例えば、受験熟語集の木村達哉『ユメジュク』(アルク)を見ても、「make an effort 努力する」としか出ていません。同様に、辞書等でも表面的な「effort=努力」という理解がほとんどだと思います。私は毎日英語を観察していて、このことの問題点に気がつきました。日本語ではeffort(努力)は肯定的な意味合いを持っているものと思いがちですが、実際の英語では否定的な使われ方をすることが多いのです。例えば、Thank you for your effort.という英語は、ネイティブ・スピーカーたちの間では普通「失敗してしまったけれど、努力してくれてありがとう」という意味で使われることを、デイビッド・セイン(David Thayne)先生が観察しておられます。もし成功したのであれば、workを用いて、Thank you for your hard work.などと言うのが適当です。

配達時間を短縮できるよう努力しております。
△We are making efforts to shorten our delivery times.
◎We are working hard to shorten our delivery times.
会議に時間通り行けるように努力した。
△I made an effort to be on time for the meeting.
◎I tried hard to be on time for the meeting. (デビッド・セイン)
effortは「報われない努力」を示唆することが多いので、We are making efforts……では「努力しておりますが、実現できておりません」という言い訳めいた意味合いになってしまいます。また、I made an effort……では「ちょっとは努力した」程度の意味になってしまいます。cf. デイビッド・セイン『英語ライティングルールブック 改訂新版』(学研、2024年) make an effortは、ネイティブスピーカーにすれば「ギリギリなんとか努力と見なされる程度の努力」をイメージさせる表現です。We will make an effort to reduce greenhouse gas emission.という文章は「弊社は音質効果ガスの排出を減らすためにほんの少し努力します」というニュアンスです。We will need to make an effort to…は「ちょっとは努力しないと」という意味合いです。cf. デイビッド・セイン『ネイティブが教える英語の動詞の使い分け』(研究社、20212年) 私が「理想の単語集」と考える竹岡広信先生の『LEAP』(数研出版)では、踏み込んで「「(ちょっと)頑張る」の意味なので、人命救助などの場合、make a great effort「大いに努力する」などと表現する」とあります。ここら辺は私が「最高の単語集」と薦めるだけあって、さすがですね。

▲この辞典が実に面白い!!
ここら辺が英語の実に難しい所で、どんな辞典や参考書を見ても、このような細かいニュアンスまでは分かりません。こんな時に私がとても重宝している一冊をご紹介します。Longman Essential Activator (Longman, 1997)という学習辞典です。この辞典には他の辞典では知ることのできない貴重な情報がびっしりと詰まっています。次の語義解説と添えられた用例をじっくりとお読み下さい。上で述べたここら辺のニュアンスが実によく分かりますね(下線は八幡)。
make an effort to do sth : to try hard to do something, especially something which you do not want to do but which you think you should do : I made an effort to sound interested in what he was saying./ I wish you’d make an effort to be freindly to her.
この辞典が、他の辞典とひと味もふた味も違うという例を、もう一つだけ挙げておきましょう。受験英語ではarrive at= get to= reachという書き換えをよく見ます。受験レベルではこれで十分です。しかし、この辞典によれば、arrive atは、get toよりもより<formal>です。またreachの定義を見てみると、“to arrive at a place, especially after a long or difficult journey”とあります(下線は八幡)。こうした説明があれば、「ああそうか、reachは同じ「着く」でも「たどり着く」という感じなのだな」と分かります。そして挙げられた用例で、その感じがはっきりと伝わってきます。時間がある時に拾い読みしていると、思わぬ発見のある辞典です。♥♥♥
It took them over three days to reach the top of the mountain.(山の頂上にたどり着くのに3日以上かかった)
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