松下幸之助と紙の帽子

 55年振りの「大阪・関西万博」が鳴り物入りで開幕しましたね。大型連休に合わせて多くの人でにぎわっています。一般来場者は開幕13日目で100万人を超え、集客は2005年愛知万博を上回る好調のペースのようです。会期中、これから暑い季節を迎えることから、熱中症対策が叫ばれています。暑さ対策にパラソルや冷却用ミストも設置されました。日陰が少ない人工島の会場は広く、夏の猛暑や梅雨時には過酷な環境になりそうです。かつて昭和45年(1970)に3月から6ヶ月間開かれた「大阪万国博覧会」に、松下グループが出店したパビリオン「松下館」は、会期中、連日の盛況で760万人という大勢の入場者でにぎわいました。松下電器は大きな池を造って、その中に法隆寺夢殿を模したパビリオンを出展したのでした。

 開館まもないある日、次のようなことが起こっています。夏の炎天下、入場者の整理のため、入館待ちをしている人々の行列を映し出す事務室のテレビ画面に、どういうわけか松下幸之助(まつしたこうすのけ)さんご本人の姿が映っていました。「いつも来られるときは事前の連絡があるのに、いったいどうしたことだろう?」と驚いた副館長が、あわてて飛んでいって、「どうされたのですか」と、通用口からの入館を勧めました。しかし、幸之助さんは言いました。「この暑い中、長い列に並んでいる方々を見て、申し訳ない、すまないと思った。いったいどれほどの時間で入れるのか、いま自分で計っているところだから、心配しなくていい。」そのまま2時間ほどかかって入館した幸之助さんは、帰ってくると、早速その責任者に次の三つのことを指示しています。①「もっとスムーズに列が進むための誘導方法を考えるように。」②「所々に日陰を作るための大きな日傘を設置するように。」③「並んでくださる方々に紙の帽子を配るように。」この三つは早速に実行されました。館内への誘導の仕方が改善され、野点(のだて)用の大日傘を置いて日陰を作り、入場待ちの行列の人々全員に紙の帽子を配りました。さすが「経営の神様」です。この指示が、他のパビリオン担当者から「さすが、松下さんは商売上手だ、この会場を商売に使うとは」と囁かれたそうです。その理由は、三つ目の指示の紙の帽子「松下電器」とか「National」と印刷されていました。万博開催中、「松下館」には760万人の人々が訪れ、万博会場のそこら中にこの帽子をかぶった人で溢れたからでした。無言の宣伝効果でした。

 自らが足を運んで、一般の人と同じ目線で体験するのが松下さんの手法です。「百聞は一にしかず」という言葉を、松下さんは「百聞は一にしかず」と呼び、現場で体験することの重要性を訴えていました。「現場、現物、現人」にこだわり、見る、触れる、聞く経営を行うことを、社員と自らに徹底する姿勢を貫き通しました。現場を自分の目で見たからこそ生まれた、松下さんならではの来場者の命を守る知恵でした。♥♥♥

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