オドーア電撃退団!

 開幕を3日前に控えた中での衝撃の発表でした。巨人は、助っ人新外国人のルーグネッド・オドーア内野手(30歳)が退団すると発表したのです。阿部慎之助監督(45歳)が、不調の彼を開幕1軍のメンバーから外し2軍で調整させる構想を伝えたところ、拒否して米国へ戻りたいと申し出があったと言います。 「彼(オドーア)の中では2軍に落ちて調整するのは受け入れられないと。何度も説明を続けましたが、結局、彼の気持ちは変わらず、退団を申し入れてきた。球団も受け入れました」「最初の開幕のメンバーには入れないけれども、しっかりとファームの方で調整して、コンディションを上げてくれと話し合ったんですけど、彼の中ではとにかく『2軍、ファームに落ちて調整するというのは受け入れられない』ということになりました。1番最初のところは、監督の口から彼に対して伝えられた。何度も説明しながら、話し合いを続けてきたが、結局彼の気持ちは変わらず、退団を申し入れてきたと。それを球団も受け入れました」と、説明しました。「全て1軍で試合に出す確約はなかった。監督の言葉に異議を唱えることはできないという話は契約上にはあった」と説明。実力主義はオドーアも承知していたはずでしたが…。

 ベネズエラ出身の左打者はメジャー通算178本塁打の輝かしい実績を引っさげて加入しました。ところがオープン戦では34打数6安打(うち3本はボテボテの内野安打でした)の低打率・176、0本塁打。0打点。2022年まで8年連続で2ケタ本塁打を記録しており、巨人の補強の目玉として推定年俸2億円で入団した長打力を期待された助っ人選手でした。しかし、オープン戦では全然調子が上がりませんでした。若手外野手が次々とアピールを続ける中、低調に終わったのです。さらには2回もけん制でアウトになるチョンボも犯しました(去年もそんな選手がいましたね)。

ルーグネッド・オドーア(Rougned Odor) 1994年2月3日生まれ、30歳。ベネズエラ出身。2011年レンジャーズ入団。14年にメジャーデビュー。16年にブルージェイズのバティスタとの大乱闘で注目を集めた。レンジャーズ時代に30本塁打以上を3度記録。ヤンキース、オリオールズを経て昨季はパドレスでプレーし、出場59試合で打率・203、4本塁打、18打点。今年1月、年俸2億円で巨人に入団した。メジャー通算成績は1154試合で打率・230、178本塁打、568打点。180センチ、90キロ。右投げ左打ち。

 メジャー研究家の友成那智さんは、「巨人ファンにとっては残念な話ですが、日本野球とは最も合わないタイプの選手だと思います」と言います。 「どんなボールでも手を出すバッターのことを“フリースインガー(free-swinger)”と呼びます。オドーア選手が、まさにそうです。低目を得意にしており、普通のバッターなら難しい球でもホームランを放つところは魅力的です。しかし、どんな球でも振ってしまうので、四球が少なく三振が多い。結果として出塁率は低くなります。日本の投手は制球力があり、緩急を交えるのも得意ですから、翻弄されてしまうかもしれません」身体能力は抜群ですから、セカンドで物凄いファインプレーを見せたことは何度もあります。ところが、エラーも多い。それもサインプレーといった複雑な場面でミスをするのではなく、普通の打球なのに処理を誤ったりします。巨人が外野手として登録したからといって、オドーアは内外野のどこでも守れる、いわゆるユーティリティープレイヤーというタイプではありません。多分、セカンドの守備が不安なので、外野にコンバートしたのではないでしょうか。オドーアは2017年、レンジャーズと6年総額4950万ドル、当時の為替レートで約55億3,400万円、現在のレートだと73億円の契約を結んでいます。オドーア選手は金持ちなのです。今年、MLBの契約更改は、異常なほど進んでいません。腕利きの代理人と契約を結んでいても、行き先が決まっていない大物選手が少なくありません。多分、オドーア選手は、MLBでの契約がなかなか決まらないことに痺れを切らし、巨人のオファーを快諾したのでしょう。ですから、彼にハングリー精神はありません。日本で活躍しなければメシが食えないという選手ではないのです。」 結局、MLB通算178本塁打の輝かしい実績を誇った男の実力は未知数のまま、文字通り「幻」に終わりました。推定年俸2億円で獲得した助っ人はシーズン本番の舞台に立つまでもなく帰国の途に就くこととなりました。

 ただ、オドーアに対しては、かねてきな臭い話も出回っていました。それが本人の経歴を巡る“詐称疑惑”です。NPB球団のある編成担当者は「そもそも年齢からして怪しかった。公称では今年が30歳となっているけど『あれは絶対に36歳か37歳くらいだ』とも言われていました。オドーアを調査していた球団は複数ありましたが、そうした点から『怖くて獲れない。ピークは過ぎているんじゃないか?』と手を引いた球団もあったと聞いている」と声を潜めました。このご時世に年齢詐称などあり得るのか。MLBスカウトの1人は「オドーアの出身地のベネズエラでは、戸籍そのものがしっかりしていないこともあり、こうしたケースはまれに起きる。だからこそ、しっかりと調査しないといけない」と言います。さらに、別の球界関係者も「DeNAで監督も務めたアレックス・ラミレスもベネズエラ出身で、年齢不詳とされていたでしょ? それと同じ」と同調しました。年齢を偽っていようがいまいが、オドーアはプレーすらせずにチームを去ります。新任の阿部監督がいよいよ船出する3日前に起きた悲劇。ショックをどう乗り越えるのか、指揮官の手腕とチームの結束が試されます。今季加入した新助っ人の中で、唯一の野手が開幕前にいなくなってしまったのですから衝撃的です。しかし、関係者はみんなスッキリしているんじゃないでしょうか。仮に開幕二軍に本人が納得したとしても、そのまま二軍に置いておけたかどうか、年俸2億円のメジャーの大物ですから、本人のプライドもあるだろうし、どうしたってある程度は一軍で使わざるを得ません。阿部監督の足かせになるところでした。空いた右翼には、オープン戦好調の松原や状態のいいベテラン梶谷を入れられます。かえって良かったというのが大部分の声でしょう。阿部監督はチーム内に配布した「監督指針」の1番目に「勝利のために自己犠牲ができる選手を起用する」と記しています。ネット上では「勝負に徹した姿勢は共感できる」「若手の外野メンバーはやる気を出すと思う」などと歓迎の声が多く聞かれます。たとえ大物助っ人だろうが、自身の方針を曲げなかったことも、チームにプラスに働くかもしれませんね。実際外野手は調子のいい選手がいくらでもおり、大激戦区でした。佐々木、丸、松原、梶谷、長野、オコエ、秋広、萩尾、浅野、重信選手らには、大きなチャンスが巡ってきました。今年の45歳の指揮官・阿部新監督は、選手やコーチ、スタッフ全員に配った小冊子にこう記しています。「勝利のために自己犠牲ができる選手を起用する」「成績だけの昇降格はしない」「結果が大事だがプロセスを重視する」「トライアル&エラー 失敗から学ぶ」「チーム内競争を促す」さらに「素直さ、謙虚さ、継続力、献身性、思考力」という五つのスキルを重視するとしました。

 私はこの衝撃の退団は、逆にチームには好影響を残すと思っています。まず第一に、助っ人の開幕直前の離脱という危機的状況に、チームの結束が強固になりはしないか?阿部新監督の下で、チームの結束が強固になる機会となりそうです。昨オフに原辰徳前監督からバトンを受けた阿部監督は、就任直後から「競争」という言葉を何度も使い続けてきました。言葉通りにキャンプからオープン戦を通じて、結果を残せなかった選手は、容赦なくファームで再調整を命じてきました。つい先日も秋広優人内野手の開幕二軍を明言し、「ここからは結果を見ていくよ、と言った中で結果を出せなかったからね。それだけですよ」と語っていました。その点で、オドーアの二軍降格も当然のことと言えましょう。オープン戦で結果を残せていないということだけでなく、二度も牽制に引っかかってアウトになる凡プレーもありました。いくらメジャーでそれなりに実績のあるとはいえ、例外とせずに求めてきた方針通りのプレーができなければ一軍に置かないのは当然でしょう。結果として開幕直前の退団という異例の事態を招きましたが、この決断で選手たちは監督の言葉の絶対的な重さを感じたはずです。今年の巨人のポジション争いは例外のないガチンコ競争となることを選手たちが改めて肌で実感したはずです。チームに1本の芯を通すきっかけになりました

 さらに、若手起用に拍車がかかり、戦力面でのアップにつながりそうです。もしオドーアを一軍に残せば、おそらく最低でも開幕から1、2カードは使わなければいけません。ただ今季の巨人の外野のポジション争いは、激しく、若手の台頭が顕著です。オドーアという大きな石が無くなったことで、若手選手を使うチャンスが開幕から増えるのは確実と思われます。外野の控えにはキャンプからオープン戦と復活をアピール、オープン戦で打率3割2分をマークした松原聖弥外野手がいます。また貴重な右の外野手としてソフトバンク戦では1号2ランを放つなど実戦力を見せた萩尾匡也外野手もいます。そして腰痛でキャンプはリハビリ組スタート、阿部監督に「開幕一軍は考えていない」と言われながらも、ギリギリで這い上がってきた浅野翔吾外野手も控えています。阪神との開幕初戦では、早速代わりにライトに入った梶谷選手の、大飛球を好捕するビッグプレイと2ランホームランで快勝しました(残念ながらまたケガで登録抹消)。第2戦では松原選手がダメ押しのタイムリーヒットを放っています。助っ人がいなくても全然大丈夫です。今ではチーム練習中のふとした瞬間に「オドーア!オドーア!」と連呼してナインの笑いを誘うなど、単語そのものが一種のキラーワードとなっている様子だと言います。「お騒がせ助っ人事件」が今では「笑い話」に昇華しているようです。ソフトバンクに放出したウォーカー選手が大活躍しているのは、巨人の外国人選手のいつものパターンです。♥♥♥

【追記】  滑り出しは絶好調な巨人でしたが、現在3連敗。いずれもミスからの自滅でした。誰一人送りバントができない。せっかく挟んでも挟殺プレーができない。暴投やパスボール、四球を連発してはとどめを刺される(メンデス投手は即刻二軍送りとなりました)。普通のことができずに、ミスを繰り返していれば「野球の神様」が怒るのは当然のことです。「当たり前のことを当たり前にできる」チームが勝つのです。救いは先発ピッチャー陣が安定していることでしょうか。3連敗の後の菅野投手は流石で、悪い流れを止めてくれました。この試合はきちんと全員が送りバントを決めました。するとちゃんとタイムリーヒットが出るのです。

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