本質は末端にあり

 故・開高 健(かいこうけん)さんが「物事の本質はえてして中心よりも末端に露呈されるものである」だから、たとえば「人の言葉を聞くときは、さりげなく、何気ない、別れ際の一言半句にこそ耳をたてなければならない」とおっしゃったことがあります。コナン・ドイルのあの名探偵シャーロック・ホームズ「ほんの細かなことこそ、何より役立つものだ」と言っています。シャーロック・ホームズ物は大好きでよく読んでいるのですが、誰もが一蹴してしまうような細かなことにこそホームズの鋭い眼は向けられており、その細かなことこそが、事件解決のために何にも増して役に立つことが数々の事件で分かります。彼は些細なことにこそ、物事の本質がこぼれ出ることを知っていたのですね。

 私の友人に、テレビ映画『刑事コロンボ』の熱狂的なファンがいて、コロンボ刑事のうんちくをいろいろと聞かされたものですが、ピーター・フォーク演ずるコロンボ刑事のヨレヨレの風采とおとぼけ具合シーンが印象的でした(吹き替えの小池朝雄さんの声もぴったりでしたね)。コロンボ刑事は(観客だけが知っている)「犯人」に事情聴取にやってきて、一通りのことを事情聴取して、お礼を述べてスタスタと帰っていこうとします。と、見せかけて、途中でフッと立ち止まり、ヒョコヒョコ引き返してきて、「実はウチのカミさんがね……」と、事件とは関係のないことをさりげなく話しかけます。ボロを出さずにしてやったりと一安心していた犯人は、一瞬ドキッとするのですが、「別にあなたを疑っているわけじゃござんせんよ……」といった調子のコロンボの話しぶりに、またすぐにホッとして嬉しくなり、言わなくてもいいことまでついポロッとしゃべってしまいます。その一言半句を、コロンボ刑事は見逃すこと亡く、敏感にキャッチして事件の本質に迫っていくのです。全ての事件に共通するこの常套手段はまさに、「人の言葉を聞くときは、さりげなく、何気ない、別れ際の一言半句にこそ耳をたてなければならない」という開高さんの言葉の実証版と言えましょう。

 もちろん、コロンボ刑事「ウチのカミさんが……」※の連発は、あることを思い出したふりをして、犯人にかまをかけているのです。ドラマの個性を印象づける名セリフとなりましたが、一種の愚かさ・ご愛敬を強調させることによって、後の事件解決に至る辣腕ぶりを一層際立たせようとする演出の妙なのですが、「物事の本質はえてして中心よりも末端に露呈されるものである」との至言を裏付けるものでしょう。

ちなみにこれを「ウチのカミさんがね……」と訳したのはアテレコ担当の額田やえ子さんでした。やたらと「My wife……」という台詞が出てきます。これはアメリカの刑事物では珍しいことです。周りを見回して、戦中派で、要領が悪く、誠実で奥さんを愛しているが微かに畏怖の念を抱いていそうな男性が奥さんを何と呼んでいるか?かつ、コロンボを演じる小池朝雄さんにも合うのは?ということで、「ウチのカミさん」になったと言います。額田さんいわく「私はカミさんという言葉が好きだった。江戸時代から生き続けてきた言葉で、愛嬌が会って、くだけていて、聞いていて気持ちがいい。」たしかに!!「畏怖の念」(本音は単なる恐れかも?)も感じられるのがなおいいんです。

 「本質は細部に現れる」ことを実証するべく、私たちの「人間性」も次のような細部に現れることが知られています。やはり開高さんの言葉は真実でした。♥♥♥

1.性格は「顔」に出る
2.生活は「体型」に出る
3.本音は「仕草」に出る
4.美意識は「爪」に出る
5.清潔感は「髪」に出る
6.気配りは「食べ方」に出る
7.芯の強さは「声」に出る
8.ストレスは「肌」に出る
9.落ち着きのなさは「足」に出る
10.人間性は「弱者への態度」に出る

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