トランプの見事な演出

 昨年大きな盛り上がりを見せた米国の大統領選挙は予想に反してトランプ候補の圧勝(400万票の差!)に終わりました。今回の一連の報道を見ていて、マスメディアのいい加減さにはうんざりでした。前󠄂日まであれだけ「大接戦」「予測不能」「トランプ若干リード」「ハリスが逆転か?」とあおっておきながら、いざ終わってみると、トランプの大勝利は当然だった、といったしたり顔で報道するニュース番組や識者たち。「おい、違うだろ!!」と思わず突っ込みたくなりました。対立候補のことを“You’re fired. Get out of here.”などと口汚く罵ったり、“low IQ candidate”とこきおろしたりと、トランプ候補の下品すぎる言葉遣いはどうしても好きになれませんでしたが(一方のハリス候補の発言は「Word Salad」(言葉のサラダ)とこきおろされました)、。やはり今のアメリカのひどい経済状況が、打開を期待する国民の後押しをしたのでしょうね。さて、就任したトランプ大統領、その「スピード感」「有言実行力」はいい意味でも悪い意味でも感心させられます。どこかの総理大臣にも見習ってもらいたいものです(「言ったこと全てを実現するのは民主主義政党がやることではない」などと変節を正当化しています)。トランプ氏の自伝的映画にあったということですが、若かりし頃「気弱な青年」だったトランプ氏に、辣腕弁護士が「勝利のための3つのルール」を教えたそうです。

 ①攻撃あるのみ ②非を認めるな ③劣勢でも勝利を主張して負けを認めるな

ということです(1月18日付「日本経済新聞」朝刊)。これまでのトランプ氏のやり方・行動を見ていると実に納得できることですね。よくよく考えてみると、ロシアのプーチン大統領なども同類の人間です。とにかく「自分が正しい」ということを主張し続けます。今後はどうなるかは分かりませんが、トランプ氏にしろ、プーチン氏にしろ、そのやり方で権力の頂点に上り詰めたわけです。

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 ただ昨年のキャンペーンで一つだけ私が感心したことは、トランプ陣営の秀逸なギャグ、ユーモア精神、これは実に見事でした。

 米国共和党のトランプ大統領候補が、突如、選挙キャンペーンの一環として主要激戦州のペンシルベニア州のマクドナルド「アルバイト」をしたことが大きな話題になりました。ドライブスルーの窓口に立ったり、フライヤーでフライドポテトを揚げるなどの仕事を体験しました。これは対立候補の民主党のカマラ・ハリス候補が、若い時に「マクドナルドでアルバイトをしていた」と発言していたものの、ハリス候補がそこで働いていたという証拠を彼女の陣営が示していないことや、公式の記録にその詳細が記載されていないことを根拠に、彼女の発言は嘘だと主張しました。ハリス候補がバイトしていたのをトランプ候補「フェイク」と主張したのも、自らわざわざ「アルバイト」したのも、自分こそが「庶民派」であることをアピールする狙いがありました。「私は今、カマラよりも15分長く働いた。彼女はここで働いたことがない」とドライブスルーの窓口で語りました。このパフォーマンスの狙いについては、激戦区ペンシルベニア州では、平日で投票に行きづらい労働者層が多く、その層に向けたハリス候補“マックバイト発言”を打ち消し、自ら実際にやってみせることで投票をアピールしたものでしょう。いくら「やらせ」とはいえ、ここまでやる対応力が実に見事だと感じました。

 さらには、共和党のトランプ候補は、波乱に満ちた選挙戦の最終盤に開く集会に臨むに当たり、一風変わった演出を施してみせました。集会会場は激戦州の一つ、ウィスコンシン州のグリーンベイ。専用機を降りたトランプ候補は、蛍光オレンジと黄色が鮮やかな蛍光色の安全ベストを着て、ごみ収集用のトラックに乗り込みました。トラックの側面には大きな文字で「TRUMP」と書かれています。その下には彼のスローガンのMake America Great Again!とあります(通称MAGA)。その直前にトランプ候補支持者のコメディアンが、集会を盛り上げるジョークとして、アメリカ自治領のプエルトリコを「ゴミの島」と呼びました。普通なら陣営に大打撃となる失言です。ところがそれを受けたバイデン大統領が、トランプ候補の支持者を「ゴミ」と呼ぶような発言をしたことを逆手に取って、ごみ収集の作業員を思わせるベストを着用し、特製のごみ収集車に乗ってカメラの前に現れるパフォーマンスを披露したのです。「私のごみ収集車はどうだ?このトラックはハリス氏とバイデン氏に敬意を込めたものだ」と皮肉発言をしました。このごみ収集用トラックに乗ることは、支持者の一人から提案されたといいます。トランプ候補は実車を即座に用意した人々の仕事の早さに驚きを隠さず、「非常に有能な人たち」と称賛しました。トラックの運転手の顔が「最も人気があった時期のケーリー・グラントに似ていた」とも言い添えました。一方で、何台ものカメラが撮影する中、高い所にあるトラックの座席に上っていくことには一抹の不安も覚えたと本人が明かしています。もしうまく上れなければ非常に恥ずかしい思いをすることになり、集まった記者たちから認知機能や身体能力に問題があると言われるのも覚悟しなければならなかった、と振り返りました。いずれにしても 本来なら自陣の大きな痛手となったであろう発言を、逆手にとって逆に自陣の大きなポイントに変えてしまった手法は、お見事と言うほかはありません。しかもバイデン大統領の失言の翌日に、早速このような切り返しを見せたその素早い対応力には脱帽です。♥♥♥

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