夜鳴きそば

◎週末はグルメ情報!!今週は夜鳴きそば

 国内外に96ホテルを展開するビジネスホテルチェーンの「ドーミーイン」。コロナ禍が明けた2023年からその業績は右肩上がりに伸びて、平均客室稼働率は8割を超えているそうです。私も時々利用することがあるのですが、このホテルの目玉が夜の「夜鳴きそば」(無料)です。

 こちらの代名詞の「夜鳴きそば」は、21時半~23時の間、何杯でも無料で食べられる「ドーミーイン」オリジナルの夜食です。23時以降にチェックインしたお客さんには、「夜鳴きそば」の味に近いオリジナルカップ麺「ご麺なさい」を希望があれば無料で渡しておられます。「夜鳴きそば」は出張族への認知度が高く、宿泊客の約4割が利用する人気サービスです。クセのないすっきりとした醤油風味が幸いして、全体の約2割を占めるインバウンド客にも好評だといいます。それも、慣れない手つきながら、スープやフォークではなく箸で食べています。つまり「夜鳴きそば」は、広告塔としての機能も果たしているのですね。

 そもそも「夜鳴きそば」とは、夜間に屋台で調理・販売されるラーメンのことです。「夜泣きそば」と表記される場合もあります。また広い意味で、深夜に食べるラーメン全般を指すこともあります。その由来には諸説ありますが、一番有力なのは、江戸時代の「夜鷹(よたか)そば」が語源とする説で、今から300年前の江戸時代中期に夜間営業する屋台の蕎麦売りが出現し、夜鷹と呼ばれていた街娼が好んで買っていたからか、「夜鷹そば」と呼ばれるようになりました。「夜鷹そば」は、客に到来を知らせるために屋台に風鈴を付けており、それがチリンチリンと鳴ることから「夜鳴きそば」と呼ばれるようになったというものです。屋台で販売していたそばは、時代を経てラーメンになり、風鈴はチャルメラのラッパに変わっていきました。もう一つの説は、屋台の居場所を知らせるチャルメラの音がもの悲しく泣いているように聞こえることから「夜泣きそば」と呼ばれるようになったというものです。以前島根県立津和野高等学校に勤めていた頃、毎週末になるとチャルメラの音を鳴らしながら軽トラックの「夜鳴きそば」が教員住宅の方に回ってくるのが楽しみだったものです。懐かしい!最近ではこんな光景はめっきり見なくなりました。

 「夜鳴きそば」の人気の理由はどこにあるのでしょうか?無料というお得感も強いのですが、支持されるのは圧倒的にその味だと思います。チャルメラ屋台を連想させるあっさり味の醤油スープは、深みがあり、オーソドックスな「中華そば」そのもの。レシピは、ニンニクなどの隠し味を加えた醤油ベースを、鶏ガラスープで割っています。トッピングは、メンマ、あおさのり、ネギとごくシンプルな構成です。ときには、「お月見の日の卵のせ」「エビ天をのせた年越しそば」など、季節のイベント的なレシピが登場することもありますが、基本は全国で同じ味、同じ盛り付けで提供しています。出張のビジネスマンのためのホテルであった「ドーミーイン」の宿泊客は、仕事を終えてホテルに戻って、部屋にこもったまま一人で過ごしていました。近隣に飲食店やコンビニがないため、深夜にお腹を空かせたこうしたお客さんのために、レストランの厨房を使って無料ラーメンを提供し始めたのが原点でした。すでに退職した当時の総料理長が大のラーメン好きだったことで、彼が「ドーミーイン」用に新たに開発しました。

 「夜鳴きそば」は、約16年前2009年のスタートからマイナーチェンジはしているものの、大きくは変えずに味を守ってきました。大切にしているのは、夜食として重すぎず、万人に愛される味です。最初は塩味や味噌味も試しましたが、最終的にはシンプルな醤油味に落ち着きました。鶏と豚を調理したスープはその総料理長の好みの味でもありました。スタート当初はチャーシューが入っていたり、まぜご飯を一緒に提供するサービスも行っていたそうですが、「重たい」「カロリーが高い」といった理由で、だんだんとなくなったと言います。材料は、朝食材料を卸している業者の協力を得て、鮮度や品質にこだわって仕入れています。そのため、無料サービスとはいえ、原価は決して安くはありません。その理由を問うと、「お客様のお喜びいただけるサービスになりますので、そこは考えずに何杯でも」と、こともなげに担当者。価格よりも顧客満足度を優先しているのです。

 そもそも、「夜鳴きそば」はどのようにして誕生したのでしょうか。ドーミーインでの提供スタートは2009年に遡ります。始まりは、リゾートホテルを展開する別事業「共立リゾート」にありました。「笑顔という第一印象でお客様にインパクトを与える」が接客の基本「共立リゾート」のホテルでは当時、入れ替わり二部制の夕食提供スタイルをとっていたといいます。すると17時、18時から食事をする「一部」のゲストが、どうしても夜中に小腹がすいてきます。そのため提供していたのが「夜鳴きそば」だったのです。しかし、これを「ドーミーイン」でも導入した理由は「小腹を満たすため」ではありません。「人と人との触れ合いの場の提供」に重きを置いたからです。「ビジネスマンは、どうしても朝食やチェックアウトまで、お部屋に閉じこもって過ごしがちですよね。夜鳴きそばをレストランで出すことによって、そのスタイルを変えられたらと。お部屋を出て、スタッフやそこに居合わせた人々と、ほんのひと時でも会話を楽しんでいただけるきっかけになるのでは……」という思いでした。「夜鳴きそば」が、無機質になりがちなホテル滞在に彩りを添えてほしい、そんな狙いがあったのです。しかしコロナ禍が襲い、突然にインバウンド需要が消失したように、浮き沈みの激しいホテルビジネス。これまで、経費のかさばる「夜鳴きそば」サービスをやめようという声は上がらなかったのでしょうか?「さきほどの原価の件もそうですが、お客様が喜んでいただけるサービスを提供することが、私たちの使命だと思っています。そして、どうせやるのであれば、“お一人様何杯まで”などと制限をつけず、原価や手間をいとわないのも社風です」(担当者)。

 元々「ドーミーイン」の歴史は1979年、受託給食事業から始まりました。その後、寮の経営に乗り出し、長期滞在が基本の寮に対して、「出張で1泊だけ使えないか」という社員からの要望があったことがホテル経営のきっかけになりました。体制を構築していくなかで、「非日常の堅苦しい場所」というよりも、「寮や家と同じ感覚で、ゆっくりとくつろげる場所」を目指すビジョンが固まっていきました。そうして、「我が家のような寛ぎと快適性」「ドーミーイン」のコンセプトになったのでした。

 これまで、ほぼ同じ味を15年間守ってきた「夜鳴きそば」。社員は出張の際ドーミーインに泊まり、味の確認も含めて必ず食べるそうです。毎回食べることで、些細な変化にも気が付けるからです。ただ、中には食べ過ぎて、すでに飽きているという人もいるとか。今後、何か新しい展開は考えているのでしょうか。尋ねると、「ゆくゆくは、さまざまな味を提供しようという声も社内にはあります。ただ、そうすると今喜ばれているコンセプトがぶれてしまう可能性もあります。ですから今はまだ、基本の醤油味を大切にしていきます」と担当者は説明しています。愛されるサービスは、簡単には変えないという矜持。そこにドーミーインのホスピタリティの原点があるのかもしれませんね。

 夜食ですから、翌日に響かないように、麺は半玉、スープはあっさり、具材もメンマ、あおさのり、ネギとシンプルな構成ですが、一つひとつの具材、麺からこだわって開発しており、全体のバランスもしっかりと考えています。ボリュームとしてはちょっと少なめですが、一杯で足りない場合は、おかわりも自由にOKの大盤振る舞いです。私の前に並んでおられたアメリカ人は二杯注文しておられました(係の方がこの英語を理解するのに四苦八苦しておられましたが)。私が食べ終わり会場を去る時には、長蛇の列が出来上がっていました。大人気ですね。

 ちなみに、この「夜鳴きそば」の他に「ドーミーイン」では、数々の無料サービスが受けられます。入館時にウェルカムドリンクが飲み放題です。お部屋ではウェルカムスイーツのサービスが。天然温泉のお風呂上がりには15~25時の間はアイスが、5~10時の間はヤクルトが提供されます。お風呂上がりの火照った体には最高のサービスです。♥♥♥

カテゴリー: グルメ パーマリンク

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