関西工機整備

 テレビ番組「特大がっちりマンデー」の中で、JR全7社が完全集結&全面協力して、新幹線から地方観光列車まで、その裏側を特集していました。その中でJR西日本に多く見られるラッピング列車を紹介する時に、そのラッピングのほとんどを手掛けている「関西工機整備」さんが登場しました。「パンダくろしお」「ハローキティ」「鬼太郎列車」も全てこの会社のラッピング車両です。ラッピングは鉄道の車体に広告やデザイン用の特殊なフィルムを貼り付けることで、車両の見た目を大胆に変える手法です。通勤や通学など日常的に利用される車両が、まるで動く広告塔やアート作品のように変身するんです。「見た目を一変させる技術」のプロフェッショナル集団です。ラッピングには主に耐候性に優れた塩ビシートが使われ、これが車体にぴったりとフィットするのがポイント。高度な印刷技術で鮮やかな色や複雑なデザインを再現し、また特殊な接着剤によって長期間剥がれにくくなっています。さらに、空気を入れず、隙間なくピタッと貼る施工には熟練の技術が必要です。テレビでは社員のスゴ腕を実演してくれていました。

 JR西日本グループの100%出資子会社として、JR西日本の総合車両所における鉄道車両部品の検査や修繕などのメンテナンス業務、資材管理や場内運搬などの役務業務を通じて総合車両所の安定操業を支えるとともに、「安全・安心・快適」な車両の提供を担っている会社です。JR西日本の後ろに「関西工機整備」あり、ですね。また印刷事業として「グラフィックサインセンター」を構え、鉄道車両の各種サインや車体ラッピング、駅の案内標識などの企画の提案からデザイン、製作、施工までワンストップで行っており、車両の外装を彩るラッピング施行においては、国内でもトップクラスの実績を誇ります。「お客様と鉄道会社を結ぶコミュニケーションデザイン」を大切な価値観として、JR西日本グループをはじめ、多くの鉄道事業者、鉄道車両メーカーに採用されています。また近年では、これまで培ってきた「デザイン力」「印刷技術」、そして「高い品質」を活かして、グッズ類の製作などにも注力しています。

 印刷事業はこれまで、鉄道車両のラッピングをはじめ、駅や工場などの案内サインなど、鉄道関連製品のデザインや地域プロジェクトへの参画を通じて成長してきました。その中で、「デザインを通じて、人と人、地域や社会との新しい繋がりを生み出すこと」こそが会社の使命であると強く考えるようになりました。その想いを具現化する新たな挑戦として、デザインの力で新しい価値を提案するブランド「TRANGIS←」を立ち上げました。「TRANGIS←」は、この会社が展開する公共サインシステムをアレンジした製品・デザインの商標で、デザインするサインやアート製品をより身近に感じていただくための文字・ロゴマークです。その意味するところは、

TRAN:

Train、TRAM(列車)

G:

Graphic、Geographic(地図)

I:

Information(情報)

S:

System、Sign(サイン、案内)

←:

進む、案内する

 それぞれ、上記の文字を組み合わせた造語となっており、鉄道の標識案内や路線図、情報を連想させるワードを並べたものです。「←」(矢印)にも大きな意味があり、TRANGISを矢印の方向から逆に読むと「SIGN ART」(サインアート)となり、ブランド名にも遊び心を持たせています。サインをアートとして楽しめるようにとの思いが込められています。カラーは路線図のような識別性の高い彩りとし、丸印は路線図上の駅を表しています。丸みを持たせたデザインは、レールが延々と続いていく「永久路線図」を意味しています。

 鉄道車両という、全長20メートル近くあり、かつ凹凸や曲面だらけの巨大な構造物にシワ一つなくラッピングを施すのは、まさに「職人技」と「科学」の結晶です。「関西工機整備」のようなプロがどのように「魔法」をかけているのか、その裏側にある3つの主要なテクニックを紹介しましょう。

1. フィルムの「熱可塑性」と「形状記憶」を操る

ラッピングに使われる塩化ビニル製のフィルムには、「熱を加えると柔らかくなり、冷えると固まる(熱可塑性)」という性質があります。

ヒートガンの魔術: 複雑なカーブ曲面や凹凸(へこみ)がある場所では、数百度の熱風を出すヒートガンでフィルムを温めます。するとフィルムが「のし餅」のように伸びるようになり、車両の形にぴったり吸い付かせることができます。

ポストヒーティング: 貼り終わった後、さらに高温で温める工程です。これによりフィルムが「今の形」を新しい基準として記憶し、時間が経ってから元の平らな形に戻ろうとして浮き上がってくるのを防ぎます。

2. 「空気」を逃がす特殊な構造

初心者がシールを貼ると必ず入ってしまう「気泡」。プロがこれに悩まされないのは、フィルムの裏側に秘密があります。

◎エア抜き溝(マイクロチャネル): 高性能なフィルム(3M社製など)の接着面には、目に見えないほど微細な「空気の通り道」が格子状に彫られています。

◎スキージーの技: 「スキージー」という専用のヘラを使い、中心から外側へ一定の圧力をかけて滑らせることで、空気をこの溝から外へ完全に押し出します。これで、あの滑らかな表面が生まれます。

3. 「水」または「ドライ」の使い分け

施工方法には大きく分けて2種類あり、状況に応じて使い分けられます。

◎ウェット施工(水貼り): 霧吹きで専用の液をかけてから貼る方法です。液がある間はフィルムが滑るので、ミリ単位の位置調整が可能です。JRのような巨大なロゴや複雑な絵柄を合わせる際に重宝されます。

◎ドライ施工: 先述の「空気逃がし構造」を活かし、そのまま貼る方法です。最近の主流で、スピードが求められる現場(検査期間中の短い作業など)で威力を発揮します。

プロならではの「隠し技」もあります。

◎ナイフレステープ: 車体に直接カッターを当てると傷がついてしまいます。そこで、あらかじめカットしたいラインに「ワイヤー入りのテープ」を仕込んでおき、上からラッピングを貼った後にそのワイヤーを引き抜くことで、フィルムだけを鮮やかに切り裂きます。

◎環境管理: 小さなホコリ一つが命取りになるため、施工する車庫の温度管理や清掃は徹底されています。

 「関西工機整備」のような会社は、これらの技術を「巨大なキャンバス(電車)」に対して、数十人のチームで一糸乱れぬ連携で行います。複雑な227系の顔立ち(前面)にシワ一つないのは、フィルムを「どこまで伸ばしていいか、どこで熱を止めるか」を熟知した職人の指先の感覚があるからこそなのです。次にラッピング列車を見かけたときは、ぜひ車両の「角(コーナー)」「ドアの溝」を近くで見てみてください。シワが全くないその精度に、改めて驚かされるはずですよ。♥♥♥

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