権藤さんの解説は違う!

 5月30日(金)のプロ野球巨人―中日戦のフジテレビ2の解説は、権藤 博(ごんどうひろし、86歳)さんでした。この解説が実に面白かった。当日のネット上では「わけのわからない解説」と炎上していましたが、他の解説者とはレベルが違います。巨人打線が手も足も出ないくらい好投していた大野雄大投手井上監督がスパッと代えた際に、「自分なら代えない。巨人打線が全然合っていないのだから。見ていてご覧なさい。流れが変わりますよ」との予言通り、巨人打線に火が付き逆転勝利でした。「なんで代えるんだ、という顔をしていますよ、大野は」と、ピッチャー出身監督らしく大野投手の心理を代弁していました。解説の中で、1球1球ピッチャーの投げる球を予測するんですが、これが面白いようにドンピシャリと当たる。さすがです。通り一遍の解説者が多い中、ひと味もふた味も違う面白い解説でした。

 権藤さんと言えば、来る日も、来る日もマウンドに立ち続け、権藤、権藤、雨、権藤…』と言われ、流行語にもなりましたね。1961年、中日の新人投手だった権藤さんはひたすら投げまくり、35勝を挙げ最多勝、新人王、沢村賞、ベストナインなど賞を総なめにしました。翌年も30勝をマークしますが、登板過多は確実に彼の肩を疲弊させました。実働5年で終わっています。権藤さんを最後に、年間35勝以上の投手は出ていません。当時を振り返り「時代も違うんですよ。我々が投げてる時は、監督はみんな戦争帰りの人ばっかりなんですよ。弾をかいくぐって、帰ってきた人ばかりですから、投げて、次の日に『ちょっと、肘が痛い』と言ったら、『何? 肘が痛い? たるんどる。命までは取られはせん』のひと言ですからね」と回想しました。権藤さんは「そりゃ、弾をかいくぐって、帰ってきた人たちからしたら、肘が痛いとか、肩が痛いっていうのはたるんどるのひと言ですよね。だけど、そういうことは通用しないんですよ、今はね」と話しました。5月6日には、徳光和夫さんの「プロ野球レジェン堂」にゲスト出演し、当時を懐かしく回想しておられました。

 権藤さんが口を酸っぱくして言われるには、野球中継の最後の「ヒーローインタビュー」が面白くない。「みんながチャンスを作ってくれたので返そうと思った」「打者が点をとってくれたので、抑えようと思った」そんなこと改めて聞かなくても分かる当たり前のことですね。「ファンのみなさんの声援のおかげで打てました」声援で打てるくらいなら、簡単なことでしょう(もちろんファンの声援に感謝することは重要ですが)。そしてインタビューの最後はいつも判で押したように「応援よろしくお願いします」です。全く面白くない。「企業秘密まで話してくれとは言わないが、もっと技術に触れて欲しい」権藤さんはおっしゃいます。チラッとでいいから技術を語ることで、やっぱりプロはすごいやと勝負の迫力を伝えて欲しいと。昔はすぐウソと分かる話をする選手もいて、それはそれで味があって面白かったと言います。誰もが口にすることのない権藤さんの鋭い指摘に感心したところです。確かに、権藤さんのテレビ解説は滅法面白い。「見ててご覧なさい。こうなりますから…」と予言すると、本当にそうなるので、流石ということになります。言われることが実にユニークです。野球解説者で面白いなあと感じさせてくれたのは、他に落合博満(おちあいひろみつ)さんと野村克也(のむらかつや)さんぐらいでしょうか。要は、野球をよく勉強しているから、自分なりの理論を持ち、人とは違った視点での野球の捉え方ができるんですね。当たり前のことをしゃべっている「解説者」が実に多いのですが、、それは解説とは呼びません。野村さんが解説者時代にどれだけ苦労して勉強されたかは、数々の著書から感じ取ることができます。「プロのすごみ」をきちんと伝えることのできる解説が聞きたいな~。♥♥♥

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