階数の数え方

 下は2022年の「大学入学共通テスト リーディング本試験の第2問Aです。

 「大学入学共通テスト」ではイギリス英語からの出題が数多く見られます(綴り字、語彙、日付の書き方など)。上の問題は、図書館の施設の案内文で、階数を数える際のイギリス英語が出題されました。私は『ライトハウス英和辞典』「大学入学共通テスト」にどれほど役に立つのかを解説したパンフレットの中で、「圧倒的な「語彙力」を目指して」と題して、「文化面の英米差」として、建物の階数の呼び方の英米差を取り上げました(下記パンフレット参照)。そのことが英文の中で出題されたのです(写真上)。階数の数え方はイギリスとアメリカでは違います。アメリカ英語では1階のことを「first floor」と表しますが、イギリス英語では1階は「ground floor」と呼びます。そしてイギリス英語は2階から1ずつ数えていくので本来の階数より1少なくなるのです。ただし、地下の階数の呼び方は米英共通です。地下のことも序数を使って「〜(序数)basement」で表現します。なので地上階に関しては、アメリカとイギリスでは下記のように階数の呼び方が変わってくるので注意が必要です。問2では入り口(first floor)からオリエンテーション会場(third floor)へ行くには、③「2階上に上がる必要がある」が正解になるのですが、1階から3階ではなく、2階から4階に上がるんです。この英米差を知らなくても(全国でほとんどの生徒が知らなかったと思います)、偶然正解になるにはなる(3-1=2)のですが、やはりちゃんと押さえておきたいですね。

▲私の記事 見事的中!!

 

▲『ライトハウス英和辞典』(第7版)s.v. floor

 思い起こしてみるに、やはりパンフレットの中で私が注意喚起をしたalmost(訳語「ほとんど」では誤解が起こりやすい)がリスニング試験に出題され(⇒コチラです)、次年度は建物の階数の呼び方の英米差が出題されました。このパンフレットから2年連続で的中したことになります。

 イギリスの集合住宅に住む人のお宅を、住所を頼りに訪ねようとする時や、ホテルの部屋に入る際には、間違えないように気をつけなければならないポイントがあります。それは、階数表示。アメリカ英語を学んできた日本人にしてみれば、“first floor”は「1階」、“second floor”は「2階」です。ところが、イギリスの“first floor”日本でいう「2階」にあたり、“second floor”は「3階」になるのですから、混乱するのも無理はありません。さてここで、なぜ階の数え方がこのようになったのでしょうか?なぜ2階ではなく、3階になるのでしょうか?

 その背景には、イギリスの家屋の古い様式があります。古い様式の家屋では、1階の3分の1ほどが半地下になっていて、“ground floor” と呼ばれていました。そのため、2階から“first floor” と数え始めることになり、3階が“second floor” というようにマイナス1ずつ、ずれているのです。地面と同じ高さにある階をground floor、その一つ上の階をfirst floorという数え方をするのですね。firstという言葉を、地面から上に向かって最初に現れる階という意味で使っているわけです。昔の建物では、地面の階は倉庫・使用人・店舗用などで、湿気・寒さ・騒音が多く、馬車が出入りしたり、使用人が働いたりする場所でした。その上の階が陽当たりが良く静かで主人や貴族が住む居住空間で格式が高い、という構造が一般的でした。一番大事な階をfirst floor、地上階は特別扱いでground floorという呼び方が定着したのです。そのために本格的な「生活空間が始まる最初の階」をfirst floorと呼ぶようになったわけです。イギリス資本のホテルのエレベーターに[G]という表示がありますが、これはground floorの「G」のことです。歴史的な建築様式・生活様式・言葉の感覚が重なって生まれました。アメリカでは、植民地時代に建物が大量に建設され、商業・実用性が優先され、移民が多いために分かりやすさが重要でした。その結果、地面と同じ階を1と数える方が合理的でした。建物全体を一つの積層構造として捉え、そこにある階の数をそのまま数えます。開拓精神旺盛なアメリカでは、よりシンプルで直感的な「1,2,3…」という数え方が定着しました。その意味でイギリス式は「伝統」、アメリカ式は「実用性」重視と言うことができるでしょう。♥♥♥

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