『Bird’s-eye総合英語』

 鷹家 秀史 監修『Bird’s-eye総合英語』(エスト出版)という素晴らしい学習参考書が新しく出ました。著者の鷹家(たかいえ)先生とは、先生が岡山県立岡山朝日高等学校の進路課長をなさっていた頃から、何かと親しくさせていただいています。卓越した指導力だけでなく、当時から、最新の言語理論にも通じておられる学究肌の先生でした。最近では、2016年に、松江北高で行われた島根県の高英研研究大会」にお招きして、ご講演と印象に残る素晴らしい授業をやっていただきました。授業を受けた生徒達が、私に「新鮮な授業だった」「目から鱗」と語っていたのが印象に残っています。そのときの詳しいレポートはコチラに書きましたのでご覧ください。

 この本は、高校生が踏まえておくべき文法事項を解説した「第1部」と、空から鳥の目で俯瞰するように、違った角度から英文法を見た「第2部」の二部構成で出来上がっています。

第1部 Standard View(標準編)

スモール・ステップ方式 ―1つの基本例文+1つの解説 ― で見やすく分かりやすい解説です。原則、基本例文はCEFRのA1~A2段階のものが使われています。例外事項には注釈がついています。音声・デジタル教材【Assist View(アシストビュー)】も充実しています。

第2部 Birdʼs-eye View(俯瞰編)

第1部で学習した高校で学ぶ文法事項を、別の視点・観点から俯瞰して見たものです。こうすることで、英語についての新たな気づきが得られるようになっています。最新の研究の知見が生かされた章です。

▲松江北高で授業をされる鷹家先生

 この参考書を執筆された思いを、鷹家先生が端的に述べておられます:

もちろん、私たちは高校の英語教師ですから、常に高校生という学習者を目の前に意識して本書を執筆しました。伝統的に繰り返されてきた「文法的な説明」を再度吟味し、昔からの説明だが現代の高校生にも効果的だと思えばそれを踏襲し、逆に、今までの「文法的な説明」は高校生にこんな疑問を引き起こすはずだと過去の教師経験から予想できる疑問点にはあらかじめ答える方法を取りました。(p.3 はしがき)

▲役立つコラム「EAGLE EYE」

 何よりも「現場のなぜに答えたい」という骨組みに感銘を受けました。「覚えろ」の前に、「なぜそうなるの?」が解説されているところが、他の高校生向け参考書とは一線を画しています。例えば、仮定法If it were not for~(もし~がなければ)というおなじみの成句があります。なぜそのような意味になるのか、ちょっと考えればすぐに疑問が湧くはずですね。残念ながら高等学校の現場の参考書には、その成り立ちが書かれている物は見たことがありません(最近出た肘井 学『話すための英文法ハック100』(KADOKAWA、2021年7月)は例外です)。そういう意味だと覚えておけ、で済ます指導が現場でも横行しています。教師の中には、それを考えてみようとすらしない人もたくさんいます。この『Bird’s eye』には「EAGLE EYE」として、その成り立ちが分かりやすく解説されています。このコラム、いっぺんで気に入りました。できることなら、これと同じ意味のBut for~も触れて欲しかったところです。不定詞を勉強する際に、It is kind of you to help me.と「人の性質を表す形容詞」の時には、forではなくofとなるのはなぜでしょう?ほとんどの先生たちが、そういうものだ、と踏み込むことをしません。ぜひこの参考書の解説を読んでもらいたいものです。昨日ご紹介した朝尾幸次郎先生『英文法のなぜ2』(大修館書店、2021年)でも貫かれていたように、英語の歴史をたどれば、現代英語の「なぜ」の起源が見えてくるのです。私がよく注意喚起をしている成句after allも、何も考えずに「結局」と片付ける教師が多いのですが、⇒私の解説はコチラです  このコラムには二つのafter allの用法が、丁寧に解説されています。「話法の転換」で、this, here, tomorrowなどの副詞をthat, there, the next dayと機械的に変える指導が横行していますが、これはよく考えないといけません。そこら辺にも適切な注意が与えられていました。他書にはない新鮮な記述が満載の参考書です。要望を記しておけば、be willing to「~してもかまわない」と正しく記述しているかと思えば(p.149)、「喜んで~する」(p.455)と不統一が見られます。成句のin factも、現場ではいい加減な訳語でごまかされていますが、「実際は」の訳語はいただけません。このことは最近詳しく述べました。⇒「In fact」コチラです

 私は、第2部の「俯瞰編」を興味深く読みました。学究肌の鷹家先生らしい切り口です。最近の文法研究の成果がふんだんに盛り込まれた素晴らしい章です。

 ちなみに、Bird’s-eye view は直訳すると「鳥の目の景色」。この表現には2つの意味と使い方があります。鳥が大空を飛んでいる時見ているような高い場所から見下ろした景色。鳥瞰図。物事や場所の全景。空から見ているような広大な景色を表す時に使う他に、景色を「物事」に置き換えて、その「物事」を大筋で見るという時などにも使います。「概要」「大要」の意味。まさにこの本はそれに相当します。

 最近、復刊された学習参考書の安藤貞雄『基礎と完成 新英文法』(開拓社)⇒私の詳しい紹介はコチラです  に加えて、高校生たちにぜひ勧めたい本が、もう一冊加わりました。♥♥♥

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