列車が所定の位置にピタッと止まれる理由

 日本の鉄道の正確性は世界でも有名です。列車の遅延がほとんどないのも日本ならではの特徴ですね。たとえ1分でも列車が遅れようものなら、「本日は列車が遅れましてご迷惑をおかけしました」とアナウンスがあるほどです。諸外国では考えられないことです。他にも、例えば電車がホームに入ってくると、足元に記された乗車位置を示すマークにピッタリと止まってくれますね。 我々にとってはこれはごくごく当たり前の光景です。私は週に3日、松江駅から米子・博労町へ列車通勤していますが、いつもホームの5・6番のマークの箇所ににピッタリと止まってくれます。ところが、今日はずいぶん停止位置が後の方にずれていて、困惑しました。こんなことは初めてのことでした。「おいおい、止まる場所がずいぶん違うじゃないか!?下手くそ!」 

 今日はこの事情について考えてみたいと思います。結論から先に言うと、実はこれは高い技術と経験の賜物なのです。普段自動車を運転する人なら、ブレーキをかけて信号の手前でピッタリ止まることはそう難しくないかもしれません。 しかし鉄道の場合は鉄の車輪がレールの上を滑るように走っているため、ゴムタイヤの自動車と比べるとブレーキが利きづらいのです。ブレーキが作動してから列車が止まるまでの制動距離が非常に長いのです。この問題を考えるヒントに、綿貫 渉『図解 眠れなくなるほど面白い鉄道の話』(日本文芸社、2023年)という本が参考になりました。

 列車がホームの決められた場所に停まることは、幾つかの点で非常に大きな意味を持っています。

(1)安全性と乗降の利便性列車がホームの所定の位置に停車することで、乗客が安全かつ効率的に乗り降りすることができます。

(2)乗客の便宜ホームの所定の位置に停車することで、乗客が目的地の出口や接続列車への移動がしやすくなります。乗客が長距離の移動や短時間の接続をスムーズに行えるよう、列車の位置は重要です。乗り換えがある場合には、あらかじめエスカレーターやエレベーターに近い所で乗り降りをします。

(3)運行の効率化正確に停車することで、駅員や乗務員が乗客の乗降を迅速に処理でき、次の運行に備える準備ができます。また、ホームの設備や案内も適切に利用されることで、駅の混雑や乗客の安全確保に貢献します。

(4)安全確保ホームの所定の位置に停車することで、列車とホームの間の隙間が最小限に抑えられ、乗客の安全を確保します。また、列車の荷物や乗客の荷物の取り扱いも容易になります。

 運転士は、電車がホームへ進入すると、まず停止位置目標を確認します。 そして車体が大きく揺れることがないように、丁寧にブレーキを操作して電車を止めるのですが、ブレーキのかけ具合は天候(降雨・降雪・風)や乗客数、車両編成の数(重量)でもずいぶん異なってきます。運転士はこれらの状況に注意を払い、慎重にブレーキ操作を行わなければならないのです。つまり、ここら辺が運転士の腕の見せどころなのです。 また、ドアも自動ではなく、車掌や運転士が、タイミングを見てスイッチ操作で開閉しています。 電車が定刻通りに到着し、列を作って待っている利用客の前にピッタリと止まる光景は、我が国では当たり前のようで、実は運転士の不断の努力の賜物なのです。電車を駅のホームの停止位置やホームドアがある位置にきちんと正確に止めるには、高い技術と経験が必要とされています。 

▲『図解 眠れなくなるほど面白い鉄道の話』より

 繰り返します。電車が駅に定刻通りに到着し、列を作って待っている利用客の前にピッタリと止まる光景は、当たり前のようで、実は運転士の努力の賜物なのです。今朝私は、下手くそな技術の運転士をこの目で目撃して、このことを実感した次第です。

 近年ではホームに転落防止用のドアを設置している駅も増えており、停止時にはこのドアと車両のドアとがピッタリの位置でシンクロします。正確な停止位置に電車を止めるために、一部の路線ではTASC(定位置停止装置)を取り付けています。これにより、電車は停車駅に接近すると自動でブレーキがかかり、勝手に決められた場所に電車を正確に止めてくれます。運転士が手動でブレーキをかけなくても勝手に自動でブレーキがかかるため、オーバーランや誤通過の防止策としても非常に有効的な手段となっています。これがあれば、「ホームドア」の設置駅でも正確な位置に列車が停止できるのです。 ♥♥♥

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