サンケイスポーツ「野村ノート」

 学生時代に使った読者も多いごく平凡な200ページの厚いA4判ノート、コクヨのCampusノートです。赤い表紙に油性ペンで太く「1993」。そこにびっしりと書き込まれていたのは、ヤクルト監督、野村克也さんによる一年間の戦いの記録でした。

劣勢ムードの中、初回広沢の3ランが有効だった。ナイン全員に勇気を与えた。4勝3敗、日本一。

 最後のページに記された日本一の喜びはたった2行の45文字だけ。野村克也さんが、監督として初の日本一をつかんだ1993年11月1日のことです。日本シリーズ第7戦で、ヤクルトは前年に3勝4敗で屈した王者・西武に雪辱を果たしました。初めての日本一の胴上げに「感謝、感謝、感謝です!」と声を張りました。その高揚感は、ノートの赤い文字からはうかがい知ることはできませんでした。

 野村克也さんは、2020年2月11日に、惜しまれながら84歳でお亡くなりになりました。東京都内の自宅には、野球理論の構築に生涯をささげた故人のノートが、文字通り「山ほど」残されていました。「1993年」はその一つで、内容はライバル球団の投手の詳細な分析でした。持ち球(球種ごとの特徴)、配球、投球時にわずかに見える癖などを、事前の分析に実際の対戦結果を赤字で書き込み、バージョンアップさせていました。

〝今日新たなクセが出ていた。すべてセットポジション ①サインが終わって顔が捕手を見たままセットに入るとストレート。顔を捕手から離すと変化球、センターの方を向いてセットするとフォークが多い ②セットのグラブの位置がベルトより高いと変化球、中ぐらいでスライダー、うーんと下がるとストレート〟

 ある投手を分析したものです。このように一人ずつ、びっしりと書き込まれています。遺族のもとを訪ねた際、記者が初めて目にしたのは二年前のことでした。「サンケイスポーツ」の評論家だった野村さんと行動を共にしていた記者は、監督から何度も何度も聞いた言葉を思い出しました。「捕手は試合を3度繰り返さなければいけないんだ。前日の『準備野球』、当日の『実践野球』、終わった後の『反省野球』だよ」自分の言葉通りに、3度の試合を繰り返していた証しが、これらの野球ノートでした。遺族の許可を得て、準備、実践、反省が詰まった「1993」バージョンを、5月1日からの毎週木曜日の紙面で掘り起こしているのです。当時のセ・リーグを知る記者による取材班が、ノートに書きこまれた投手や関係者へのインタビューを通じて記録と記憶を重ね合わせ、野村さんが遺した野球を探っています。これが実に面白い!先週は山本昌投手、今週は木田優夫投手が丸裸にされました。♥♥♥

カテゴリー: 日々の日記 パーマリンク

コメントを残す

チーム八ちゃんをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む