決意する

 昭和40年頃、京都の中小企業経営者たちが集まった講演会に招かれた故・松下幸之助(まつしたこうのすけ)さんが、「ダム経営のすすめ」についてお話しをされたことがありました。「ダム経営」というのは、川にダムを作り水を貯めるように、企業も余裕のある経営をしよう、という松下さんの持論でした。

 堰き止めたダムの水によって干ばつがしのげるように、会社経営にも資金や設備あるいは在庫といったさまざまな面に「ダム」があれば余裕のある経営ができる、というのが松下幸之助さんの「ダム経営理論」です。講演終了後、質疑応答の時間となりました。400人ほどいた経営者の中の一人が、松下さんに質問します。松下さんのおっしゃるとおり、余裕があればそれにこしたことはないが、我々はその余裕がないから困っているのだ。どうしたら余裕が出来るんか、それを教えて欲しい」 すると松下さんは少し考えた後で、こう答えました。そうですなぁ。簡単には答えられませんが、やはりまず大切なのは、ダム経営をやろうと思うことでしょうな」この答えに、会場では聴衆から拍子抜けしたような失笑がもれます。もっと具体的な回答を期待していた経営者たちにとっては、「な~んだ」ということだったのでしょう。

 しかしその時、思わず身体に電流が走り、身の震えるような感動と衝撃を受けた人物が会場にたった一人だけいました。故・京セラ名誉会長稲盛和夫(いなもりかずお)さんです。当時の京セラは、まだ創業から数年しか経っておらず、稲盛さんは今後の経営に大きな悩みを抱えながら、この講演会に参加していたのでした。そうか、まず思うこと、信じることが何にもまして肝要なのだ。その思いが経営に反映されるのだ。松下さんも今までそうしてきたからこそ、今日の松下電器があるのだ…」「そのとき、私はほんとうにガツンと感じたのです。何か簡単な方法を教えてくれというような生半可な考えでは、経営はできない。実現できるかできないかではなく、まず『そうでありたい、自分は経営をこうしよう』という強い願望を持つことが大切なのだ、そのことを松下さんが言っておられるんだ。と、そう感じたとき、非常に感動したんです」 やはりすごい人は違いますね。

 稲盛さんは、松下さんのこの一言によって、経営に対する信念を根本から思い直したと言います。400人の経営者が同じ話を聞いています。しかし、そのように受け取った人はたった一人しかいなかったと言ってもいいでしょう。稲盛さんには、そのように受け止めるだけの力量があったということです。この後の京セラの飛躍的な発展は、改めて説明する必要もないでしょう。

 私は、何ごとによらず、それをなし遂げるために最も大切なことは、まずそのことを強く願うというか、心に期することだと思うのです。なんとしてもこれをなし遂げたい、なし遂げなければならないという強い思い、願いがあれば、事はもう半ばなったといってもいい。そういうものがあれば、そのための手段、方法は必ず考え出されてくると思います。    ―松下幸之助『経営のコツここなりと気づいた価値は百万両』(PHP)

 松下さんは言います。「なあ、きみ、人間の心は広がればなんぼでも広がっていく。縮まればなんぼでも縮まって、しまいには自殺までしてしまうんや。それはどの間を大きく動くわけやね。だからどんどん知恵が出ておるときには、非常にいい知恵が出る。しかし知恵が閉ざされてくると、どんな知恵も出ない。それで失敗してしまう」そのような特質を、人間の心は持っているのです。心が変われば行動が変わり、成果が変わります。さて今、私たちの心は、風の音を聞いても悟ることができるほど、問題意識を持っているでしょうか?活き活きと動いているでしょうか?

 松下さんは、「何としても二階に上がりたい、どうしても二階へ上がろう、この熱意がハシゴを思いつかせ、階段を作り上げる」と、「熱意」の大切さを語っていました。今できないものを何としてでも成し遂げようとすることでしか、高い目標を達成することはできないのです。

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生徒八幡先生、僕、「共通テスト」で100点を取るにはどうしたらよいでしょうか?―――八幡そうですなあ。簡単には答えられませんが、やはり、まず100点を取ろうと思うことでしょうな〔笑〕

 最近ある公立高校で、難関大学合格に向けた指導のヒントを教えていただきたい、という講演を先生方にしたんですが、これに対しても「そうですなあ。簡単には答えられませんが、やはり難関大学に合格させたいと思うことでしょうな」と答えます。♥♥♥

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