sufficientの語感

 最近届いたパケット・トリックの傑作「My Poker Collection」の商品レビューのサイトを見ていて、次のような英文に出会いました。この英文は、sufficientの表す語感を見事に表していると感じました。

The training video is good, not great, but sufficient if you are used to performing close up card magic.  解説ビデオはまずまずだ。素晴らしい出来というわけではないが、クロースアップ・カードマジックを演じることに慣れている人ならどうにか事足りるだろう。

 現場では、sufficientは受験に必須の単語で「十分な」と指導します。受験単語集にもそのような訳語が載っているだけです。でもこれではこの単語の持つニュアンスが全く抜け落ちてしまっています。次の用例と訳文をご覧下さい。私たちの『ライトハウス英和辞典』の初校にあったものです。一体どこが問題なのか?考えてみてください。

His income was sufficient to support his family. 彼の収入は家族を養うのには十分だった。

ここで、sufficientを「十分だった」と訳してしまうと、まるであり余るくらいの収入があるかのように聞こえます。この英文はそういう意味ではないと、私たちの編集委員のM.アルトハウス先生(津田塾大学)は鋭く指摘されます。

 Here, 「十分な」seems to have too positive a nuance. “His income was sufficient to ~” doesn’t really mean that it was plenty. “Sufficient” suggests that his income has enough for his family to get by on, even if they could not save much of anything, or live well.

“If something is sufficient for a particular purpose, there is enough of it for the purpose“  [COBUILD]という定義からも、そのことは明らかでしょう。何も考えずに、「十分な」と機械的に訳してしまうと、原文の持つニュアンスがそこなわれてしまいます。そこら辺の意味の実態を記述した英和辞典はほとんどありませんが、「「有り余るほど十分な」という意味ではなく、「ある特定の目的のために十分な」という意味」(スーパーアンカー英和辞典)「必要にして十分の意味で、あり余っている(ample)のとは異なる」(小学館英和中辞典)はさすがと思われます。私たちの『ライトハウス英和辞典』(第6版)で、上の英文に「彼の収入は家族を養うにはどうにか足りた」と訳文を添えているのはこういった事情によるものなんです。❤❤❤

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