教員不足

 鳥取県が昨年度に実施した教員採用試験で、合格した人の半数以上が採用を辞退していたことが、NHKの報道で伝えられました。しかし、私はこれは分かりきった結果だったと感じています。鳥取県が昨年(2023年)実施した公立の小中高校・特別支援学校の教員採用試験(教採)で、今年の採用予定者数は270人でした。これに1,378人が応募し、327人が合格しました。教員不足が大きな話題になっている時に、合格者全員が鳥取県内の学校に赴任していれば、大きく教員過剰となるところでした。ところが、最終的に教育委員会が採用できたのは、補欠合格者を含めて161人にすぎませんでした。半数を超える174人が採用を辞退したためです。教員不足に拍車がかかることはもう目に見えています。大量の辞退者が出た理由は、教員採用試験の試験日を早めたことに大きな原因がありました。従来は7月に行われていた教採の実施を文科省は、2024年実施の試験開始日を6月16日に前倒しすることを求め、さらに2025年実施については5月11日を目安にするよう求めています。前倒しすることが教員確保につながる、と安易に考えているからです。それが全くの無意味であることが分からないのでしょうかね?昨年、鳥取県教採試験開始日は、6月11日でした。文科省に先駆けて教員採用試験の前倒しを実施し、全国的にも早い日程で行われたのでした。日程が早ければ、鳥取県を受験して、さらに他県の教採を受験することが可能になります。実際、ダブル受験が多く、そして出身地元の教採に合格したら鳥取県は辞退するケースが多かったようです。鳥取県教育委員会「特に県外からの応募者の辞退が多い」と説明していますが、当たり前のことでしょう。採用者数が採用予定者数を下回ったのは3年連続とのことでした。

 こういった事態が起きることは、分かりきったことでした。2022年に実施された高知県教員採用試験は、どこよりも早い試験開始日で実施していました。その結果、競争倍率は8倍を超えましたが、実際の採用は採用予定を下回りました。辞退者が多かったためです。試験日が早かったために、高知県と地元の教員採用試験を掛け持ちし、両方に合格したら自分の地元を選ぶ受験者が多かったのでしょう。鳥取県の場合も、高知県と同じです。高知県の例を学んでいれば、結果は分かりきっていたことでした。それにもかかわらず同じことを繰り返しているのは、何も学んでいないからです。抜本的な教員の働き方改革に手をつけず、教採を前倒しするだけで教員確保ができるという文科省の考えは、幻想でしかありません。そこに労力を使うだけムダになります。「賢者は歴史に学ぶ」(ビスマルク)、「賢者は愚者に学び、愚者は賢者に学ばず」の精神が足りないための当然の結果でした。

 何とあろうことか、私の地元の島根県は、令和8年度(令和7年度実施)の教員採用試験の日程を5月中旬(!)に実施することを発表しました。今年までは7月6日に実施していたものです。教員志望の学生が減る一方の中、何とか打開しようと文科省の言う通りに前倒しして行うのです。これにより、合格発表も8月上旬と早まります。断言します。鳥取県と同じような悲惨な結果が予想されます。昔、楽天監督の故・野村克也さんが、巨人戦の最終回二死で、巨人が無謀な盗塁をして刺されてあっけなくゲームセットになった試合後の記者会見に現れ開口一番「バッカじゃなかろか、ルンバ!」とご機嫌だったのを思い出しました。

 正規採用・臨時的任用を問わず、学校にいるはずの教員の数そのものが満たされていないことは、全日本教職員組合の調査によれば、全国の公立小・中・高・特支では今年の5月の時点で約4,000人が不足していることが分かりました。さらには昨年以上にこの現象が進んでいると言います。教員の労働環境を改善するために、そして子どもの学びを充実させるために「教員を増やす」ことが声だかに叫ばれてきましたが、今では教員数が充足できない事態(教員不足)に陥っているのです。

 文部科学省は、教員の処遇を改善して質の高い教員を確保するために、残業代の代わりに一律支給されている「教職調整額」(基本給の4%)を50年ぶりに13%に引き上げる方針であることを発表しました。教員の長時間労働が問題となる中、実態に合っていないことから処遇改善を図ろうというのです。「働き方改革」を声だかに叫び、低迷している教員の採用倍率を何とかしようという策なのでしょう。確かにお金の面も大切でしょう。しかし一番大切なことは、お金などではなく「教員のやり甲斐」であることを忘れてはなりません。私が松江北高に帰ってきた頃は、確かに夜遅くまでの長時間勤務に、部活動の指導、進路指導、土・日返上しての勤務などブラックな環境ではありましたが、生徒たちがそれに応えて見事な結果を残してくれるというご褒美が待っていました。それを誇りとプライドにして、みんなが頑張っていたように思います。♥♥♥

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