蛍光マーカーをうまく使えない、という人は本当に多いんです。(株)パイロットが企画段階で行ったアンケート調査によれば、まっすぐに線を引けない、線を引いているうちに太さが変わってしまう、インクが乾く前にこすって紙面と手が汚れる、書いた文字の上から線を引くと筆跡がにじんでしまう、などなどの利用者の悩みが浮かび上がってきました。とにかく、蛍光マーカーには失敗する要素が多過ぎるのです。そう考えると、そもそも蛍光マーカーできちんと線が引ける方が珍しいんじゃないでしょうか?そこへ、パイロットから「太さが変わらない線をまっすぐ引きやすく、手も紙面も汚れない新しい蛍光マーカー」の「KIRE-NA」(キレーナ)が新登場しました(2024年10月)。話半分にしても興味はあるし、もし事実だとしたら、それは間違いなく蛍光マーカーの歴史を変える革新的な新製品ですね。製品のキャッチコピーは「キチントトトノウ(きちんと整う)」です。蛍光マーカーは私の毎日の仕事には必需品です。今日、米子市の天満屋4階の「LOFT」で手に入れてきました(松江市ではそれまでどこにも売っていませんでしたが、今日今井書店学園店をのぞいてみたらようやく入荷していました)。以下は「文房具の八ちゃん」によるこのマーカーの解説です。

▲米子LOFT売り場にて
パイロットから2024年10月に発売された「KIRE-NA」(キレーナ)が、そのウワサの“もしかしたら歴史を変えるかもしれない蛍光マーカー”です。学生のニーズに応えて、速乾性に優れたインクとまっすぐきれいな線が引けるガイドを採用したのが大きな特徴で、発売以来多くのユーザーに注目されています。軸のデザインも男女を問わず学生に合うものを目指したといいます。ただ残念ながら、松江市内のお店にはどこにも置いてありませんでした。カラーラインナップに関しては、学生にアンケートを行って決め、目に優しい定番の蛍光ベーシックカラー5色と、女性が好む淡いペールトーンカラー5色の全10色展開です。同じ系統の色味を揃えているので、例えば教科書とノートで使い分けることもできます。外見は、最近のパイロット製品に多い、単色軸にカラーパーツをあしらったシンプルな作りで、軸のデザインは、第一印象も「ザ・普通」という感じ。見た限り、そこまで凄いギミックが仕込まれているようには思えません。しかし開発期間はなんと6年にも及んでいます。「完全に新しいインク」と「今までにない構造のペン先」を同時に開発する必要があったからです。

ラインを引く“太”、文字書きもできる“細”のツインチップ仕様ということで、まずは太い側のキャップを開けると、なにやら見慣れない雰囲気です。その原因は、チップを挟むように両脇から生えている半透明のパーツ。これが、線の太さを変えずまっすぐ引きやすくするための秘密兵器「キチントガイド」です。


▲使う際には、カラーパーツに親指を乗せるとガイドの水平が取れて、線が引きやすい
ペン先を紙に当てると、まずよくしなる特殊なナイロン素材でできたソフトなチップがフニャッとしなるように紙に触れ、その直後に新開発の「キチントガイド」が突き当たります。ガイドが両側とも紙に当たっている状態でマーカーを水平に動かすと、なるほど、確かに太さが一定の線がスーッと引けています。このガイドによって過剰な筆圧がかからなくなるため、何度繰り返しても、常に一定の太さでスーッと引けて、まったく失敗しません。……えーっ、これ凄いんじゃないですか!?
蛍光マーカーの線の太さが変わってしまうのは、ほとんどのマーカーで採用されている斧型チップ(先端が斜めにカットされた、硬いペン先)で書き始める際に、斧の刃にあたる部分が紙に傾いて触れているのが原因です。だから、書き始めは線が細く、書いているうちに刃先の全域が紙に当たるようになって線が太くなってしまうのです。最初からチップをまっすぐ紙に当てれば問題ないのですが、とはいえ常にベストな角度で書き始めるのは、なかなか難度が高い技術なのです。従来にも、チップの傾きを解消するために弾力のあるソフトチップを採用した製品は、いくつか発売されていました。この場合、紙にむぎゅっと押し当てることでチップ全域が紙に当たるため、傾きは発生しなくなります。しかし、引く際の筆圧を一定化させないと、結局のところ線は太くなったり細くなったりで安定しないのです。そこで、その筆圧を安定させるのがこの「キチントガイド」の仕事なんです。どれだけソフトチップへ筆圧をかけても、ガイドの高さまでしか紙に押しつけることはできず、逆に、ガイドが当たるところまで押し付ければ、チップの筆圧は常に同じということになります。その結果、どれだけ線を引いても常に同じ太さになる、というすぐれた仕組みなのです。
さらに、ソフトチップは曲面に強いという性質も持っています。例えば分厚い教科書を開いた時のふくらんだページの曲面にもピッタリとフィットします。紙面がカモメの羽のように曲がって広がりますが、柔らかく弾力のあるチップなら、その曲がりに沿って動くため、チップが紙面から外れずに安定して線が引き続けられるのです。今日私が購入した「KIRE-NA」(5色セット)には、初回限定のおまけで、曲面にフィットする塩ビ製の「やわらか定規」が付いてきました。これも使えそうです。線を引く時にちょうど親指が引っ掛かるサイドのくぼみもこだわりの一つです。こういった小さな工夫も筆記の安定感を高めるのに一役買っています。


▲ガイドのおかげでチップが定規に触れないので、フチのインク汚れを拭き取る手間もないのが嬉しい
従来の蛍光マーカーは、チップを紙に押し当てるとダクダクとインクが出て紙に染みをつくってしまうため、どうしても焦って線を引きがちです。ところが「KIRE-NA」は、不要な筆圧がかからないため、インクの流量もほどよくセーブされます。だから多少ゆっくりと引いても、インクの染みができにくいのです。つまり、チップの傾き・筆圧・インク染みという3つのトラブル要素を気にしなくて良くなったことで、線を落ち着いてまっすぐ引けるだけの余裕が生まれるのです。
「KIRE-NA」のもう一つのポイントが、新しいインクです。新開発の「速乾顔料インク」は、書いて数秒もしないうちにサラッと乾いてしまい、以降は指でこすってもインク汚れが広がらない。乾くまでの所要時間は紙にもよりますが、普通のノートやコピー用紙なら1〜2秒、教科書のようなツルツルしたコート紙でも6〜7秒あれば大丈夫でしょう。「速乾性を上げることには限界がありますし、浸透性を上げすぎると紙に対して裏抜けが大きくなってしまいます。そのバランスを調整しながらインクを開発することが一番難しかったです」(企画担当者)。パイロットの速乾インクといえば、超速乾筆ペン「瞬筆」を思い出す方もおられるかもしれませんが、これは紙への吸収速度を高めて乾燥スピードを上げたタイプです。対して「KIRE-NA」のインクは裏抜けを防ぐため、そこまで激しく紙に吸い込まれるようにはできていません。メーカー曰く、紙に吸わせつつ紙表面での乾燥効率もアップさせた、いわばバランス型の速乾インクなのだそうです。そのため正直、乾燥スピードは「瞬筆」よりもやや遅い感じです。それでも従来の蛍光マーカーと比較するとかなり速いのです。乾燥スピードが速いということは、ボールペンの筆跡の上からマーキングした際に、元の筆跡のインクがにじみにくいという効果も得られます。ゲルインクなどは、いったん乾いたとしても、上からさらに水分(この場合は蛍光インク)が乗ると、じわっと浮き出してしまいます。ところが浮き出す前にすかさず蛍光インクが乾いてしまえば、にじんでくるヒマもないというわけです。加えて、にじんできたボールペンのインクでチップ先端が汚れる心配も少ないのも、ありがたいところですね。
太チップがあまりにも革新的すぎてつい存在を忘れそうになりますが、細チップも速乾インクを共有しているため、擦れ汚れの心配なく書けるのはメリットです。実際、蛍光マーカーは「マーキング+コメント書き込み」という使い方でツインタイプを愛用している人も結構多いので、やはり細チップはついていると嬉しいのです。
私は資料のチェックなどで蛍光マーカーを多用しています。ひとまず3日ほど使ってみて、今まで使っていた蛍光マーカーから「KIRE-NA」へ完全に乗り換えることを決めました。とにかく優秀なのは「ソフトチップ」+「キチントガイド」のコンビで、私のように不器用な人間でもフリーハンドでまっすぐな線が引けたのは、最高です。特に、インク染みが広がる心配もなくゆっくりとマーキングできるのが、ここまで使いやすいとは思いませんでした。個人的にはすでに蛍光マーカーの歴史は変わったということで、以降のマーキングには「KIRE-NA」を使い倒していくつもりです。
発売後の売れ行きは想定以上で、主なユーザーは、学生と40~50代の方々で、狙った通りの層の方に届いているようです。機能面に対する評価はもちろんのこと、価格面でも「これだけの新機能を詰め込みながらこの価格(132円)はすごい!」と評判です。「サヨナラ蛍光ペンストレス」というキャッチコピーで訴求しています。最近発刊されたばかりの『文房具屋さん大賞2025』(扶桑社ムック、2025年2月)では(写真下)、この「キレーナ」が見事「大賞」を受賞しました。それだけインパクトのあった商品だったということです。♥♥♥
