ハーバード大学への圧力

 今大きな話題になっているハーバード大学は、アメリカ最古の大学(1636年)です。東海岸の伝統ある名門私立大学8校で構成される「アイビーリーグ」の一つで、大学名は創立当時、財産の半分を学校に寄付した牧師のジョン・ハーバードに由来しています。世界トップレベルの研究施設、蔵書数に加えて、ノーベル賞受賞者161人をはじめ、世界的に著名な研究者や教授がそろっています。芸術・人文・社会科学・自然科学全ての分野で高度な教育を提供し、有能な人材を多く輩出してきました。学生は世界中から集まり、エリート学生同士のアカデミックな交流は刺激的で、最高の環境下で高度な力を養うことができるのです。

 アメリカのトランプ政権は、そのハーバード大学が、政権が要求した学生の取り締まり強化などを拒否したことを受けて、助成金の一部を凍結したと発表しました。さらにトランプ大統領は大学への税制上の優遇措置を取り消す可能性を示唆し、要求に従わない名門大学への圧力を強めています。コロンビア大学に対しても「ユダヤ系学生への嫌がらせに対応せず、高等教育機関の認定基準を満たしていない」と警告し、大学認定見直しの可能性に言及しました。4億ドル相当にのぼる助成金の契約を取り消しました。ハーバード大学を「見せしめ」として圧力をかけてきた政権はコロンビア大学にも矛先を広げ、他大学でも警戒感が強まっています。ハーバード大学では昨年、イスラエルの軍事作戦に抗議するデモが相次ぎ、一部でユダヤ人学生が嫌がらせを受けたことを受けて、トランプ政権から助成金の条件として要求されていた、学生の取り締まりの強化や、DEIと呼ばれる多様性などの推進をやめることを拒否したと発表しました。これに対し、トランプ政権は、助成金の一部を凍結したと明らかにしました。さらにトランプ大統領は、「ハーバード大学が政治的やイデオロギー的で、テロリストを支援する“病気”のような行為を推し進めるのであれば非課税資格を失い、政治団体として課税されるべきかもしれないと、大学への税制上の優遇措置を取り消す可能性を示唆しました。続いて外国人留学生の受け入れ資格を取り消そうとしています。ただし米連邦地裁は、トランプ米政権によるハーバード大学の留学生受け入れ停止措置を一時差し止める決定を下しました。現在学んでいる留学生のビザの取り消しも検討するとしています。徹底抗戦の構えの大学側と、大学への統制を強めたい政権との対立は一段と先鋭化しており、着地点は見えてきません。留学生は約6,800人で全体の約27%を占めており、今回の措置は、大学の財政を支える柱である留学生の締め出しを狙ったものと受け止められています。「政権が教育内容や教職員、学生への違法な統制を押しつけようとしている」と、ハーバード大学アラン・ガーバー学長は、政権の措置に強い懸念を表明した。「全米の留学生にとっても深刻な警告だ」とも述べ、訴訟を通じて対抗する姿勢を鮮明にしました。

 ハーバード大学トランプ政権による学生の取り締まり強化などの要求を拒否したことについて、オバマ元大統領は、「ハーバード大学はほかの高等教育機関にとっての手本を示した」と語っています。そして「ハーバード大学は学問の自由を抑制しようとする不法で強引な試みを拒否した」トランプ政権の対応を批判したうえで「知的探求や徹底した討論、そして相互尊重の環境からすべての学生が利益を得られるよう具体的な措置をとった。ほかの機関もこれに続くことを期待しよう」としてハーバード大学の対応を称えました。カリフォルニア州のスタンフォード大学は、学長などが「ハーバード大学が異議を唱えたのはアメリカの自由の伝統に基づいた行動で、この伝統は私たちの大学に必要不可欠で守る価値があるものだ」とする声明を出し、ハーバード大学の対応を支持しています。ニュージャージー州にあるプリンストン大学の学長は、ハーバード大学が発表した文書の一部を引用した上で「プリンストン大学はハーバード大学と共にある。力強い文書の全文を読むよう皆さんにすすめる」と投稿しました。

 一方、政権側は、パレスチナ自治区ガザ情勢を受けた学生の抗議活動を巡り、反ユダヤ主義への対応が不十分だとして、「反ユダヤ主義対策」の名目で大学の学内統制の強化を進めようとしています。大学側はこれを「表現の自由の侵害だ」として断固反対しており、双方の主張は平行線をたどっています。政権は4月以降、同大に対する補助金の凍結を段階的に進め、凍結額は22億ドル(約3,200億円)近くに達しました。

 政権は、アイビーリーグと称される米北東部の名門大を中心に、補助金を凍結するなどして圧力を強めていますが、中でもハーバード大学の動向は「試金石」として注目を集めており、同大は政権の要求に、「譲歩の余地はない」と政府の圧力に屈する気配は見られません。もちろんこの反抗ができるのは、豊富な資金力です。寄付金などからなる基金は、日本円にして数兆円規模にも及びます。日本の大学とは財力がケタ違いなんです。

 私たちの『ライトハウス英和辞典』(研究社)の編集顧問を務めていただいた尊敬するD.ボリンジャー博士(D.Bolinger)も、ハーバード大学で教えておられたこともあり、この報道には特に興味関心を持って見守っている八幡です。私が松江北高で教えた大谷はんなさんは、ハーバード大学大学院修士課程で勉強しました。松江北高生アメリカ研修の際もハーバード大学を案内してくれました。帰国した時に学校に訪ねてくれて、おみやげにいただいたハーバード大学のマグカップは大切に使わせてもらっています(写真下)。

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 エリック・シーガル(Eric Segal)原作の米国純愛映画の金字塔『ある愛の詩(ラブストーリー)』の舞台になったのもハーバード大学でした。日本では昭和46年に公開されて、館内にティッシュペーパーを持ち込んだ観客たちが号泣する大ヒット映画となりました。「愛とは決して後悔しないこと」の名セリフで知られます。流れてくる映画のテーマ音楽も忘れられない素敵なメロディーのものでした。私も高校生の時に見て感動したものです。大学ではそんなエリック・シーガルの小説にのぼせて読みまくったのもいい思い出です。著者のシーガルさんからじきじきにお手紙をいただいて、作品中の英語の疑問を教えていただいたことが忘れられません。♥♥♥

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