阿部監督の檄

 巨人は猛暑の中、地獄の9連戦を5勝3敗1分けで乗り切り、首位広島に1ゲーム差と好位置につけています。ここ最近の阿部監督を見ていて、その厳しさと優しさを垣間見る気がしています。まさにアメとムチを上手に使い分けているな、という感じです。優れた指導者はこうあらねばなりません。私が感じた4つの事例を取り上げます。

①ケースその1 浅野翔吾

 阿部慎之助監督が4―0で勝利した8月14日の阪神戦(東京ドーム)後、「8番・右翼」で先発出場し、今季初ヒットを劇的な1号満塁ホームランで試合を決めた浅野翔吾外野手(19歳)を絶賛しました。0―0の4回二死満塁でこの日2打席目を迎えた浅野選手は、何としてもランナーを返したいと思い、バットを指1本短く持って、相手先発・及川投手の投じた3球目、129キロのスライダーを完璧に捉えると、打球は放物線を描きながらなんと左翼スタンドへ。衝撃の一発で試合を大きく動かすと、ベンチの阿部監督も思わず満面の笑みを浮かべながら両手を叩きました。ベンチに戻るとナインから手荒く祝福され、息を荒らげながら照れ笑いを浮かべた浅野選手「開幕一軍でスタメンでも使ってもらったのに全く打てずに迷惑ばかりかけていたので(9打数0安打)、2回目の昇格の初安打で本塁打が打てたのはめちゃくちゃうれしいです」と喜びを爆発させました。これには阿部監督「いやあ、びっくりしました。打った瞬間はどうかなと思ったんですけどね。角度は良かったんですけど。でも完ぺきな本塁打でしたね」と感嘆。試合前練習中には言葉も交わしたという指揮官は「『打てなかったらすぐサヨナラするぞ』って言って。それは冗談だけど(笑い)。『思い切ってやれ』と、そういう意味も込めて言った」と裏で〝阿部節〟でゲキを飛ばしたことも明かしました。球団の高卒2年目(19才8ヶ月)でのグランドスラムは、2008年の坂本選手(19歳3ヶ月で最年少)以来です。夜の食事を終えて8時以降、毎日一人でもジャイアンツ球場にやって来て黙々とバットを振っていたそうですよ。ニューヒーロの誕生です。

②ケースその2 大城卓三

 阿部慎之助監督が、4―0で勝利した8月14日の阪神戦(東京ドーム)後、8回に走塁死となった大城卓三捕手(31歳)に「宿題」を課しました。4―0の8回二死走者なしの場面から右前打で出塁した大城卓。続いて打席に入ったモンテスが左翼フェンス直撃の二塁打を放つと、一塁走者・大城卓は激走を開始。三塁コーチャーの亀井コーチが大きく腕を振って本塁生還を指示すると、必死の形相で三塁も蹴って本塁へ突入しました(何せ足が遅い!)。ヘッドスライディングの結果はわずかにタイミングが遅れてタッチアウト。阿部監督はリクエストを要求しましたが覆らず、追加点はなりませんでした。これに阿部監督「もう3回ぐらい間一髪でアウトになってるから。あと1歩のリードだったり、そういうところが僕は大事だと思うし、足が速い遅いの問題じゃないと思う。できることをどうやるか、それで自分が喜ぶのか、『遅い』って言われて恥をかくのか、それだけだと思います」と走塁意識のさらなる向上を求めました。私はこの3回のシーンを中継で全部見ていますが、①リードが小さすぎる、②スタートが悪い、③足が遅い、と分析しています。を改善すればいいのです。それでもこの日はスタメンマスクをかぶって、先発の戸郷を2試合連続の完封勝利に導くなど、守備で大きく貢献。阿部監督「本当に、大城もナイスリードだったと思います」とアメとムチを使い分け称賛しました。

③ケースその3 高梨雄平

 8月13日東京ドームの試合は、一時4点差を追いつきながらも5―8で敗れた阿部慎之助監督は、七回に決勝打を浴びた高梨投手に怒りをにじませました。 「なんか代えてくれるんじゃねえかという感じで投げているようにしか見えなかったからね。ケツを拭かせました」と指揮官。七回1死から原口を四球で歩かせ、近本には右翼線二塁打を浴びた。中野には四球を与え満塁に。ここで渡辺に左中間へ走者一掃の3点二塁打を浴びました。七回から登板した4番手、高梨は先頭打者を打ち取るも四球、二塁打、四球で満塁と走者をため、右打者の渡辺に初球のツーシームを捉えられ、走者一掃の3点二塁打を許しました。確かにベンチの方を見ながら、眼が泳いでいたように感じました。自身で招いたピンチの処理を課した指揮官でしたが、裏目に出てしまいました。ここまで登板36試合で、何度も苦しいチームを救ってきた変則左腕にだからこそ向けられた〝愛のムチ〟でした。高梨投手本人は「(阪神打線に)いいアプローチをされて普通にやられました。次、頑張ります」とリベンジに燃えています。

④ケースその4 中山礼都

 8月10日バンテリンDの中日戦は2―0で勝利しました。中山三塁手は初回2死から、中日・カリステの三ゴロを余裕をもって捕りながら、一塁へ少しそれたワンバウンド送球。これはうまく捕球した大城一塁手に助けられました。2回にも、先頭の細川のゴロを後に下がって処理しますが、一塁への送球が高く浮いてセーフ(記録は内野安打)にしてしまいました。 「まあね、誰が見てもアウトにしてほしいのに、普通にセーフになっちゃうからね。やっぱりしっかり守ってほしかったし、ピッチャーに迷惑かけるんでね。決して難しい打球処理じゃなかったと思うので。そこらへん、まだ1軍では使えないのかなって僕が判断して、すぐに代えました」と、これには阿部監督も怒り心頭。好機の打撃でも2連続三振となった直後の4回裏の守備から、スパッと中山選手をベンチに下げました。すぐさま二軍降格となりました。ベンチで失意の表情で戦況を見守る22歳にすっと寄り添ったのが、35歳の坂本選手でした。坂本中山の隣に立つと、優しい表情で話し込む様子が見られました。中山坂本の目をじっと見ながら真剣な表情で頷いていました。坂本は今季、開幕から三塁手として出場。この試合でいえば、中山にスタメンを“奪われた”形となりましたが、落ち込む後輩に話かける姿には、「後輩に対して本当に昔から一生懸命」「勇人は頼りになる」「優しい表情にグッとくる」といった反応が寄せられました。当の中山は8月12日、ジャイアンツ球場で行われたイースタン・リーグの千葉ロッテマリーンズ戦に、「7番・三塁」で先発出場して、3打数1安打2打点1HR。3号2ランホームランを放ち、2試合連続安打を記録。打率.342と打撃好調で、悔しさをバネに1軍再昇格へ再アピールしています。

 その他、先発を任されながら初回に四球連発・本塁打と5失点したルーキー・双木投手。それを受けてリリーフして4点取られたサブマリン・高橋投手も即刻二軍行きを命じられています。ただ阿部監督の感心する点は、失敗した選手にも名誉挽回のチャンスをすぐに与えているところを、何度も目撃してきました。♥♥♥

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