rabbit test?

 実に有り難い時代です。AIを調べればどんなことでも分かる(あるいはヒントがもらえる)便利な時代になってきました(ただし誤情報には注意が必要)。最近もニュース番組(CNN)に出ていた“firefighter’s approach”(消防士のアプローチ?)という表現がチンプンカンプンで分からないでいましたが、これもChatGPTで氷解しました。これについては、また改めて詳しく書きたいと思います。

 教員になって故・エド・マクベイン(Ed McBain) の推理小説を読みふけっていた頃、次のような文章に出くわしました。この中に出てくるラビット・テスト」(rabbit test)が何のことなのかがよく分かりませんでした。今ならネットで調べるという手段がありますが、当時は、いくら調べても妊娠ウサギの関係が分からなかったんです。途方に暮れて、頭の隅っこに残しておきました。

    He said I’d have to see a doctor, take the rabbit test, make sure I was really pregnant, and then we’d see what we had to do.   ―Ed McBain, Blood Relatives(1975)(彼は、医者に診てもらい、「ラビット検査」を受けて、本当に妊娠していることを確認して、それからどうするか考えようと言った。)

 長年疑問に思っていたところ、ふとしたことで、「フリードマン法」(Friedman test)のことを書いた文献を見つけたんです。これは1931年にフリードマンラプハム(Friedman & Lapham)によって報告された、動物を用いた妊娠検査法の一つです。昭和30年頃はこの検査方法を内診と併用して、妊娠を判定していたらしいのです。メスのウサギの耳の静脈に、女性の尿を注射して、24~48時間後にウサギの腹を開くのです。それで、卵巣に排卵が起きていれば妊娠と診断します。当時は、新米の医師にとってはウサギが初の手術になることが多かったそうです。ウサギが一番手に入れやすかったので、昭和40年代までこの方法が使われていた、とお医者さんに聞きました。

 このように、その場では分からなくても、疑問をあたためておくと、ふとしたことから解決した、という経験を今までにたくさんしてきました。大切なことは、分からないことを分からないままに放置しない、ということですね。生徒たちにも口を酸っぱくして言い続けているところです。

 今ならAI(例えばChatGPT)などで、rabbit test”(ラビットテスト)を検索すれば、1920年代~1940年代頃に使われていた妊娠判定のための古い動物実験的妊娠検査法であることがすぐに分かります。現在では使われていませんが、医学史の中では有名な検査法です。 rabbit test の内容としては

  • 妊娠している女性の尿を雌ウサギに注射し →

  • 数日後にウサギの卵巣を切開して変化(排卵、卵胞出血、黄体形成)を確認することで、妊娠しているかどうかを判定する方法でした。

 ただし、動物を犠牲にする必要があり、手技が煩雑という問題がありました。女性が妊娠している場合、尿中に含まれるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンがウサギの卵巣を刺激するため、卵巣が特有の変化を起こします。歴史的には「妊娠しているとウサギが死んでしまう」と誤解されたことがありましたが、実際には妊娠していてもしていなくても、検査のためにウサギは解剖されていたため、必ず殺される検査でした。1960年代以降、免疫検査によって尿中の hCG を直接その場で判定できる妊娠検査薬(試薬)が開発され、rabbit test は完全に姿を消しました。今ではpregnancy testが普通です。私があれだけ長い間苦労して調べ上げたことを、こうやってAIで何でも調べることのできる有り難い時代ですね。

The rabbit test was an early biological pregnancy test used in the 1930s.(ラビットテストは1930年代に使われていた初期の生物学的妊娠検査法である。)

Back then, before modern kits, they relied on the rabbit test. (当時は現代の検査キットがなく、ラビットテストに頼っていた。)

 ここから生まれた有名な英語表現があります。“The rabbit died.”(妊娠している)です。本当は常にウサギは死ぬのですが、一般の人々に「ウサギが死んだ(The rabbit died)⇒妊娠している(She is pregnant)」と誤解され、定着していきました。「ウサギが死んだ」という言い回しが、妊娠が確認されたことを間接的に示す表現として広まったのです。現在では、やや古風・ユーモラス・歴史的・比喩的な言い方です。現代の普通の会話で使われることはありません。知らない人にはチンプンカンプンのこともあります。♥♥♥

She took the test, and well…the rabbit died.(検査を受けてね…つまり妊娠してたの)

In old movies, “the rabbit died” often meant the woman was pregnant.(古い映画では「ウサギが死んだ」は妊娠を意味することが多かった。)

I took the test this morning. The rabbit died.(今朝検査したの。妊娠してた。)

She took a pregnancy test and when she saw the positive result, she exclaimed, “The rabbit died! (彼女は妊娠検査を受けて、結果が陽性と分かった時に、「赤ちゃんができた!」と叫んだ。)

He anxiously waited for the doctor to tell him the test results, hoping to hear that the rabbit died. (彼は「妊娠した」と聞くのを期待しながら、医者が検査結果を告げるのを心配そうに待っていた。)

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