ソニーの魅力

 現在の「ソニー」はもともとは東京通信工業」という社名でしたが、1955年のトランジスタの米国輸出を機に「sonic=音」「sonny=小さい坊や」を組み合わせた社名に変更しました。ウォークマン、トリニトロンプレイステーションなど夢のある製品を次から次へと届けてくれたのはもうずいぶん前になってしまいましたね。成功に酔いしれて、アメリカ合理主義の影響からか、新たな技術への目配りや執念を欠いたために、創業当初の技術屋の「志」が薄れてしまったことで、一時元気がなくなり、凋落傾向にありましたが、最近は再び活気が戻ってきたようですね。ソニー「失敗の積み重ね」で、数々の「世界初」を成し遂げた会社です。誰もやったことのないことに挑戦すれば当然失敗はつきものです。例えば、テープレコーダーの開発で、テープ部分に磁気成分を塗るテストでは、1万種類以上の方法が試されたと言います。高いハードルを何としてでも超えて夢を実現したい、という技術者の執念が感じられます。このような志の高い失敗は、一生の財産になるわけです。こうした経験を共有して急成長した会社がソニーだったわけです。誰もやっていないことをやる」、それが創業者・盛田昭夫・井深 大さんの信条でした。あくまでもパイオニアの道にこだわったのです。

▲私が愛用するウォークマン

 ウォークマン」以来、私はソニーの大ファンです。ワクワクする商品を出してくれる期待感がある会社で、高いハードルを越えてでも夢を実現したい、という進取の気性にあふれた会社でした。ソニーの創業者、井深 大さんのお別れの会(葬式)で、友人の江崎玲於奈(ノーベル賞受賞者)さんが語った言葉が忘れられません。「古きをたずねて新しきを知る、という言葉が『論語』にあるけれども、彼は一貫して未来をたずねた。それがソニーという進取の気性に富む会社を作り上げた。」

 そのソニー社内で、密かに受け継がれる「逆接のビジネス金言集」があるよ、と人から教えてもらって取り寄せて読んだことがあります。「ウォークマン」を開発したソニー伝説のアイデアマン大曽根幸三元副社長の実体験から生まれた、ヒット作を生み出す秘訣、リーダーの心構えをまとめたものです。元日本経済新聞社論説委員の石田修大『急ぎの仕事は忙しいヤツに頼め ソニー副社長・大曽根幸三の成功金言53』(角川SSC新書)がその本です。面白かった。実に面白い!一見すると厳しそうに見えるものや皮肉の利いたものもありますが、大曽根さんには「腹を据えて自分が責任を取る」という前向きの覚悟が感じられます。思わずニヤリとさせられるものもたくさんありました。

◎「新しいアイデアは上司に内緒で作れ」

 会社から言われたことだけやっていても、新しいアイデアは生まれません。自分のアイデアを信じるならいちいち上司の許可を得る必要はない。内緒で作って見せてやれ。それでダメなら、俺の所に持ってこい、と励ます上司がいました。こういった社風が世界初の商品を続々と生み出したのでしょう。

◎「失敗は闇から闇へ葬れ」

 誰も成し遂げたことのないことに挑戦すれば失敗はつきものです。志の高い失敗は一生の財産にもなります。同じ職場で経験として共有して次の成功に生かすべきものです。自分で責任を取りたくない意気地のない上司のために、ヤル気を萎縮させる必要はありません。失敗は闇に葬って次のアイデアを考えるべきです。

◎「市場は調査するものではなく創造するもの」

ソニーは全く新しいものを作っているのです。市場調査で誰も想像すらしない新商品が分かるのなら、商品開発は調査会社に頼めばいい。「売れる可能性ゼロ」という市場調査で、ウォークマンという大ヒット商品が誕生しました。

◎「プロは乾いたタオルからでも水を絞る」

 設計者が「もうこれ以上、小さくできない」と泣き言を言い出した時に、「室内の湿度はゼロではないので、遠心分離機にかければ、多少の水分は絞り出せる。“やり方”を知っていて、現実にできるのがプロだ」とハッパをかけて、世界最小のウォークマンが実現し、世界最小のビデオ付きカメラが開発されました。「できない」と思った時こそが出発点だということです。

◎「急ぎの仕事は忙しいヤツに頼め」

 明日までにまとめなければならない資料を暇な人間に頼むと、馬鹿丁寧に仕事を進め、いつまでたってもまとまりません。忙しい人間に頼むと、「今日の午後しか空いてないんです」と言いながら、きちんと仕事を終わらせる。他の仕事に影響するからです。そもそも優秀だからこそ、仕事が集まって忙しくなるのです。このことは全ての現場・組織に共通する金言です。

◎上司がファジーだと部下はビジーになる

 上司に決断力がなければ、部下は本来やる必要のない仕事をさせられ、無意味に忙しくなる。奇人、変人を活かし、度量の大きさで、様々な人材を使いこなしてこその管理職です。どこの組織でも同じですが、全てはトップに立つリーダー次第だということです。

◎何でも半分にできると信じろ

 「大きさとコストは半分に、利益は倍に」ソニーの鉄則です。5%コストを下げろ、と言っても担当者は資材の取引先に5%何とかならないかと電話するだけで、結局は3~4%削減に止まってしまいます。半分にしろ、と言えばどうしても根本的な設計を一から見直さざるを得なくなり、3~4割も安く作ったり、小さくなったりもします。大切なのは意識を高め、腹を据えることなのです。

  著者の石田さんは、「大曽根さんはソニーで、下積みから経営まで経験。その実体験から生まれた言葉は、一見、厳しいものや皮肉が利いたものもあるが、根底に積極的な明るさがある。昨今の管理職、経営者は失敗を恐れて、なかなかメッセージを発しないが、『大曽根語録』には『腹を据えて自分が責任を取る』という覚悟がある」と絶賛しています。「井深大はソニーの行くべき方向を示し、大曽根幸三は現場でその方法を示した」と言われます。ものづくりが難しい局面にさしかかっている現代だからこそ、大曽根さんの言葉を反芻してみるべきではないでしょうか。リーダーとしての「知恵」と「勇気」を与えてくれる金言集でした。♥♥♥ 

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