何かで成功した人には、話を聞こうと人が群がってきます。成功者の一言半句に耳を澄まします。失敗者は誰も相手にしません。見捨てられたり、あざけりの対象になります。よくて「かわいそうに」と、同情されるのが関の山です。一体どちらの話が参考になるのでしょう。私はどちらも参考にしますが、頂上にたどり着いた成功者の話よりも、途中で挫折した失敗者の話に魅力を感じます。なぜなら、成功者の方法は固有ですが、失敗者のそれには共通項が見られるからです。これが役に立つ。失敗した原因を知り、それを避けるようにすれば成功へたどり着く確率は高くなります。成功したければ、失敗者の話こそ聞くべきなのです。私たちには他人の失敗の経験から学ぶという能力があるのです。
「他人の経験から学ぶとき、それが徳からなる善行、成功した事柄であるよりは、失敗である場合のほうが、より多くのものを学べるものだ」(ロングフェロー)
例えば、「しくじり先生」というテレビ番組が個人的にすごく印象にあります。その番組の中では、失敗した有名人が、当時の自分のスキャンダルや失敗談を赤裸々に告白し、涙を流したり、後悔をにじませながら当時の内幕を逐一話してくれます。そして失敗しないための心得を先生として語ってくれます。これが強烈に面白いんですよね。ある意味「旬」を過ぎた有名人がそのことを自虐的に意識しながら出演し、面白おかしくエンターテイメントとして作ってくれるから安心して面白がれるという部分もあります。またスターから転げ落ちてもひたむきに活動している姿を見て勇気をもらえます(失敗して自殺しちゃった、という後ろ向きな終わり方でない点がエンターテイメントとてもとても優れていると思います)。
スティーブ・ジョブズが、2005年にスタンフォード大学卒業式で行った伝説のスピーチの中で語られたジョブズの3つの経験談は、大学中退、アップル会長の解任、死への直面など、失敗や苦難に遭遇し、それを乗り越えた話でした。ハリー・ポッターシリーズの著者として有名なJK・ローリングが、2008年にハーバード大学卒業式で行ったスピーチでは、本も映画も大ヒットして、今や経済的にも大成功を収めたJK・ローリングですが、本を出すまでは、ホームレス寸前の厳しい生活を余儀なくされ、そんな中で出会った人の優しさや、苦境の中で気づいた自分の才能が、その後の人生を支えてくれたという話でした。ローリングが語る「失敗の恩恵」についての話は、心に響きました。アメリカの超人気TV司会者のオプラ・ウィンフリーが2013年にハーバード大学卒業式で行ったスピーチでは、自身の経験を語りながら、失敗に正面から向き合って、その意味を語るスピーチでした。オプラが堂々と自分の失敗を語るのを見て、「よくこんな話ができるな。凄いな」と思いました。そして、「アメリカでは、なぜ、優れたリーダーは、これほどまでに堂々と、人前で自分の失敗を語ることができるのだろう?」という素朴な疑問を持ちました。日本では、そんな話はあまり聞きません。それどころか、失敗談を語るのは、無能であることを示すようなものであり、リーダーが人前ですることではないと思われがちのような気がします。失敗談と言っても、痛い目にあって終わった話ではなく、それをどうやって乗り越えたか、そこから何を学んだのかをメッセージとして伝えるもので、スティーブ・ジョブズの伝説のスピーチをお手本にして行うものです。日本でも、失敗談が人を励まし勇気づける点では同じですが、その絶大な効果を実感し、自ら実践する人は、まだ多くないのかもしれません。
尊敬する出版プロデューサーの川北義則(かわきたよしのり)さんは、100万部以上のベストセラーを3回経験しておられますが、それに共通するものは何だったかを考えてみたところ、どれも「そんなに売れるとは思わなかった」が共通項でした。以前の成功体験をなぞろうとするとだいたい失敗します。なぜ失敗するかといえば、本のような商品の場合、時代の潮流に、いつ、どんな形で乗れるのか、全く分からないからです。経験はいつも結果論で語られるしかないのです。もし経験を重視するのなら、売れなかった本の経験(失敗)を点検する方が参考になるとおっしゃっておられました。
新しいことへのチャレンジには、必ず失敗がつきまといます。そんな中で、私たちにとって大事なことは、失敗を恐れずに、勇気を持って挑戦すること。もし、やむを得ず失敗した時は、そこから教訓を学び、次の挑戦に活かすこと。そうすることで、大きな成果をつかみ取る。そんな姿勢が求められているのです。
松江北高の進路指導部より毎年「進路だより」が発行されます。こ
れは大学に合格して卒業していった生徒たちの合格体験記です。私はこれを読むのが大好きで、毎年心待ちにしていました。生徒一人ひとりの体験記をマーカーを持って、マークしながら面白く読みました。やはり合格した生徒たちはいいことを言っています。さらに面白いことに、多くの人が言っていることがおんなじだということです。「英語は単語だ」「受験は団体戦だった」「繰り返しが重要だ」「仲間の大切さを思う」「模試の見直しで力がついた」「図書館の利用」「1時間の授業の
大切さ」などなどです。私は在校生たちにも、この本をじっくり読むように薦めていました。「賢者は歴史に学ぶ」(ビスマルク)の精神ですね。自分の受験勉強を考えるうえで、何よりもいい「参考書」だと思っています。いいことはどんどん真似をすることです。私が話した言葉が出てくるたびに、ニヤリとしながら読ませてもらっています。「運命の女神はあなたの一番弱いところを突いてくる」という、私が紹介した言葉に関して、ある生徒はこんなことを書いていました。
私がこのことを痛感したのはなんと、センター本番でのことでした。地理で、あの範囲が出たら終わる(けど多分出ないだろう)と思っていた範囲が、見事に出ました。本当に痛かったです。弱点をそのままにしないでください。弱点の科目や分野を見つけて克服する為には、模試の復習をよくしてください。模試で大事なのは志望校合格可能性ではなく、自分の苦手分野を見つけて改善することです。
大いに参考になりますね。逆の観点から北九州予備校が出している「不合格体験記」も大いに参考になります。失敗話に注意深く耳を傾けると、受験で頂上までたどり着けなかった人たちの話には共通項が見られることが分かります。私はそんな思いから、浪人生の卒業生の体験を教室で語ってもらっています。教員の100の話よりも、彼らの1の話の方が説得力があるからです。そしてその話をまとめてもらって送ってもらい、「あむーる」に記録して、生徒達に配付してきました。ちょうど今9月号と10月号を出したばかりですが、不思議な共通項が浮かび上がってきました。「無遅刻無欠席を心がける」「すぐやる・必ずやる・できるまでやる」「伸びなくても諦めない」「1時間の授業の大切さ」「模試の見直し」「志望校へのこだわり」「受験は団体戦」「仲間の大切さ」「丸暗記からの脱却」など、まるで口裏でも合わしたように、語ってくれています。
成功者の話からは元気と勇気をもらい、失敗者からは方法論を学ぶ。両方から学ぶのがよいと思います。♥♥♥




