以前にこのブログで取り上げた接尾辞-ishについて、もう一度取り上げておきます。そして最近の新しい流れについて触れます。毎年、松江北高補習科と勝田ケ丘志学館の英語演習で、神戸大学の2010年の後期入試に出題された英語長文問題を読んでいます。いい文章なので、毎年取り上げているんです。「単語とは一体どういうものだろう?」というテーマで、L.ブルームフィールドの「最小の自由形式が単語である」という定義を紹介して論を進めていきます。私も大学生時代に読んだ大部な言語学書でした。そして最後は、次のような文章で締められています。
Contrast this with the word childish which can be analyzed into child– and –ish. While the child bit of childish is meaningful when used on its own (and hence is a word), the same is not true of –ish. Although according to the Oxford English Dictionary (OED) –ish means something like “having the (objectionable) qualities of” (as in mannish, womanish, devilish, sheepish, apish etc.), there is no way we can use it on its own. If someone shouted to you in the street, “Hey, are you –ish?” you might smile puzzled and think to yourself, “Isn’t he weird!”
(〔訳〕この語を、child-と-ishとに分解できるchildish「子供っぽい」という語と対比するとよい。childishのchildという部分は、それだけで用いても意味がある(したがって、それは単語である)が、同じことは-ishには当てはまらない。『オックスフォード英語大辞典』(OED)によれば、-ishは(mannish「男っぽい」やwomanish「女々しい」devilish「悪魔のような」sheepish「内気な」apish「サルのような」などの語に見られるように)「(好ましくない)特性を持つ」というようなことを意味するが、どうやっても-ish(「~のような」)をそれだけで用いることはできない。もし誰かが通りであなたに「やあ、君は-ishかい?」などと大きな声で呼びかけようものなら、あなたは戸惑って笑みを浮かべ、心の中で「あいつ、変なんじゃないか?」と思うかもしれない。)
ところがそうも言っておられない状況が起こってきました。尊敬する奥田隆一先生(当時関西大学外国語学部教授)からご恵送いただいた『英語語法学の展開』(関西大学出版部、2018年3月)を読んでいて、この-ishに関する興味深く鋭い指摘を見つけました。従来、名詞に付いた接尾辞-ishは「~じみた」、形容詞に付くと「~ぽい」、数に付くと「~ごろ」という意味になることが常識でした。ところが現代英語では、いろいろな語に付けて「~気味の」「~がかった」という意味で使うようになっていることが、ふんだんな用例とともに紹介されています。そしてハイフン付きの-ishから派生した…ishという表現が、「多分ね」という表現が観察されるといいます。自分が発話した言葉に自信がない場合に、後から付け足して「多分ね」と意味を弱める働きをしています。さらには、この…ishという表現がさらに拡張されて、それだけで1語として認識されるようになっているというのです。次のような用法です。デレックが、彼女を招待すべきだ、と言うと、メレディスが「なぜ?」と聞くので、「だって家族だろ」と答え、それに対して「まあね」ぐらいの意味でIsh.を使っています。
Derek : We should invite her over... For dinner.
Meredith: Why?
Derek : She's family.
Meredith : Ish.
Derek : Dinner tomorrow night. It's what people do.
Meredith : What people ?
―Grey's Anatomy, S11E6
このようなIsh.の用例が多数紹介された後で、「接尾辞の-ishが、自信のないときに付け足す…ishの用法に拡張し、さらにIshという語が確立されPerhapsのような使い方にまで拡張している」と奥田先生は結んでおられました。私は初めて知った実に興味深い指摘でした。このような現代語法の現実を踏まえた上で、上の神戸大学の言語論を読むとどういうことになるでしょうか?結論に疑念が生じますね。
A: Let’s meet up 5 pm at the station. 「5時に駅で会おうよ」
B: Exactly 5? 「きっかり5時?」
A: Ish. 「そのあたり」
さて、ここからが新たな追加情報です。最近、David Crystal, 50 Questions About English Usage (Cambridge University Press, 2021)を読んでいたところ、“I have people adding -ish to words a lot. What does it mean?”と題して(pp.14-15)、先ほど述べた新しい単独用法(fresh uses today)を取り上げており、興味深く読みました。
A: Are you interested in going to the show?
B: Not very./ Sort of./ Kind of./ Ish.
このIshはinterestedishの短縮形で、1980年代になった頃初めて使われ始めたとのこと。“in a way, partially”くらいの意味で、面白おかしく、共感を示すことが多いのですが、批判めいた気持ちも表します。イントネーションは、↘↗の形を取るのが普通です。
A: Robin sang brilliantly last night. ― B: Ish.
自分の言ったことに付け加えて、文修飾語の機能を果たすこともできます。いや~、英語は実に奥が深い。♥♥♥
I like broccoli. Ish.

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