『鉄道ジャーナル』休刊!

 毎月いつも20日過ぎに松江市の書店に並ぶ三大鉄道雑誌(『鉄道ジャーナル』『鉄道ピクトリアル』『鉄道ファン』)の表紙や特集内容を見て、気に入った号を買っていました。ところが、先月はいつ行っても、私が一番買っている『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)が並んでいません。他の2種類はあるのにオカシイな?と不思議に思っていたところでした。今日「産経新聞」を読んでいて初めて休刊になったことを知りました。迂闊だった!1967年(昭和46年)の創刊以来、58年にもわたって刊行され続けてきた老舗の鉄道総合雑誌『鉄道ジャーナル』が、2025年6月号をもって休刊したとのことです。紙が強いと考えられていた趣味系の雑誌、しかも趣味の中でも熱狂的なファンが多い鉄道というジャンルの雑誌の休刊は、出版業界全体に大きな衝撃を与えています。2024年12月発売の2月号で通巻700号も迎えた老舗雑誌です。誌面では、近年または今後の鉄道業界の動向・展望、ローカル(地域)鉄道に関する現状やこれまでの歴史などを掲載し、鉄道趣味にとどまらない特集等を広く紹介してきました。三大鉄道月刊誌と称されてもきた、由緒ある鉄道趣味雑誌の雄が休刊になることに、大いなる寂しさを感じているのは私だけではないでしょう。鉄道マニア向けというよりも、社会の中での鉄道の存在を考える視点を含んでいた最も由緒正しい鉄道雑誌だと目されていた『鉄道ジャーナル』の休刊は、鉄道マニアのみならず、鉄道と社会について考察する方々に、少なからず衝撃を与えているのではないでしょうか。インターネットの急速な普及などの影響による出版界全体の厳しい状況などが、休刊の原因なのかもしれませんが、できることなら、早期の復刊を期待したいところです(でも一度休刊したらまず復刊は無理というのがこの世界の常識です)。

 休刊に関して、発行元の鉄道ジャーナル社は、「長年にわたり支えてくださったみなさま、ご寄稿いただいた執筆者のみなさま、制作にご協力いただいた関係の方々に御礼申し上げるとともに、今後もご購読を予定されていた読者のみなさまには心よりお詫び申し上げます。」とコメントしています。なお、休刊に伴うWEB版への移行の用意はないとしています。『鉄道ジャーナル』宮原正和編集長は、「雑誌の休刊というと、売れ行き不振を理由に挙げることが多いですが、鉄道ジャーナルに関してはそういったことではなく、端的に説明することは難しいと感じています」「近年の鉄道ジャーナルは、ほかの媒体ではなかなか扱わないようなテーマや、ほかでは読めないような記事を載せていきたいと考えてきたのですが、伝統的な鉄道記事を愛する読者が想像以上に多かったということかもしれません」と、売れ行き不振が理由であることは否定しました。社内の複雑な事情を推測させるような言葉です。

 近年の雑誌業界を取り巻く環境は、電子媒体の普及と併せ、読者層の変化、出版コストの増加など、逆風となる数々の厳しい要因を抱えています。その一方で、鉄道ファンの衰退を指摘する声もあります。2010年の「日本経済新聞」に掲載された野村総合研究所の研究員のコメントによれば、鉄道ファンの数は150万~200万人ほどと言われていました。これはライトなファンを含めた数字であり、中心となるヘビーな鉄道マニアは約2万人と言われています。それから15年が経った2025年、当時よりファンが減っているのは間違いなさそうです。というのも、全国の鉄道がじわじわと利用しにくい存在となっているためです。廃線となったり、便数の減少が目立つローカル線や、これまで熱狂的なファンが多かった「青春18きっぷ」は、システムが変更されたことによって、使いにくい切符になってしまいました。ローカル線を旅したり、乗りつぶしをするなどの“乗り鉄”がやりにくくなってしまったようです。JR北海道では、資金難のため、高速運転を目指していたキハ285系気動車の開発が中止されました。そしてコロナ禍では各鉄道会社が経営難によって、合理化がより一層進んでいます。鉄道ファンにとっては寂しい話題が相次いでいる一方、「寝台特急サンライズ出雲・瀬戸」のチケットはプラチナ・チケットとなっていますし、また、富裕層やインバウンド観光客を狙った豪華仕様の観光列車などは依然として大人気です。しかし、誰でも気軽に利用できる列車が本数を減らしているのは事実です。また鉄道ファンの在り方も様変わりしています。鉄道旅の魅力を動画で発信するユーチューバーが人気を博しており、情報入手先も、雑誌からネットに移りつつあります。臨時列車の運行情報などは、真っ先にネット上で共有されており、速報性という点では紙媒体ではとうてい太刀打ちできないでしょう。鉄道雑誌はかつてはファンの写真投稿の場としても機能していましたが、それもメインはSNSに移行してしまいました。

 鉄道業界は近年、人気路線の減少や運行の効率化が進み、鉄道ファンの数も減少しています。特に新幹線の普及や高速道路の整備により、以前ほど鉄道に対する関心が高くなくなったことも影響しているのかもしれません。『鉄道ジャーナル』のような専門的な雑誌が人気となる時代背景としては、鉄道の技術革新や大規模プロジェクトに関心が集まっていた時期と重なっていますが、今ではその関心も薄れている現実が間違いなくあります。また、インターネットの普及によって、鉄道に関する情報はオンラインで容易に得られるようになり、YouTubeやSNSを使って鉄道に関する動画や情報を視聴することができるため、紙媒体に対する需要はどんどん低下しているのです。紙媒体全体の衰退は、特に近年のデジタル化による影響が大です。スマートフォンやタブレット端末を通じて、誰でも即座に情報を入手できる時代となり、紙媒体に対する依存度が低くなりました。さらに、環境意識の高まりやコスト削減の観点から、広告主や出版社もデジタル化を進める動きが加速しています(鉄道だけでなく一般誌も同様です)。デジタル版やウェブサイトを運営している場合も多く、紙媒体の販売は難しい状況に直面しています。紙の雑誌は、持ち運びに不便であり、時事性が強く求められることもあり、即時性という利点を持つデジタルメディアには負けてしまうことが多いのです。

 『鉄道ジャーナル』の休刊は、鉄道業界の縮小と紙媒体全体の衰退の二つが重なった結果だと考えられます。鉄道ファンの減少や業界の変化が、雑誌の購読層を狭め、紙の雑誌の売上減少を招きました。また、デジタルメディアの台頭により、紙媒体にとって競争はますます厳しくなっています。それに加えて、広告収入の減少も休刊の原因の一つでしょう。広告主がデジタルメディアへ移行し、紙媒体に対する投資が減少したために、収益面でも厳しい状況が続いているのです。デジタルメディアの台頭と鉄道業界の縮小により、今後も紙媒体は減少していくものと予想されます。しかし、鉄道メディアの未来は、今後のデジタルメディアの活用にかかっており、新たな形での鉄道情報の発信が求められる時代になっています。

 私が大好きでよくお邪魔する「京都鉄道博物館」本館3Fギャラリーでは、2025年8月3日(日)まで、写真展「『鉄道ジャーナル』一番すきな表紙を選ぼう」 を開催しています。この展示会では、4月に発売された6月号をもって休刊となった『鉄道ジャーナル』の表紙、全704号分をタペストリーで壁一面に展示しています。♥♥♥

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