世間から見て「裏方」と思われている業務でも、実に奥深いものがあります。日々見直すべき点を見つけては改善を図り、その業務を一層高度なレベルに高めて世界的な名声を得ている企業があります。よく知られたところでは、新幹線の「奇跡の7分」と呼ばれるお掃除サービスもその例です(⇒コチラに私の解説が)。毎回新幹線を利用する度に、頭が下がる思いです。
もう一つの例が、関西国際空港(新関西空港株式会社)で、旅行者が飛行機に預ける荷物の取り扱い部門で、関西国際空港が2015年以降8度目の「世界一位」の評価を受けたのです。イギリスの航空サービス調査会社・スカイトラックス社の「手荷物サービス」の部門のランキングです。同社は1,300万件を超える旅行者アンケートを基に、世界112カ国・地域の約550空港を対象に、20部門のランキングを毎年公表しています。評価には、手荷物受け取りまでの待ち時間や効率、ロストバゲージの対応などが含まれます。国際空港は1日の航空機発着回数が多く、膨大な荷物の出し入れが必要となります。関空では繁忙期1日に預けられる手荷物は最大約3万個といいます。
新関西空港株式会社によると、関空での作業が原因となる荷物紛失(ロストバゲー
ジ)は、1994年の開港以来ずっと「ゼロ」を続けています。ロストバゲージの主な要因は次のようなものです。これら全てを徹底して排除しているのですね。
・経由地での荷物の積み忘れや積み間違い
・手荷物タグの発行ミス(カウンターで行き先と違うタグが発行されてしまう)
・手荷物タグの紛失(タグが手に持つから外れ搭載する航空会社や行き先が不明になる)
・出発地で荷物を違う便に載せる積み間違い
・ベルトコンベヤーからの落下
また、飛行機を降りた後に荷物を受け取るまでの時間の短さ、旅行者が取りやすいように持ち手をそろえてターンテーブルに置くなどのきめ細かいサービスも評価されています。テレビの報道番組でも紹介がありましたが、担当者の奮闘ぶりには、同じ日本人としてとても誇らしく感じます。飛行機が到着すると速やかに荷物を降ろし、「荷さばき場」に集められ、乗客が待つ受け渡し場の裏側で、社員が手作業でターンテーブルに載せるのですが、扱いが丁寧です。乱暴に投げたりすることはありません。それどころか、スーツケースの持ち手も乗客がピックアップしやすい向きに瞬時に揃えてベルトコンベヤーに載せているのです。長尺荷物やベビーカーは手渡しする、雨天時には雨で濡れてしまった荷物はタオルで拭き取りをする。こんな些細なことが、仕事をグレードアップさせているのです。「あっという間に荷物が出てきた」「ほかの空港では考えられない」「信じられない」「日本のおもてなしの文化が分かった」など、外国人旅行者は目を丸くして絶賛しています。飛行機が着陸してから20分以内に荷物がターンテーブル上を回っているのですから、その迅速さは驚くべきものです。そればかりではありません。荷物の行く先を示すシールを素早く読み取り、乗り換えの荷物はターンテーブルには乗せない。そして、乘客が乗り換え便にチェックインしたことを確認した後に、その便に直接荷物を運ぶのです。出発便の手荷物を扱うエリアでは、上の荷物の重みで下の荷物が変形しないように、重い物から順にコンテナに積み上げていきます。最も注意が必要なのが、ベルトコンベヤーからの荷物の落下です。関空ではセンサーで荷物の通過状況を監視するのに加え、社員が巡回して目視でも落下がないかをチェックします。この一手間で、格段に紛失リスクを減らせるそうです。こうした担当者のきめ細かい仕事によって、1994年の開港以来、ロストバゲージはゼロを更新し続けています。他の空港では、スーツケースが裏返しにされて出てくることも少なくありません。それに比べて関西国際空港担当者の手際のよさ、丁寧な仕事ぶりはまさに見事なのです。プロ中のプロの仕事ですが、多岐にわたる空港運営の仕事の中では、手荷物扱いの業務は裏方の仕事かもしれません。しかし、そうした作業に対して担当者が創意工夫を凝らし、素晴らしい完成度をもたらしているのです。これはクリェイティビティそのものですね。旅行者の絶賛ぶりが示すように、おもてなし=ホスピタリティ、「お客様の手荷物を大切に取り扱う」という意識が、関西国際空港の評価に大きく貢献することになったのです。「直接お客様と顔を合わせる仕事ではないですが、どのように扱えば喜んでもらえるか、いつも心がけています。」と職員。
仕事に「主」も「従」も、そして「雑」もありません。そもそも「雑用」という言葉は間違っていると私は思っています。仕事のプロセスにおいて「雑」なる仕事など存在はしません。関空の快挙を知り、「裏方の彼らこそ、花形である」と感じます。目に見えない丁寧な仕事ぶりが、世界から称賛されています。♥♥♥
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