表面には小さな亀裂があって鉛筆の芯は適度に削られて磨り減るので、滑らかに、濃くはっきりと文字を書くことができます。これが魅惑的な書き心地の正体なんです。しかしもちろん、投票用紙「ユポ」をつかう主な理由は、書き心地が良いからではありません。それは、合成紙の「強さ」「復元力」にあります。

 まず、投票用紙は、丈夫でなくてはなりません。投票や開票の際に丁寧に扱うのは当然ですが、それでも、勢い余って無理な力をかける人がいるかもしれませんし、雨に濡れてびしょ濡れだったり、汗だくで会場に来て投票する人がいるかもしれません。中にはイタズラなどで紙を破ろうとする人もいるかもしれません。引っ張っても破れません。破ろうとしてもなかなか難しいものがあります。

 また、開票は時間との闘いですから、多少は乱暴に扱われることだってあるでしょうし、今は多くの開票現場で自動仕分け機が使われているので、投票用紙の状態が悪いと紙詰まりなどのトラブルの原因にもなります。滅多に無いことかもしれませんが、そうしたトラブルで投票用紙が傷んでしまうことで、意志を持って投票された一票が集計できなくなるのは、是が非でも避けなくてはなりません。プラスチックでできている合成紙は、普通の紙と比べて破れに対して圧倒的に強く、普通の人が指先でちぎるのはそう簡単ではありません。また、水に濡れてもきれいにはじいてしまい、全く性能が変わらないので、雨や汗に濡れても全く問題ありません。この「強さ」が第一の強みなんです。

 そしてもう一つの大きなポイントはその「復元力」です。投票用紙は普通、書いた内容が見えないように半分に折って投票箱に入れますが、開票の際にはそれを一枚一枚開いて確認する必要がありますね。投票会場で試してみました。記入後の投票用紙を両手でしっかりと折ってみます。どんなにしっかり折っても……すぐ開くんです!折ってはまた開き、折ってはまた開き、を何回か繰り返してみて、その驚異的な「復元力」に驚かされました。普通の紙の場合、しっかり折ると紙は折られたまま開ききらずに投票箱の中で重なってしまうこともありますし、中には何度も折って開きにくくして投函する人もいますから、開票時には、それらをまず開いてから平らにのばす手間が増えます。ところが、合成紙のユポは、元の形に戻ろうとする力が強く、どんなにしっかり折り畳んでも、手を離すとふんわりと開いて元に戻ります。これによって、開票作業の効率がグッと向上するんですね。この復元力こそが2つ目の強みです。♥♥♥

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