identically(全く同じに)という副詞を英和辞典で引くと、「しばしばthe sameやalikeを強調する」(『ライトハウス英和辞典』)という注記が出ています(追い込みにして「同一で、寸分たがわず」(『ジーニアス英和』)と訳語だけ、あるいは訳語も示さないという雑な辞典も少なくありません。「副詞は付け足し」「副詞の軽視」という辞典界の風潮の証ですね)。それはそれで正しいのですが、もう少し突っ込んで調べてみると面白い問題が浮かび上がってきます。私たちの編集顧問のロバート・イルソン博士は、イギリス英語ではexactlyにしておいたほうが無難だ、とおっしゃいます。自分としてはどちらかと言えば、exactlyの意味でのidenticallyは非文に(×)したい気がする、との観察を示されました。これは当時私には意外な見解でした。
今度はアメリカ英語の立場から、故・ボリンジャー博士は、identically the sameはOKだけれど、自分としては人間に使う傾向があるようだ、と述べられました。
He is identically the same man that we saw before.(彼は以前私たちが会った男と、寸分違わぬまさにその同一人物だ)

▲故・ボリンジャー博士


