魔術館の♥9

 直木賞作家の故・泡坂妻夫(あわさかつまお)さんに『魔術館の一夜』(現代教養文庫,1987年)という作品があります。この本は、あの松田道弘(まつだみちひろ)さんが「奇術書の革命であり奇跡である」とまで絶賛した名著です。「奇術の種明かし」と「読み物」を両立させたものは他に例がありません。その後泡坂さんは、『泡坂妻夫マジックの世界』(東京堂、2006年)という専門書も書いておられまして、この本の最後に出てくる「ワープナイン」名付け親は、あのマックス名人です)というパズル傑作が私は大好きでした。不思議ですよ。これを商品化して発売したのが、小野坂トンさんのマジックランド(東京)のパズルマジック「厚川昌男(あつかわまさお)の魔術館の♡9」で、私は何個も買ったことを覚えています。ついでながら名前の「泡坂妻夫」(AWASKA TSUMAO)さんというのは、本名の「厚川昌男」ATSUKAWA MASAO)のアナグラム」(anagram)ですよ(組み替えてみてごらんなさい)。アナグラム」はある程度単語力のついてきた高校生に使うと、絶好の英語指導材料になることを私は経験から知っています(⇒詳しくは私の解説コチラをご覧ください)。♠♣♥♦

 魔術館の♡96片に切り分けた大きなトランプ(ハートの9)を1枚示します。このバラバラの6片を組み合わせてみますが、なぜかうまくはまることははまるのですが、最後の1片だけが裏向きになってしまいます。今度は裏向きでやってみましょう、と裏向きで組み合わせると、これまた1片だけが表向きでないとうまくはまりません。今度は6片を再度バラバラにして気分も新たに表向きに組み合わせると、ようやくうまく組み上がるのです。巧妙かつ精緻なパズル・トリックです。これを考えた泡坂さんはまさに天才と言わねばなりません。

 巧妙なトリックを凝らしたミステリ-や、職人の誇りと人情の機微を描いた小説で直木賞も受賞された泡坂妻夫さん。直木賞の受賞記者会見では、その求めに応じて奇術の腕前も披露されました。本職は家業を継いだ和服に紋を描く紋章上絵師でしたが、その傍らに作家・創作奇術家として活躍されました。小説家としてだけでなく、奇術愛好家兼奇術師として、1969年には第2回石田天海賞を受賞しておられます。またご自身の名を冠した「厚川昌男賞」という創作奇術家賞が設けられています。泡坂さんは、2009年2月3日午後6時36分、75歳で、急性大動脈解離でお亡くなりになりました。私は泡坂さんの著書『しあわせの書 迷探偵ヨギガンジーの心霊術』(新潮文庫)の大ファンで、この本で不思議な「ブックテスト」を人前で何度演じたことでしょう。⇒コチラです この本は仕掛けを知らない人にとっては、ただの小説なんですが、マニアにとってはあこがれの一冊なんです。価値を知らない人が「ブックオフ」に売り飛ばして、わずか100円で棚に並んで売られているのを見ると淋しくなります。私は目にする度に買い占めているんです。♠♣♥♦

▲とんでもない仕掛け本です 古本屋で見つける度に買っています もう何冊たまったことか!!

カテゴリー: マジック紹介 パーマリンク

コメントを残す