時間厳守~「足立時間」

 この度22年も連続で「日本一の庭園」となった足立美術館の創設者・足立全康(あだちぜんこう)さんの自伝『庭園日本一 足立美術館をつくった男』(日本経済新聞社、2007年)を読んだ時に、足立さんの時間の捉え方(=「足立時間」)に関して述べた興味深い文章がありました。

 私が、目上の人と会うときに心がけたものの一つに、時間を厳守することがある。誰と会う場合でも、こちらから訪ねるときは必ず十分前には到着した。いくら金がなくても、その気になれば必ず守れるのが時間だ。こちらの都合だけで、決して相手の時間を無駄に費やさせてはならない。
 地元の人たちの間では、「足立時間」と言ったら、約束の時間の十分前にはちゃんと着くことを意味するそうだ。十分早く着いてさえいれば、相手の人の事情と都合によっては、それだけ長く面談できる可能性もある。礼儀を欠く恐れもない。
 時間にルーズな人間を、私はあまり信用しない。誠実さが感じられないと思うからである。私の経験からいって、デートの時に遅れて来るような女性は見込み薄である。だから社員はもとより、身内の者にも時間だけは厳守するように、口を酸っぱくして言っている。時間通りに来た社員には賞与をやるが、遅れた人間にはやらないというくらいに徹底した。タイム・イズ・マネーを身をもって知らせた。
 また、私は人と会う際、必ず備忘録なるものを携帯した。聞きたいこと、知りたいこと、相談したいことを予め項目別に書き記しておくのである。それとともに、そこでどんなことを話し、そのために何をなすべきかを素早くメモに書き留めた。というのも、決められた時間内に話を要領よく切り上げることが礼儀であり、ひいては第一印象を良くすることになると考えたからである。分刻みのスケジュールで動いているような人に対しては、ケジメをつけることが付き合いの第一歩だと思う。 (pp.234-235)

 約束の時間を守る、というのはとても大切なことです。誰かと会う時は私は遅くとも10分前には着くようにしています。私は現役で勤めていた頃は、「提出物は期限内にきちんと出しなさい。」と、生徒たちにいつもうるさく言っていました。期限を過ぎてから出すなどもってのほか、と厳しく指導し、遅れた提出物は一切受け付けませんでした。残念ながらここら辺をルーズにする教員がいっぱいいます。陸上の幅飛びであれ、砲丸投げであれ、ちょっとでも足が出たら即失格でしょ。信用はまずこんな小さなところから積み重ねるものです。こういう小さなことを疎かにする人は、大きなことはできません。小さな約束を守る人は成功します。ある会社の代表取締役さんの言葉です。

 会社の信用も個人の信用も同じです。口約束をふくめてすべての約束は守ることから信用は生まれる。ですから、うちで中途採用の面接をするときには、だれが何時何分に到着したか、すべて記録させていますよ。約束の時間の10分前に来ていなければだめです。時間ピッタリでもだめです。ちょっとしたアクシデントでもあったら、それで遅れてしまいますからね。10分前に来ない人はそれだけでマイナス50点です。

 島根県立大田高等学校の進路部長を務めている時のことでした。ベネッセから中・四国の大学関係者の皆さんに、高等学校の現場では大学のどんなところを見て生徒に薦めているのか、大学の魅力をどこに感じるのか、などについて話して欲しいという依頼を受けました。会場は松江市ホテル一畑」です。当日は、時間に余裕を持って大田駅を少し早い特急「おき」に乗って、松江を目指しました。とってもいいお天気でポカポカ陽気でした。車内で当日の資料などに目を通しながら、窓際は陽当たりがとても良くいい気分でした。松江の少し手前の宍道あたりまでは記憶があるんですが、あまりの気持ちよさについウトウトとしてしてしまったみたいです。目が覚めたら、すでに列車が松江駅を出発したところでした。「止めて~!」大慌てですが、もうどうにもなりません。次の停車駅まで行って、タクシーで大急ぎで戻ってきました。幸い余裕を持って出発していたので、何とか開始の時間には間に合うことができました。無事に大役を務め、大学関係者には喜んでいただくことができました。この時に思ったことは、何が起こるか分からない、やはり何事も時間に余裕を持って行動しないといけない、ということでした。もしあの時にギリギリの時程で行動していたら、大切な仕事に大きな穴を空けるところでした。

 「飛行機を使えば余裕で間に合うのになんで前日に移動するんですか?」とよく聞かれます。確かに、出雲空港(JAL)米子空港(ANA)を使えば、約1時間とちょっとで羽田空港に着きますから、午後からの講演には余裕で間に合います。新幹線でも、JR松江駅を朝5時7分の特急「やくも」で出発すれば、11時15分には東京駅に到着することができます。午後からの講演には十分間に合います。でも私は大きな仕事の時には、必ず前日入りして備えているんです。教室では、受験生たちにも、入試では必ず余裕を持って現地入りしなさい、と伝えています。実は私もずっと昔は、間に合うときには当日の移動をしていた時期がありました。これには苦い思い出があります。

 2016年7月9日に、ラーンズ主催の講演会「英語は絶対に裏切らない! 生徒の英語運用力を磨く研究会」に出かけるために、名古屋駅前の「TKPガーデンシティ名古屋新幹線口バンケットホール」を目指しました。余裕を持って松江駅を朝の5時7分発の特急「やくも」で出発して、午前10時前には名古屋駅に到着する予定だったんです。講演は午後2時からですから、名古屋城でもゆっくり見学してから会場入りしようと目論んでいたんですね。すると、特急「やくも」が伯備線の新見駅を過ぎたあたりで、突然異変が始まりました。前日に大雨・強風だったせいで、地盤が緩み、木が倒れたりしていて、超ノロノロ運転が始まったんです。もうそれはゆっくりなんていうスピードではありません。私の自転車のほうがよほど速いくらいでした〔笑〕。予定の新幹線に間に合うどころではありません。岡山駅に着いたのは3時間遅れぐらいでした。新幹線も大混雑です。無事に乗れるかどうかも分かりません。駅員さんの案内で何とか「のぞみ」号に乗り込んだものの、しばらくは立ちっぱなしです。途中、新神戸駅を過ぎたあたりで車掌さんが座席を案内して下さって、何とか座って名古屋まで行くことができました。会場には何とかギリギリで間に合いました。後で聞いたところでは、あの直後、伯備線(出雲市~岡山)は全部不通になって電車は一切止まってしまったそうです。もしあの時1本遅いやくも号で出発していたら、名古屋での大切な仕事に大穴を空けるところでした。世の中、何が起こるか分かりません。この出来事以来です。私は大きな仕事の時には、必ず前日に入っておくことを心がけています。「時間に余裕を持って」というお話でした。♥♥♥

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