マジック番組はなぜ消えた?

 私がまだ若い頃は、毎月のように地上波で私の大好きなマジック番組の特番が放送されていました。私は、マジック番組には、かつて3つの黄金期があったと感じています。最初は約50年前の初代・引田天功(ひきたてんこう)による大脱出・爆破シリーズ。そして、次に1980年代にはテレビにMr.マリックが登場し、「きてます!」の決めゼリフとハンドパワー超魔術の社会現象を巻き起こし、世帯視聴率で約28%を記録する国民的スターとなりました。その後、2000年代にはセロ前田知洋(まえだともひろ)などが登場して、再びマジックブームが再燃しました。現在ではこういった地上波の番組がほとんど姿を消し、かろうじて年末・年始にマジック番組が放送される程度になってしまいました。最近では、昨年末・年始にかけて次のような特番が放送されたくらいです。

◆2025年12月29日(月)NHK 超絶神業!マジックバトル 19時30分~8時45分

◆2026年1月1日(木) NHKBS マジック頂上決戦・奇術の世界大会FISMイタリア 23時~0時

◆2026年1月2日(金) BSフジ ザ・マジックシアター 21時~22時55分

 かつて、あれだけ人気番組であったマジック番組がテレビ欄から消えた理由は一体何でしょうか?今日はその理由を考えてみたいと思います。主な理由は、テレビ局側マジシャン側の両方にあるというのが私の考えです。

 最大の理由は、テレビ局側の「制作費」にあります。プリンセス天功のような大掛かりなイリュージョン舞台は制作に莫大な費用がかかり、現在のテレビ局にはそれを捻出するだけの体力はありません。制作費をふんだんに使うことができる年末やお正月の特別番組くらいにしかそれを捻出することができなくなっているのです。コンプライアンス」上の問題も発生しています。火薬を使ったマジックは危険この上なく、テレビを見た子どもたちが真似をしてケガをする可能性も潜んでいます。昔よりもいろいろなところに気を遣わなくてはいけない厄介な時代なんです。

 さらにマジシャン側にもテレビ番組に出演することには「ネタバレのリスク」が大いにあります。マジシャンにとって、何年もかかって編み出した必殺の看板マジックが、一瞬にして商売にならなくなってしまい、二度と自分のショーでも演じることができなくなってしまいます。このネタバレのリスクはマジシャンにとっては死活問題なのです。インターネットやSNSの普及によって、一度テレビで放送されてしまうと、トリックが解析・拡散されやすくなり、自身の劇場公演などで使えなくなってしまうのです(例:かつてセロの生放送中のタネ明かし放送事故が生々しい)。さらには過去に、テレビ局が視聴率を取るために放送した「トリック大暴露」のような番組が人気を博し(アメリカではマスクマジシャンの例)、それが引き金となって、マジシャン団体がテレビ局を訴える事態にまで発展しました。この裁判では「マジックの種に著作権はあるのか?」という論点で争われましたが、結果的にはテレビ局側が勝訴し、これにより、マジックのトリックは法的に保護されないという前例ができてしまい、マジシャンたちがテレビに出演するリスクは一層高まったのです。現在はユーチューブ等でタネ明かし映像が溢れ返っていることも、尻込みする要因となります。マジシャンの方でも新しいアイデアが枯渇している上に、視聴者の期待を超える斬新なマジックが常に求められることも負担が大きくのしかかりました。これらの要因が複雑に絡み合って、マジック番組は徐々にテレビから姿を消していったのです。

 しかし、マジック業界は決して停滞しているわけではありません。高度な技術と観客を楽しませる革新的なマジックがどんどん進化し続けていることは、年末・年始の上記の番組中で披露されたマジックを見ても明らかです。昨年イタリアで行われた3年に一度のマジックの世界の祭典・FISMでは、日本人のIbukiさんがクロ-スアップ部門でグランプリ(世界一!⇒私の解説はコチラ)を獲得し、JONIOさんもクロースアップ部門パーラーマジックで3位に入賞、野島伸行さんも発明賞を受賞しています。日本のマジックレベルはかなり高いんです。果たして4度目の黄金期は来るのでしょうかね?

 そんなことを思っていたら、昨年に引き続き、3月14日(土)フジテレビ系で土曜プレミアム「国民的マジックの祭典 マジシャン日本一決定戦SP」(午後9時~11時10分)が放送されました。この番組は、ジャンルの垣根を越え、現役最強と呼び声高い世界で活躍する日本人マジシャンたちが、技術とプライドを懸けて対決する、日本マジック界史上初の賞レースです。審査員には、プリンセス天功、Dr.レオン、KiLa、緒川集人、桂川新平のレジェンド・マジシャンたちが、「テクニック」「演技構成」「オリジナリティー」「インパクト」の4項目(各25点、計100点)で演技を審査し、マジシャン日本一を決定しました。昨年は幻想的で和風な世界観と物語性豊かな演技を披露したizumaの優勝。今回は、惜しくも準優勝となったJONIO、決勝進出を果たしながらあと一歩及ばなかったSORAをはじめ、神保賢孝、才藤大芽、Tokyo Tomo、野島伸幸、MiiNA、LUNA、もっさんら“プロ中のプロ”9人が集結し、カードマジックやコインマジックをはじめ、趣向を凝らした多彩な演目が次々と披露されました。結果、SORAさんが優勝して日本一の称号を手にしましたが、巧みな話術と華麗な演技に感心しました。民放の地上波で久しぶりのマジック番組でした。また、4月4日(土)再びフジテレビ系で、「サンドの禁断一騎打ち史上最高レベルの戦い」として、FISM世界チャンピオンのIbukiと、3位のJonioの直接対決、さらにはデフェンディング・チャンピオンのKiLaとの一騎打ちが見られました。やるな、フジテレビ!♥♥♥

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