巨人の問題点

 巨人の二軍(イースタンリーグ、二岡監督)は5年ぶりに優勝しました。最後の3連戦を一試合でも落としたらV逸の所でしたが、西武に3連勝しての見事な優勝です。それに対して、一軍はみじめでした。「暗いマックスシリーズ」の出場すらも叶わず4位に撃沈しました。「暗黒時代」です。セリーグの最高打率.252、本塁打も163本の最多を放ちながら、この成績です。「負けに不思議の負けなし」。一体何が足りなかったのでしょうか?

①問題は投手陣です。未知の要素の多い外国人投手をたくさん取ってきて機能しなかったのは許すとしましょう。若手成長株の先発陣を起用したのはいいのですが、見切りの早さが救援陣への負担を強いたことでしょう。救援陣が打ち込まれて逆転されるケースが特に前半目につきました。逆転負けが30でヤクルト(37、最下位)に次いで2番目に多い。そのうち1点リードを逆転されたのが83%に当たる25。先取点が2点差以上の試合は22戦22勝です。チャンスに2点のセイフティリードを奪えなかったのが敗因です。一人一殺の「マシンガン継投」で勝てればいいのですが、疲労がどんどん蓄積していきます。起用した投手の延べ人数は、セリーグ最多の636人です。先発の早期降板でリリーフの出番が増して負担が増えたものの、継投策は実りませんでした(リリーフ陣の防御率3.81は12球団ワースト)。2年連続でリーグワーストの救援防御率です。投手陣の整備が急務です。特にリリーフ陣の再構築が。回数毎の投手起用のデータが如実に物語っています。

             神  広  D    中  ヤ
   3回未満     3  3  5 14  9  5
   5回未満    17 23 30 36 21 29
   7回以上    56 52 55 45 41 20 

初戦を落とすケースが目につきました。初戦の勝率上位はクライマックス・シリーズ進出を果たした3チームが占めています。データは初戦で勢いに乗れなかった今年の状態をはっきりと示しています。

   巨人   22勝30敗1分け   .423
   阪神   29勝24敗1分け    .547
   広島   29勝23敗1分け    .558
   DeNA   30勝25敗       .545
   ヤクルト 25勝31敗       .446
   中日   25勝28敗       .472

足を使えない選手ばかり。盗塁数はリーグ4位の47。ワンヒットで2つ先の塁を狙う走塁ができないのです。1つずつ進塁する「各駅停車」攻撃ばかりでした。「巨人と対戦するときは足のことを全く考える必要がなかった」と他球団のスコアラーが笑顔で振り返ります。走れる選手がいません。セコンドから1本のヒットで楽々と帰ってこれる阪神と違い、巨人は3塁で止まってしまいます。一番足の早いはずの重信選手が、対ヤクルト最終戦においてやらかしました。門脇選手のライトへの大飛球でのんびり帰塁。あわや併殺の危機で、緊張感の欠けた「ちんたらプレー」の典型でした。これでは勝てないはずです。

本塁打は多いがソロホームランばかり。阪神は打率・本塁打数は巨人に劣るものの、得点はリーグ最多の545点。そのうち本塁打による得点は133点(24%)です。巨人は518得点のうち本塁打で252点(49%)。本塁打のない試合に42勝35敗3分けで勝率.545の阪神に対して、一発頼みの巨人は9勝34敗1分けの勝率.209です。ホームランでしか勝てない巨人ですが、ソロホームランばかりです。効率が悪い。

⑤4番の岡本和真選手は、自己最多となるリーグトップの41本塁打を記録しましたが、7割近くの28本がソロホームランです。イニング先頭での本塁打が18本。「打たれてもソロならOK」というのが他チームの考えです。可哀想な面もありました。本職のサードだけでなく、ファーストを守らせたり、レフトに回したり、不動の4番の起用法は混迷を極めました。つながりを欠いた打線に加え、昨年に続き防御率リーグワーストの救援陣を整備できなかったことが響きました。打率・本塁打は12球団トップでも、得点機をことごとく潰した今季でした。

 日本を代表するホームランバッターの4番岡本和真選手には、不満な点がいくつかあります。凡打に終わった時にバットを放り捨てるのです。かつての巨人の不動の4番・松井秀喜選手は絶対にバットを放り投げたりはしませんでした。彼は中学生の頃、明らかに打たせる気がなく四球攻めをしてきたピッチャーをにらみつけ、バットを放り投げてコーチに殴られたことがあります。星稜高校2年の秋に台湾遠征へ行った際も、山下監督からひどく叱られた経験があります。現地高校との試合でホームランを放った翌日、顔の付近にきた明らかなボール球をストライクとコールされました。どうやってもバットが届かないコースまでストライクと判定され、三振を喫しました。松井選手は頭にきてバットを投げ捨てました。その試合後、山下監督から2時間ほど叱られました。「おまえはジャパンのユニフォームを着て試合に臨んでいる。石川県代表ではなく、日本代表の選手なんや。マナーも大切だ。球界のトップレベルを目指すならば『知、徳、体』の三拍子そろった選手になれ」いくらホームランを打っても、思い上がった気持ちでいたら次がありません。打てなければ悔しいのは当然です。審判の判定が間違っていれば腹も立ちます。しかし、その悔しさを露わにしてバットを投げ捨てるという行為は、次の可能性を捨ててしまいます。悔しさを露わにすれば、自分の心が乱れます。自分の心が乱れれば、次にど真ん中の好球が来たとしても打てません。それで得することなど、何一つないのです。逆に、グッとこらえていれば、次に生きることもあります。あのホームラン世界記録を持つ王貞治(福岡ソフトバンクホークス会長)さんは、どれだけ四球攻めをされても、一度もバットを投げたことはありません。表情一つ変えずにバットをそーっと置き、一塁へと歩いていきました。松井選手は、その話を聞いて「格好いい」と思いました。バットを投げつけて、投手をにらみつけるよりも格好いいと思うし、相手への威圧感もあるように思ったと言います。

 さらに岡本選手は、凡打の時には全力疾走をしません。ただでさえ鈍足なのにタラタラと走っている姿は実に見苦しい。遅くてもいいから一生懸命走って欲しい。いくらアウトだとは言っても、野球は次に何が起こるか分からないのですから。大リーグではこんなチンタラした走塁をしていたらすぐに処罰です。彼のようなリーダーシップではチームは盛り上がることはないでしょう。引退した松田「熱男」のようなチームを鼓舞する姿勢が欲しいのです。

バントが下手くそ。ここ一番という時にバントでランナーを送ることができません。失敗する場面を本当によく見ました。世界記録を持った川相コーチが指導しているはずなのに解せないところです。「自己犠牲」の精神が希薄なんでしょう。高校生の方がよほど上手です。「クライマックスシリーズ」の広島―横浜B戦(広島が2連勝)もバントの差が勝敗を分けました。バントは大切ですね。

四球の数がケタ違い。四球を重視する姿勢が4番大山や外国人、代打に至るまで浸透して、打線として機能していた阪神に対して、ボール球を振って三振、凡打、併殺の山の巨人。打線には一体感が欠けています。「四球はヒット1本と同じ」として査定ポイントの変更を球団に掛け合って実現した岡田監督とはえらい違いです。逆に巨人の投手陣は平気でフォァボールを出します。それがことごとく失点につながっていきました。V9時代の川上哲治監督は「歩かせるくらいなら打たれろ」とカミナリを落としました。

記録に表れないエラー。巨人の失策の数(54個)は阪神(85個でセリーグ一多い)より遙かに少なく、セリーグ一失策数は少ないのです。でも記録に表れないエラーは山ほどありました。代表格はブリンソン選手。プロとしてあり得ない怠慢走塁や勘違いやチョンボなどいっぱいやらかしています。昨年クビを切ったポランコ選手はロッテに移籍してホームラン王です。

外野手の肩が弱い。外野手のバックホームでアウトにした場面を巨人ではほとんど見ません。「捕殺」が少ないのです。外野手の捕殺数のベストテン(1位は阪神のノイジーの12個)には巨人の外野手はただの一人も含まれていません。プロの醍醐味が一番感じられるプレーですが、肩の強さを売り物にする選手がいないのです。

⑩阪神と違い、打順を固定することができませんでした。1番バッターは16人も登場しました。「調子のいい者を使う」という方針なのでしょうが、メンバーも打順も毎日コロコロ変わりました。これでは打線に落ち着きが生まれません。線ではなく点で終わってしまったという印象です。あれだけの名選手が揃っているのですから、どっしりと構えていればいいのです。あとは選手を信じて座って入ればいいのです。

コーチ陣との軋轢『スポーツ報知』で「連続Bクラス原因」と暴露されました。いつも巨人の提灯記事しか書かない新聞ですが、今回はよほどハラに据えかねたのでしょう。大久保コーチと合わないスコアラーが8月に交代させられています。コーチとスコアラーの間で密な連携がなく、情報のすり合わせが不十分だったといいます。キャンプで「アーリーワーク」と称して午前7時からの打撃練習を義務化したのはいいのですが、次第に緊張感がなくなり、試合のための練習ではなく、練習のための練習が目的となっていました。「あれでは選手を疲れさすだけ」と嘆く球団関係者もいたほどです。他チームも本数を振ることだけが目的となっているのでは全然練習にならない、と批判していました。自主参加となった開幕後に参加していたのは、若手と控え選手のみでした。チームが一丸となっていないことが一番の問題点です。

 たり前のことをカになってゃんとやった」(ABC)阪神に対して、それができなかった巨人との差でしょう。原監督はCS出場を逸した際に、「何かが足りないんでしょうねこのチームには」などと、まるで人ごとの様なコメントを発していましたが、責任を取って辞めることになりました。“何かが足りない”チームだから4位に終わったのであって、それはファンや評論家が言うことで、監督が口にする言葉ではありません。何が足りなかったかを突き詰めて考えて、それを埋めるのが監督の仕事です。責任逃れをしているようにしか見えないし、選手の士気にもかかわるでしょう。他チームで育った有力選手(FA)を人気と資金力でかき集め、大リーグでは使えない外国人選手を次々に獲得する原方式では、巨人の黄金時代の復活はないと、伝説のOB広岡達朗さんは断言します。あふれた一軍選手の調整工場と化した二軍ではなく、生え抜きの選手から次代のレギュラー候補を厳しい競争の中から勝ち上がって育てるチーム強化の本質を忘れてはならないはずです。それでも来季に向けて、いい材料はあります。戸郷菅野に代わりエース格に成長し、山崎伊も独り立ちしました。リリーフ陣でも24歳の菊池が、オールドルーキーの船迫も計算が立ちました。ルーキーの“ストロング”門脇が堅実・華麗な守備で坂本からショートの座を奪い、秋広も来季の活躍が見込まれます。ここは来季に期待することとしましょう。まずはそのためにも新しい指導者・阿部慎之助監督の下で、「地獄の伊東キャンプ」です。来季は「アレ」ではなく「アベ」です。♥♥♥

 

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