具体例を考える

▲答案を板書する松江北高補習科の生徒達

 次の英文は二次対策の読解演習で、松江北高補習科勝田ケ丘志学館で読んだものです。日本語に和訳してみてください。

 We humans are active, creative animals who can represent what exists as if it did not, and what doesn’t exist as if it did.

 英文自体はそれほど難しい文章ではありません。「私たち人間は、存在しているものをまるで存在していないかのように、そして存在していないものをまるで存在しているかのように表現することのできる能動的で創造的な動物である」くらいの和訳ができると思います(写真上)。私は授業でいつも難しい英文に出会ったら、ただ単語を置き換えて済ますのではなく、その具体例を考えるようにすると理解が深まるよ、と教えています。難関大学の英文は特にそうです。この英文も早速生徒に質問します。「存在しているものをまるで存在していないかのように、そして存在していないものをまるで存在しているかのように表現することのできる」とはいったいどういうことだろうね?と生徒たちに投げかけます。具体例を考えてごらんと聞くのです。京都大学を受験する生徒がいいことを言ってくれました。「宇宙人やUFOなどはありもしないのに、間違いなく存在すると主張するという人たちがいる」なるほど。確かに「UFOを見た」という人はありもしないUFOの事細かい描写を頭で作り上げたり、合成写真を作ろうとしたりしますね。ネス湖怪物ネッシーでもそうですね。小説(Fiction)も同様に、作家の頭で作り上げられたものです。じゃあ、今度は「存在しているものをまるで存在していないかのように」の具体例は?と問うとハタと困ってしまいました。じゃあ、次の時間までの宿題ということで。こんな感じで授業を進めていきます。

 例えば、殺人犯は自分のやった犯罪を隠蔽するために、あれやこれやと口実を作り上げ、アリバイ工作まで行うじゃないですか。私の大好きだった推理小説作家の故・津村秀介さんは、作品の中に巧妙な時刻表トリックを仕掛けることで知られていました。本の途中で列車の時刻表が出てきた時には、絶対に解いて見破ってやると燃えてきたものです。故・西村京太郎先生の初期の作品にも、時刻表がよく登場したものです。莫大な裏金をもらっておきながら、自分は全く知らない、秘書に任せていた、などと苦しい弁明をする国会議員の先生方も同様でしょう。証拠隠滅を計るためにパソコンのハードディスクを秘書にドライバーで壊すように命じた先生もいらっしゃいましたね。こうした具体例が頭に浮かべば、上の英文の言わんとするところは明確になってきます。このように「具体例をイメージする」ことが英文の理解に大きく関わってくることをいつも強調しています。

 さて、ここでもう一つ質問をします。最初の「能動的で創造的な動物」とはどういうことでしょうか?訳語を与えて、答案はできても何を言っているのかが理解できなければ、英文を読んだことことにはなりません。ここで、先ほどの具体例が大きなヒントになってくれます。「存在しているものをまるで存在していないかのように、そして存在していないものをまるで存在しているかのように表現するには、いろいろなことを自ら動いて(always busy doing things, especially physical actitivites)作り上げる(involving the use of imagination to produce new ideas or things)必要があります(ウソの証拠やアリバイ・トリックを想像してみてください)。名詞の後にある修飾語がその内容を具体的に説明してくれているのです。このように、「名詞を前後から修飾する(形容詞+名詞+形容詞句[節])場合、「前にある形容詞」を後の「形容詞句[節]が具体的に説明していることが多い」ということを指導しておくとこれからの勉強に役に立ちます。英語は難しいことを言ったら、その後に必ず具体的なフォローが続くのです。これを「抽象→具体の法則」と言います。このことを徹底的に指導してきました。これは英語で非常に重要な原則です。英語が分かるというのはこういうことが無意識にできるようになることなんです。

 2月22日(木)は、私の松江北高18年間で最後の授業でした。2月の後半と3月は疲れの溜まった体を休めることに専念したいと思います。4月からはのんびりと再スタートです。 ♥♥♥

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