ドジャース?

 ワールドシリーズはドジャースの劇的な2連覇で幕を閉じました。それにしてもMVP・山本由伸(やまもとよしのぶ)投手の活躍はすごかったですね。彼は「野球少年に戻ったような」と語りました。4勝のうちの3勝を一人で勝ち抜きました。オリックス時代は日本一のエース投手だったわけですから、当然の活躍と言えるかと思います。感動的だったのは、第3戦。両軍とも譲らぬ熱戦は延長18回にも及び、ブルペンには19回の登板に備えて肩を作る山本投手の姿がありました。第2戦で完投していた山本投手はベンチで「僕が投げます。ワールドシリーズで野手に登板さえるようなことはしない」と、ロバーツ監督に直訴してブルペンに向かったのでした。全員でつかみ取った勝利でした。また、中0日で第7戦に救援登板した山本投手は、あまりにも腕が疲れていたために、優勝セレモニーではトロフィーを持ち上げることができず、同僚のキケ・ヘルナンデス選手に支えてもらっているシーンは感動的でしたね。英語はあまり上手とは言えませんが、“You know what?  Losing isn’t an option. Thank you my teammates, my coaches, our amazing staff and all the fans. We did it together! I love the Dodgers, I love Los Angeles! ありがとう!”(負けるという選択肢はない→何としてでも負けるわけにはいかない)という名言をセレモニーで発しました。ロバーツ監督「翔平と同じで、何か人間を超えたものがある。練習の時も常に完璧を目指してるんだ。ヤマモトは素晴らしい人物で、チームのためにやってくれた」とコメントしました。スネル捕手「ブルペンでもそうだよ。フォームも表情も全く崩れない。“壊れないマシン”ってみんなで呼んでる」とエピソードを明かしました。

 ドジャース(Dodgers)は英単語の“dodge”が由来となっており、日本語では「よける、かわす」という意味です。子どもの頃みんな遊んだことがある「ドッジボール」“Dodgeball”と書きますが同じ単語ですね。それに「するもの、する人」という意味を表す接尾辞“er”を付けて“Dodgers”(よける人たち)という意味です。複数形なので“s”が最後にきています。これが基本的な意味になりますが、では一体何を「よける人たち」なのでしょうか?

 何をよける人たちなのかは、チームの歴史を少し紐解く必要があります。ロサンゼルス・ドジャースというチーム名は1958年から使用されているもので、それ以前はニューヨークブルックリンに本拠地を置いているチームが前身で、その歴史は1884年まで遡ることになります。その頃の市内交通と言えば「馬車鉄道(horsecar)」が主なもので、金属のレール上で大きな客車を引っ張る馬の姿が多くみられました。速度は比較的ゆっくりとしたものでスピード感は歩行者とあまり変わらなかったとか。しかし1892年に電気で動く「路面電車」(trolley)が市内交通に導入されると、それから3年が経つ1895年には路面電車と歩行者の事故が増加しました。その頃のブルックリンにおける死者は130人あまり、負傷者は500人にも上ったと言われています。

1895年ごろ ブルックリンの路面電車

 これがきっかけで「ブルックリンの人たち=路面電車をよける人たち(trolley dodgers)」というパブリック・イメージがその頃から形成されていき、広まることになりました。1895年のシーズンの始め頃には徐々にスポーツ記者たちが“trolley dodgers”という名称でチーム名を表すようになっていき、そして1898年初頭には本拠地のブルックリン(Brooklyn)と合わせ、さらにtrolleyを省いて短縮させて「Brooklyn Dodgers」という名称が広く認知されるように変化したのです。ユニフォームにDodgersという文字がプリントされるようになったのは1933年から。そして1958年から本拠地をロサンゼルスに移し、現在のロサンゼルス・ドジャース(Los Angles Dodgers)が誕生したというわけですね。

 さてもう一つ、発音ですが、日本語では「ドジャース」と表記しますが、英語ではdodgers「ダジャーズ」と濁ります。Yankees「ヤンキーズ」です。英語では複数形の「s」は基本的に「ズ」と発音されます。それなのに、なぜ日本では「ドジャース」「ヤンキース」と「ス」で表記するのでしょうか。実はこれ、日本の慣習による表記なのです。日本のメディア、特に読売新聞やNHK、共同通信などでは、1950年代から1960年代にかけて「ス」表記が定着しました。当時は英語の発音よりも、日本語として読みやすく、書きやすい表記が優先されたのです。そのため「ドジャース」「ヤンキース」という表記が長く使われており、現在でも報道では統一表記として採用されています。一方、「マリナーズ」「ブリュワーズ」が「ズ」で定着したのは、これらの球団が日本で知られるようになった時期が比較的新しく、より発音に忠実な表記が好まれるようになっていたからだと考えられます。♥♥♥

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