「珈琲時光」

 ちょっと古い映画になりますが、「珈琲時光」は、国内外の映画監督たちに多大な影響を与えている小津安二郎の生誕100周年を記念して作られた、台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督による群像劇です。東京を舞台に女性の日常を映し珈琲時光出す中で、人々との交流を描いた作品で、歌手の一青 窈さんと浅野忠信さんが主演した映画です。タイトルの「珈琲事光」には、落ち着く場所で心地よい時間を過ごし、心をリセットする、という意味があるそうです。特に何が起こる、というわけでもないのですが、日常風景を淡々と映し出す、この何気ない日常が、非常に心地よい空気感と光の映像でもって、淡く心に沁みる様が心地よく感じました。最小限の登場人物、セリフ、展開でゆるやかな時間が流れます。東京の風景も、都電や古い山手線など、東京に住む人達が、立ち止まって見たことのないような新鮮な光景が繰り広げられます。なんだか懐かしいような、なんとも言えない味わいです。目の前にありながら、あまり注目されることのない風景がリアルな生活感をかもし出しています。神保町で古本屋を営む若店長、肇と、陽子との親しい関係も描かれます。仲良くしてはいるけれど、特に彼らが深い愛情で結ばれている、といった様子は描かれていません。台湾から日本へ帰って来たフリーライターの陽子は、台湾で妊娠し、そのことを東京の父と義母に突然告げ、未婚の母として子供を産み、一人で育てるつもりです。しかし、それぞれの人、一人ひとりが陽子を責めたりする事を決して言わない。父も義母も問い詰めたりは決してしません。義母は、陽子の好きなもの、肉じゃがを作る。肇は密かに彼女を想ってはいて、胎児に自分を似せたような絵を描き、彼女の具合の悪い中、部屋を訪問する。そこには、ドラマはなく、うっすらとした予感しかない。電車が縦横無尽に走る、東京の風景をもう一度映し出し、物語はアッサリ幕を閉じる。東京の姿が、本来なんだか優しいものに、今までとまるで違ったものに感じ、非常にのんびりと、まったりとした時間が流れていました。何とも言えない、ちょっと今までにない映画だなと感じたのを覚えています。

 一青さんの出演のきっかけは、侯監督が台湾で一青さんの記事を見て、「会いたい」と言ってもらったこと。話しているうちに「君はこの映画の陽子役です」って自然に言われて、「じゃあ、やりますか」という感じだったそうです。

 陽子という女性がわかりにくいとしたら、それは多分、私自身がわかりにくい人だからじゃないですか。言葉ではうまく伝えられないから、おそらく陽子は書くという職業を選んだのだろうし、私は詩を書いている。他人に素直に気持ちを伝える術があったならば、侯監督にキャスティングされなかっただろうなと思います。演じたのではなく、陽子は私なんです。台湾人なのに、日本人として生きることを選んだ背景にどんな気持ちがあったのか、そこに台湾人として日本人の母と結婚した亡き父への思いが重なりました。今日本で忘れられてしまった彼をあえて取り上げる、そこに侯監督の意図があると思います。(一青談)

 ここにもある通り、陽子は一青さんそのもの。衣装も私服がまじっていたり、劇中の会話もアドリブが多い。小悪魔的な魅力を放っていました。一青さんの友達も「まんまじゃん」との感想。主題歌となった井上陽水さんの作った「一思案」も素敵な曲でした。

 ベネチア国際映画祭、ニューヨーク、トロント、釜山と海外の映画祭に相次いで出品されたこの作品を、侯監督は「私にとって異国で異文化の中で撮る冒険を伴った作品。多数の映画祭で上映していただ帰るのはとても光栄。それぞれの國で楽しんでいただければ」と、話しました。2004年、一青 窈さんが初めて映画に出るというので、私はこの映画を博多まで見に行ったんですが、当日映画館に入る前の喫茶店でコーヒーを飲んでいると、新潟中越地震を知らせるニュースが流れてきて、愕然としたのを覚えています。映画館に入場の際に、映画のタイトルにちなみ記念の特製缶コーヒーをもらったのが嬉しかったんですが、あの缶コーヒー、飲んでいないけれど、どこへいったんでしょう?

 movie,film,video★大好きな一青 窈さんの、11月16日に開催された、新しいファンクラブ「大家族」の第一回イベントの ダイジェスト映像(short ver.)がアップされました。 映像はコチラです。

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