「クリスマスの約束」最終回~第二部

 シンガー・ソングライターの小田和正(おだかずまさ)さんが出演する聖夜恒例の音楽特番「クリスマスの約束2024」第二部が12月24日の第一部「22分50秒」)に続いて、私の地域では12月28日の深夜(2~4時)に放送されました。2001年に始まり、ほぼ毎年続けられてきましたが、コロナ禍で3年ぶり20回目の節目となる今回をもって、最終回となりました。素晴らしい番組を24年間20回も続けて、クリスマスプレゼントとして届けてくださった小田さんに感謝したいと思います。

 小田さんの言葉を借りると、ご自身の体力的な問題(77歳)や、多くの曲を覚えるのに時間がかかったり、このまま続けていてもこれまで築き上げてきた「クリスマスの約束」というものを越えられないのでは、という思いもあったようです。選曲からアレンジやリハーサルを含めて、濃密な時間をかけてとても丁寧に作り上げる番組なので、準備には小田さんやアーティストにかかる負荷は非常に大きく、そういう意味でもご自身の体力や気力の部分、参加アーティストのスケジュール等を含めて、目指す番組のクオリティの高さを実現し続けることが果たしてできるのか?と自らに問いかけ、導き出した答えだと思われます。小田さんの言葉の通り、番組は求められているうちに終わるということが大切だ、ということなのでしょう。

 『クリスマスの約束を楽しみにしています』、と言ってもらえるうちに番組を終えることにしました。寂しいけれど、きっとそれがいいと思ったのです。(小田和正)

『クリスマスの約束2024』(12月3日KTZepp Yokohama)

 小田さんの熱い想いや希望が込められた音楽ステージ。魂を揺さぶられる演奏の数々。各アーティストが創り歌う曲を、皆で尊敬しながら歌うことで心が高まり盛り上がり、そこに感動が生まれる様子を今まで目の当たりにしてきました。番組のメイキングでは、企画から練習から、リハーサルまで妥協や手抜きのない真摯な態度で誠実に練習に向き合う小田さんや、メンバーや出演者の皆さんの真摯な姿にも感動しました。そして長年続いたということは、様々な音楽シーンに挑戦した小田さんの成果ということでしょう。有言実行の小田さんの素晴らしい功績です。それら全てに尊敬、そして感謝です。

『クリスマスの約束2024』(12月3日KTZepp Yokohama)

     最終回の一曲目は、2001年第1回目の放送時の一曲目「言葉にできない」でした。あなたに会えて ほんとうによかった 嬉しくて 嬉しくて 言葉にできない>というフレーズが(本当はオフコースを脱退していく鈴木康博さんに向けられた曲でしたが)、小田さんからアーティストとファン、そして制作スタッフへの24年間の感謝の気持ちが込められているかのように会場に響き渡りました。そもそも小田さんはテレビの音楽番組には一切出演しないことで知られていました。20代の頃に「大事に扱ってくれない場所」との印象を度々抱き、「口パク」を求める演出にも違和感を持っていました。当時TBSの阿部龍二郎プロデューサー(現TBSホールディング社長)「現在あるものとは違う音楽番組をやってみませんか?」小田さんに打診し、その時53歳だった小田さんは「アーティスト同士がお互いを認め、愛し、尊敬することで日本の音楽シーンは成熟する」という思いを抱いており、双方の思いが結実した番組がスタートしました。小田さんはオフコース時代を含めて、他のアーティストとの共演が極端に少なかったことはご自身でもおっしゃっていますが、1983年頃、小田さんは日本版グラミー賞設立を目指して奔走したことがありました。そこには日本の音楽業界はもっとアーティスト同士がリスペクトし合い、もっと一緒に音楽をやるべきだという強い思いがあったと思います(結局挫折してしまいましたが)。2001年当時、小田さんはこれからの自身の音楽人生を“黄昏”という言葉で表現していたと思いますが、もっと色々なアーティストと一緒に音楽をやるべきだった、という思いが強くなっていたようです。その思いを形にするというプロセスの中で、小田さんが曲を選び、それを自分でアレンジしバンドと共に演奏してもらう。何組かのアーティストには自分で手紙をしたためて、出演の依頼をするというこの番組が生まれることとなりました。

     「誰かの歌を評価し、発表するということが、日本の音楽文化を次のステップに進ませるんじゃないか」という思いが根底にあり、初回(2001年)は、山下達郎を始め7組のアーティストに小田さん自身が手紙を書き、出演のお願いをしましたが、結果的にゲストなしで行われました。この時小田さんは「ゲストが誰も出てくれないのがドラマ」と語り、プロデューサーの阿部さんは「小田さんに恥をかかすようなことはできないなので、やめましょう」と進言しました。でも小田さんに「もし君らさえよければ、繕うことなくありのままを伝え、ひとりで懸命にやるけれど」と言っていただけて、収録の準備を続けました。第一回目の印象的な冒頭シーンは今でもはっきりと覚えています。

『クリスマスの約束2024』(12月3日KTZepp Yokohama)

 お待たせしました。結論から言いましょう。今日は、誰も来ません。(悲鳴)なんで、そんなに嫌がるんだよ、ひでぇーな、ま、期待させた僕が悪いんだけど。でもそんなこと言って、最後に誰かくるんじゃないのって、来ないって、私が最後まで引っ張っていきますから。まあ、僕もさんざん断ってきました。オフコースの時は、もう何頼まれても『出ません』『出ません』、全部断ってきたので、よくわかります。もう一人で歌うわけですよ、これから。で、私は、どんな歌を選んだでしょう?初めてなんですよ、人の歌を歌うのは。ほとんどカラオケにも行かないし。今回、人の歌を歌ってみたら、とっても貴重な経験をいっぱいしました。それぞれの楽曲には、それぞれ素晴らしい世界があって、お世辞抜きで、僕は感動しました。一曲目です。

 そんな軽妙なトークの後に、一人でステージに立ち、一曲目としてSMAP「夜空ノムコウ」を歌いました。ゲストは誰も来ないと宣言しているにもかかわらず、それは不思議なほどにワクワクさせる始まりだったのを覚えています。3年目にようやく、ゆず財津和夫桜井和寿らが初めてゲストとして出演した後は、毎回ゲストと美しいハーモニーを会場全体に響かせてきました。中でも大きな話題になったのは、「落陽」などを吉田拓郎と歌った2013年や、宇多田ヒカルが出演した2016年。歌ったことがない曲に挑戦したり、番組のために制作したオリジナル曲を熱唱したりするのも見どころの一つでした。2009年には、その年の出演者21組34人の楽曲をつないだメドレー曲「22′50”(22分50秒)」を全員で歌い上げ、最後の曲「帰りたくなったよ」の後はしばらく拍手が鳴りやまず、小田さんも言葉を失いました(⇒第一部の私の解説はコチラです)。ゲストの楽曲を通じての交流を機会に触発し合う、この曲はこんな可能性を秘めていて、もう一度それを見つめ直して「いい曲だよな」と提示することで、そのアーティストの潜在的・顕在的な魅力を、「みんな忘れかけているかもしれないけど、こいつはそんなもんじゃないよ」と伝えたり、「もっとこいつに頑張らせよう」という思いをその一曲に込める、という小田さんなりの信念がありました。若いアーティストの場合は「こいつらこれだけの曲を書くやつだから、この先もちょっと見守ってみたいな」というお節介な思いもあったと吐露しておられます。共演するアーティストたちと厳しい練習を重ねていく様子は、まさに『小田学校』とでも言うべきものでした。小田さんの求める理想を周囲が理解できず、時にはぶつかることもありましたが、それを乗り越えたところに奇跡的なステージが生まれました。「先が見えないからと目先のことで済ませず、言葉にできない何かに向かって力を合わせる。すると誰も見たこともないものが生まれると、私も小田さんから学んだ」阿部社長

 さていよいよ第二部です。いきなり、「風を待って」で番組が始まりました。小田和正さんとゲストの皆さんの共演です。今回の出演者は、小田和正、水野良樹(いきものがかり)、和田唱(TRICERATOPS)、熊木杏里、松たか子、JUJU、矢井田 瞳、根本要(STARDUST REVUE)、です。続いて小田さんのMC。「クリスマスの約束は一度だけの放送で終わるはずの番組でした」という話しから始まります。このMCの中で20回目の今回の「クリスマスの約束」を最後にすると衝撃の発表が読み上げられました。観客の姿が画面に映し出されていましたが(当初の頃はきれいな女性の観客が涙するところがカメラで大写しになるのが特徴的でした)、最初は小田さんの言葉が直ぐに理解できなかったようで困惑した表情、そして意味が次第に分かり涙をする観客の姿が映し出されます。小田さんのソロで「言葉にできない」が演奏されます。こちらの曲は「クリスマスの約束」の第一回目の放送で一曲目に採用された記念の曲です。そして、「クリスマスの約束」で過去19回放送された番組の中から編集された映像で歴史を振り返るというコーナーに続いていきます。会場に行った観客も含めて過去映像を見る形になったのだと思いますが、本当は最後なので、ゲストの方々の楽曲も含めて、もっと生で聞きたかったのではないかと感じました。ちょっと過去の映像シーンが長すぎた気もします。数々の名曲が流され、小田さんのアレンジによる見事な「追っかけコーラス」は健在でした。その中で私が特に印象深かったシーンは3つ。一つは現在休業中の山本潤子さん(ハイファイセット)の透き通った歌声を聞き、「あー、この人はやはり歌が上手いなあ。アマチュア時代に小田さんを負かしたボーカリストはさすがだなあ」と思いました。小田さんのことを「小田くん」と呼び、小田さんは「ジュンコばばあ」と呼ぶ盟友同士です。もう一度カムバックしてもらってあの歌声を再び聞きたいものです。2つ目は、さだまさしさんとのコラボシーン。二人で共作した「たとえば」のデュエット(入院中のベッドで私を一番勇気づけてくれた曲です)に、「wow wow」の澄んだハーモニー、最高でした。3つ目。矢井田瞳さんのために書いた「恋バス」久しぶりに聞きました。クリスマスの時期になるとなぜか無性に聴きたくなる一曲なんです。小田さんのハモリと追っかけコーラスが見事な名曲です。

 過去の振り返りはここで終わり、ここからは全員コーラスのクライマックスへと向かいます。The New Christy Minstrels「TODAY」、アマチュア時代にオフコースでよくハモっていた曲です。そして最後の最後は、小田さんの「この日のこと」を全員でコーラスしました。

 収録後の小田さんの感想です。「寂しくなるだろうな、と思っていたけれど、やっぱり理屈抜きで寂しいなと。最後のナレーションの収録で、過去のVTRを見たら懐かしく感じましたね。最初のころ、訳も分からないのに、大口たたいて始まったんだなあって(笑)。」「クリスマスの約束」が終わることになってからは、あまり聴いてませんね。普段の生活ではほとんど聴かないし、年末のこの番組のために聴いているところがあったからね。良い曲はないか、良い曲はないかなって。だから好みの曲に出会えた時はうれしかったですよ。でも偉そうなこと言っているけど、自分の趣味でもあるからね。最近の曲はダンスとセットだったりして20年前とは大きく違うから、改めてなんか見つけなきゃ、って聴くことがさらに少なくなりましたね。」

 この番組「クリスマスの約束」の初回から今回に至るまでの歴史と舞台裏を、会報「Far East Cafe Press」最新号(Vol.410)で、追分日出子さんのインタビュー記事を読むことができます。また、『朝日新聞』2025年1月9日(木)付けでも「ラストクリスマス 小田和正の満願」と題した記事が掲載されました。♥♥♥

▲『朝日新聞』にも取り上げられた!

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