YC-1型系気動車

 多くの鉄道ファンには、新幹線観光列車特急列車が堪らない魅力を持っています。それはもちろんその通りなんですが、私の考えでは、日々の通勤や通学を支える普通・快速列車にも、それに劣らない魅力が隠されています。さながら実家のような安心感と最先端の技術を兼ね備える不思議な存在、それが普通・快速列車なのです。ハウステンボスを訪れた時、JR九州初の蓄電池搭載型ディーゼルエレクトリック車両(ハイブリッド車両)である「YC1系」(川崎重工業製)に乗ってきました。JR九州らしい斬新なデザインに目が行ってしまいがちですが、その乗客サービス、環境への配慮や画期的な動力システムは知れば知るほど興味深い車両です。

JR九州 YC1系

▲黒色の前󠄂面がカッコいい ピカピカとLEDが点灯

 ハウステンボス駅のホームにこの列車が入線してきました。目をやると、車体前面の「顔」がピカピカと光っていて驚きました。入線してきたのはYC1系。車体前面を縁取るLED装飾灯が眩しい、2020年に導入されたばかりの新型車両です。キハ2000系やキハ66・67系に代えて投入されました。大村線を中心に運用され、長崎地区の主力車両となっています。2両編成で定員232名(座席定員76名)です。斬新なエクステリアに目を引かれるYC1系、いったいどんな特徴を持つ車両なのでしょうか?電車? 気動車? いいえ、答えは「ハイブリッド車両」です。

 鉄道デザイナー・水戸岡鋭冶(みとおかえいじ)先生の手によって生み出された豪華絢爛なデザインが特徴です。ステンレス地色の銀を基調とし、前面は黒に、扉はメタリックオレンジに塗装された洒脱な外観もさることながら、何より目を引くのが車体前面を縁取るLED式装飾灯。先頭車両は白色に、後尾車は赤色に点灯します。日が暮れてから運転する姿は、まるで「走るイルミネーション」のようです。

 YC1系は非電化区間を運転する、ハイブリッド車両(蓄電池搭載型ディーゼルエレクトリック車両)です。その複雑な車両分類のとおり、YC1系はこれまで非電化区間を走っていた従来型の気動車とはまるで別ものです。ディーゼルエンジンで発電した電力と、ブレーキ時に発生するエネルギーによって充電される蓄電池の電力を組み合わせて走行します。電車のシステムに近づけることで気動車特有の故障要因を排除することを目論んでいます。いわば「非電化区間を走る電車」のような画期的なシステムで、そのメリットは数多く挙げられますが、おおよそ2つのキーワードで説明することができます。

●その名称「YC」の由来は、「やさしくて」「ちからもち」

JR九州 YC1系         ▲“YASASHIKUTE CHIKARAMOCHI”と印字された車体

 その系統名「YC1系」の由来は意外にも日本語に由来します。さしくて(Y)持ち(C)」のローマ字綴りの頭文字を取って名付けられました。それでは、一体どんな所が「やさしくて」、どんな風に「力持ち」なのか、それぞれ具体的に見ていきましょう。

キーワード①「やさしい」――乗客サービスの向上、環境負荷の低減

▲ボックス席も備えた車内

 YC1系ではまず、乗客に対する「やさしさ」が一貫されています。まず注目したいのは出入り口。車体前面と同様の装飾灯(LED)が足元を照らしていたり、車両とホームの段差が低減され、出入り口の段差をなくしてバリアフリーの充実を図っており、スムーズな乗降が可能です。足元を照らす照明も設置されています。さまざまなタイプの乗客が安全に乗降できるような設計になっています。また、案内表示器は4つの言語に対応。日本語を読むのが難しい旅行客などにも有り難いサービスです。フローリングにダウンライトタイプのLED照明で照らされた車内には、ロングシートを中心にボックス席(テーブルもあり)も設置。JR九州の車両らしく、床面や荷棚、座席のテーブルといたるところに木材が使われた内装は、どこか温かみのある印象を与えます。水戸岡先生らしいおしゃれな柄で彩られた座席のモケットも、普通列車とは思えないやわらかな空間を創出しています。ちなみに、従来車両に比べて一人あたりの腰掛座面幅が拡大されているのもポイントです。そして従来型の気動車から動力システムを一新したことによる、環境への「やさしさ」もこの車両の大きな特徴です。動力をディーゼルエンジンによる発電式モーターに置き換えたことや、ブレーキ時のエネルギーを蓄電する仕組みを導入することにより、置き換えられたキハ66・67系と比べて、約20%もの燃料消費量を削減し、CO2の排出量や騒音を抑制することに成功しました。扉脇にはスマートドア(半自動ドア)のボタンが付いています。

キーワード②「力持ち」――安全・安定輸送の追及

 「力持ち」とはすなわち、その動力の効率的な運用やリスクヘッジによって安全・安定輸送を追及すること。先に見た蓄電池のアシストによる走行性能の効率化もその一つです。そのほか、台車ごとにブレーキ制御を備えて冗長化を実現したり、電車部品を活用して電車のシステムに近づけることで、気動車特有の故障要因を排除したり、車両・地上設備の状態を把握する状態監視を実施したりと、一見してわかりづらいところにも安定的に乗客を運ぶための工夫がなされています。乗客や環境への配慮を欠かさず、鉄道車両として確実に仕事を遂行するその姿は、まさに「やさしくて力持ち」の鉄道車両というコンセプトがぴったりです。同じJRでも山陰線を走っているキハ40キハ47などとはほど遠い魅力を持った通勤快速列車でした。♥♥♥

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