「D&S列車」

 JR九州では、観光列車「D&S列車」(デザイン&ストーリー列車)と呼んでいます。「D」は特別な「デザイン(Design)」を、「S」は沿線地域に伝わる歴史や伝説などの「ストーリー(Story)」を指し、「デザインと物語のある列車」という意味を込めています。JR九州の人気観光列車に共通するのが、この「物語」です。それぞれの列車にそれぞれの物語が備わっています。テーマパークのように地域に個性があり、旅することが楽しくなる九州。沿線の風土や車窓の風景を思いきり楽しんでもらうために、JR九州の列車は、個性溢れる洗練されたルックスやインテリアはもちろんのこと、地元とコラボしたユニークな仕掛けが満載です。移動手段として便利なだけではなく、乗ることそのものが、忘れられないイベントになる「D&S列車」の旅。たくさんのワクワク感と物語を乗せて九州各地を駆け抜けています。JR九州では2013年(平成25年)から、観光列車のことをこの名称で呼んでいます。観光客を呼び込むため、地域活性化のために、「D&S列車」は移動手段としてだけでなく、乗ること自体が楽しみや目的となっており、列車そのものが観光資源となっています。沿線地域の観光資源として活躍を始めているのです。

▲私の一番好きな「ゆふいんの森一世」

 そんな「D&S列車」の第一号、特急「ゆふいんの森」は、国鉄が分割民営化されて間もない1989年(平成元年)3月に運行が開始されました。現在は博多駅〜由布院駅間を2往復(日によって異なる)が運行されています。JR九州が生まれ、専用車両を用意して走らせた最初の観光特急でもあり、「D&S列車」の元祖と言ってもいいでしょう。この「ゆふいんの森」の大成功が、その後、九州各地を走る多くの「D&S列車」を生み出すきっかけとなりました。私も初めてこの観光列車に乗って由布院へ行った時のことは強烈な思い出として残っています。これらの個性豊かな列車はすべてドーンデザイン研究所水戸岡鋭治(みとおかえいじ)先生がデザイン・設計しておられます(最新の「かんぱち・いちろく」のデザインだけは鹿児島に本社を置く株式会社 ・IFOOが担当しています)。「D&S列車」はそのほとんどが、従来から使用されていた車両をリニューアルした車両で運行されており、中には普通列車用の車両を改造し、観光特急と称して運行している列車もあります。下がその「D&S列車」の一覧です。

観光列車名 運転開始時期
ゆふいんの森 1989年3月11日  ★私の一番好きな観光列車
九州横断特急 2004年3月13日
海幸山幸 2009年10月10日
指宿のたまて箱 2011年3月13日)
あそーぼーい 2011年6月4日
A列車で行こう 2011年10月8日
或る列車 2015年8月8日
かわせみやませみ 2017年3月4日
36プラス3 2020年10月16日
ふたつ星 2022年9月23日
かんぱち・いちろく 2024年4月26日

 水戸岡先生のデザインには、彼ならではの独特の「哲学」が存在しています。当時の唐池恒二(からいけこうじ)社長がこんなことを言っておられます。♥♥♥

 水戸岡さんのデザインは、はじめて見たときとても感動する。しかし、はじめて見たとき感動するのは、どのデザインにも共通することだ。デザイナーが手がけたものであれば、彼らはプロだから、それは当然といえる。水戸岡さんのデザインが他と違うのは、何度見てもそのたびに新鮮な感動を覚えることだ、斬新だと思えたデザインでも、何度か見ていると次第に感動が小さくなっていき、やがては飽きてしまう。しかし、水戸岡さんのつくった通勤電車の車両は、毎日同じ駅の同じホームから眺めてもまったく飽きることがない。

 水戸岡さんは、デザインの構想を練るときコンセプトを最も大切にする。そのコンセプトは、どこからくるのか。列車のネーミングだ。水戸岡さんは、列車名をコンセプトにして内外装のイメージを固める。ネーミングは、私の専権事項だ。水戸岡さんは、私が列車名を考えつくまでデザインに着手しない。列車名が固まると、水戸岡さんはあっという間にデザインの“あらすじ”をまとめる。その“あらすじ”が、列車一本一本がこれから身に付けていく物語の始まりとなる。(『鉄客商売 JR九州大躍進の極意』(PHP出版、2016年))

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