フジテレビの社屋

 東京・お台場において、全国的に最も有名なビルと言っても過言ではないのがフジテレビ本社ビルです。今は芸能人のスキャンダルで大騒ぎになっています。松江北高で担任した生徒がここに勤めているので、この騒ぎがとても心配です。

 格子状の構造体と、それと対照的な球体を組み合わせるという斬新な構成は、一度見たら忘れられない光景です。バブル期の残り香が漂うこのビルの設計は、東京都庁舎などと同じく、故・丹下健三(たんげけんぞう)さんによるものです。1996年の竣工から30年近くが経過しても、まったく旧さを感じさせることなく、変わりゆくお台場エリアを見つめています。フジテレビは、1996年に新宿区河田町から現在地へと移転してきました。当時のお台場周辺はまだ未開の大地といった雰囲気で、そこへ近未来感を漂わせるフジテレビ本社が突如として出現し、注目のスポットとなったのです。特に、斬新な設計思想を取り入れた球体展望台はテレビ局の社屋という枠を超えて大きな話題を呼びました。本社ビルの縦横の比率は、テレビ画面と同じ16対9のサイズです。正面向かって左側の「メディアタワー」と右側の「オフィスタワー」の2棟の間にある大きな球体は、一度見たら忘れられない写真映えする光景だといえるでしょう。荒涼とした風景が広がる台場は、フジテレビによって多くの若者を引き寄せる流行発信地の素地を築き上げていきました。東京の果てでもあった台場が流行発信地になった要因はいくつか考えられますが、丹下さんが生前最後に設計したフジテレビ本社ビルが熱狂を生み出すことに一役買ったことだけは間違いありません。私も「ゆりかもめ」に乗って訪問してきました。

 お台場のビル群の中でひときわ存在感を放っています。最大の個性である直径32mの球体は、「はちたま」と呼ばれる球体展望台となっています。鈍い輝きを放つ外装パネルはチタン製で、金属加工メーカーの菊川工業が施工を担当しました。湾岸地域でも腐食の心配がなく、軽くて丈夫なチタンが選ばれました。しかし、チタンは高価な建材で、加工も難しく、長い歴史を持つ菊川工業としても2例目というぐらいノウハウがなかったそうですが、当時としては先進的な3次元CADで制作し、苦心の末に3200枚の板厚0.8㎜のパネルを貼り付けました。表面はダル仕上げで、1,200トンもの球体は、7階の空中庭園で作業を行った後、鹿島建設によって半日以上かけて25階までジャッキアップされたといいます。

 内装に目を向けると、720枚のR付き格子天井パネルは、50㎜のハニカムを1.0㎜のアルミ材でサンドイッチしています。同ビルのどの場所でも放送が成立するよう、展望台ながら音を拡散させる構造になっているのです。その微妙な質感の違いで、より球体部分のシンボル性を強調しています。

 以前にフジテレビに就職した松江北高の卒業生にこの社屋を案内してもらったことがあります。エスカレーターとエレベータで、25階の球体展望室「はちたま」に連れて行ってもらいました。直径32mの展望室で、地上100mからの絶景(レインボーブリッジ越しの東京タワー東京スカイツリー富士山)を270度パノラマで楽しむことができます。あいにくこの日は朝から雨模様で、東京の景色が少しくすんでいました。

 メタリックで斬新なデザインの外観とは裏腹に、多くの人に開かれたフレンドリーな空間を目指したフジテレビ本社ビル、完成から29年もの歳月が経過した今も、未来的な佇まいでお台場のシンボルとなっています。♥♥♥

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